不登校編1部記
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 一、不登校編落ち込みから立ち直りへ、心の傷みを直す自力と他力)
 
  世の様がよう見えてくる歳 ●記し辛い体験、ためらいの記●計りがたい苛めの度合い
  ● ことの重なりと忘れ●覗かれたくない子供心●体と心の鍛え●望みを支える自力と他力
  ● クヨクヨがなくなる所●石投げ●失敗を許してくれた同級生●苛めのたぐい その一(世相の皮肉)
  ● 苛めのたぐい そのニ●思い直しの道●若人の二言(ふたこと)から●心の若さ●恩人の木
  ● 誇らしげな自然●陰の労り(薬ではなく心の糧)●賢母と慈母●世界的自然詩人ワーズワースの力
  ● 人の力が及び難いもの●不自然を感じさせない自然●文章評価 大阪文学学校●自然が人に勝っている所
  ●体験と挿絵の値打ちほんまの山や川

1、不登校編の一部  想い直しの道  
  
 かつて、私の心が激しく動揺していたとき、「何か」
 都会に住み着き、二十年ばかりたって、長男が望
の誘いかけにより、私がなびいていったのは、殊更
む大学に入れなかったとき、家族を連れて故郷へ行
だつたから目立ち、受けとめたときの印象が強く残る
くことにした。 
ようになった。
 かつて、私が中学生のとき、思いあまって学校を
 なのに、穏やかにしている常々、心情が大きく変わ
止めようとし、故郷へ帰る途中、想い直した道のあたり
らなくてもよいときには目立たず、その場の印象が潜
にさしかると長男は、
在してしまい、それが常だから、印象が目だったとき
「僕は、ここが好き。ここに来たらこまごましたことを考え
に疑うようになる。
ないようになる。気が修まる」
「何か」は同じ。だが、感じ受けとめるのは、そのとき
と言い、しばらくして、
の心情に依って違ってくる。
「けれど、ここにずっといたら、そのことを気付かなく
 今回、心の動揺が大きかった長男と、それほどで
なるかも知れない」
はなかったワイフとでも違いがあった。
と言った。共に居たワイフは、山歩きが好きなので、
 それで良い。なのに、このようになるのは自分だけ
「そうね、山へ行くと今まで言えなかった愚痴を言っ
なのだろうか、人はどのようなのだろうか憶測すると
てしまいたくなって言ってしまう。けれど、景色を見
き、いわゆる雑念が入るときに疑問が増してゆくのだ
ながら話しているうちに、景色に申し訳無いことをし
ろう。
ているような気になって恥ずかしくなる。ここでも同じ
  心の若さ
やわ」
 それほど深く考えることではないと思いながら、長
と言った。
男が言った二言が頭に残った。
 私も、前に、ここで思いが変わり胸が修まった。そ
 このとき、私は四十八歳。長男は十八歳で、私が
のときは、変わって良かったとだけおもっていたのだ
前にここで思いなおしたときと同じ年ごろだった。
が、そののち、山河の「何か」が心のわだかまりを遠
 その若人がここに来てすぐに、
のかせるように誘い掛け、なびかせようとしているよ
「僕は、ここが好き。ここに来たら、こまごましたことを
うだ。でも、そのように感じるのは私だけなのかと疑
考えなくなる。気が修まる」
って、すっきりとは受けとめていなかった。
と言った。その言いかたに、十代の直感と、感じたこ
 なのに、二人は素直になびいて受けとめたとおり
とを、すらりと言う素直さを感じさせられ「なぜ」と問う
を言った。それで良いのだ。
ことができなかった。
 「何か」は、良い方向へ誘いかけなびかせる。
 私には、十代の素直さがなくなっていた。