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死体のない事件/L.ブルース

Case without a Corpse/L.Bruce

1937年発表 小林 晋訳(新樹社)

 非常にシンプルでユニークなアイデアの作品です。さんざん被害者を探しまわった末の“犯人→被害者”という逆転の構図は、あまりにも鮮烈です。あれだけ探しても被害者が見つからないため、唯一の死体となったロジャーズ青年がである可能性が浮かんでくるのは致し方ないところですが、それでもその鮮やかさが損なわれることはありません。

 真相につながる伏線はといえば、ビーフが真相に気づくきっかけとなったサイズの小さい作業着はよくできていると思いますし、ロジャーズ青年の抱くビーフへの反感がしっかりと描かれていることで、悪戯を仕掛けることの説得力が増している点も見逃せません。

 直接の手がかりである青酸カリの入手経路が伏せられているところは相変わらずですが、ラストの驚愕のためと思えば納得せざるを得ないでしょう。

2001.08.08読了