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紫骸城事件/上遠野浩平

2001年発表 講談社ノベルス(講談社)

 様々な怪現象を鮮やかに演出する、“印象迷彩”を利用したトリックは非常に面白いと思います。しかし、残念ながらその説明にはがあります。ミラル・キラルの解明では水を飲むという行為を禁じられたことになっていますが、それでは氷柱に気づかなかったラマド師の死が説明できません。一方、水そのものの認識を禁じられたのであれば、ラマド師が氷柱に気づかないということもあり得るかもしれませんが、観客たち、ひいてはラマド師を刺したタイアルドも等しく氷柱に気づかないはずですし、さらにそもそも氷柱を出現させる呪文自体が使えないのではないでしょうか。もちろん、ニーガスアンガーが一瞬で死んでしまったように、印象迷彩による影響とそれによって引き起こされる反応に個人差があるということは考えられますが、そのあたりも明確に説明されているわけではなく、解決がすっきりしないものになっているのが残念です。

 ただ、その印象迷彩を気づかれないよう、犯人が赤ん坊の実在を隠さざるを得なかったところはよくできていると思います。

 ところで、口絵の2番目の見開きに描かれた、白い軍服を着た人物(第7章にも描かれています)は、フロス・フローレイド大佐と考えていいのでしょうか。どうも女性的な顔に見えてしまうのですが……。で、第6章に描かれているのは誰なのでしょう?

2003.01.19読了

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