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ゲスリン最後の事件/P.マクドナルド

The List of Adrian Messenger/P.MacDonald

1959年発表 真野明裕訳 創元推理文庫171-1(東京創元社)

 まずエイドリアンが残した謎の言葉ですが、日本語訳では“ブルーム”が片仮名で表記されるため、箒(broom)ではなくブルーム一族(Bruttenholm)を示すということがわかりやすくなっているのは仕方ないでしょう。逆に、序盤でラオールがゲスリンに“ブラシ”と伝えているのが不可解に感じられるかもしれません。もう少し何とかならなかったか、とは思いますが……。

 事件の方はといえば、犯人の気の長さと、途方もない犠牲者の数(67人!)に呆れてしまいます。巧妙といえば巧妙ですが、ただただ唖然とするほかありません。

 なお、後に原題に忠実な『エイドリアン・メッセンジャーのリスト』と改題されていますが、やはり『ゲスリン最後の事件』という意味ありげな題名は気になります。ゲスリンの登場する最後の長編であることは間違いないのですが、彼が最後に法律で裁ききれない犯人に対して手を下した、つまり探偵から殺人者へと立場を変えたことも関係しているのでしょうか。

2002.05.03読了

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