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白夜行/東野圭吾 |
1999年発表 集英社文庫 ひ15-5(集英社) |
作中で笹垣は、雪穂と亮司の関係をテッポウエビとハゼの相利共生になぞらえていますが、実際にはかなり片利共生に近いように思われます。雪穂が“表”に出て亮司が“裏”に回るという分担を考えれば、二人の関係が対等ではなくある程度非対称なものになるのは当然ともいえますが、それにしても、雪穂が受ける利益に比して亮司にとってのメリットはだいぶ少ないのではないでしょうか。 亮司は雪穂に対して恋愛感情を抱いているのかもしれませんが、おそらくそれよりも父親の行為に関する負い目が強く、その償いとして雪穂のために尽力しているのではないかと思われます。しかし雪穂の方は、亮司のことを“太陽に代わるもの”(第十三章 12)と表現してはいるものの、篠塚一成への執着からは“本物の太陽”への憧れのようなものがうかがえます。このような二人の心のずれが、非対称な関係を生み出したのではないでしょうか。
雪穂が笹垣と再会した場面(第十三章 11)で、雪穂は笹垣のことを覚えていた節があります。しかも、サボテンの鉢植えが割れて、中からサングラスの破片が出てきたということは(あるいは、その時の笹垣のただならぬ様子と、破片が持ち去られたということまでも)、家政婦から知らされているでしょう。したがって、捜査が身辺に迫ってきていることに気づいたのは間違いないと思われます。 もっと考えれば、鉢植えの中にサングラスの破片が入っていたこと自体、疑わしく思えてきます。大きな鉢にシャベルで塊状の土を入れるならともかく、跳ね返ったゴルフボールの衝撃で完全に割れてしまう程度の薄さ(=小ささ)の鉢ならば少量ずつになるでしょうし、基本的に水はけのよさが必要なサボテンならばなおさら、指紋が検出できる程度の大きさの破片が混じっていることに気づかないとは考えにくいものがあります。もちろん、笹垣の目の前で鉢が割れたのは偶然でしょうが、一種の“切り札”として雪穂が仕込んでいたという可能性も否定できないのではないでしょうか。 2006.02.09読了 |
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