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ガラスの麒麟/加納朋子 |
1997年発表 (講談社) |
ネタバレなしの感想にも書いたように、「ガラスの麒麟」では安藤麻衣子殺害事件は解決されず、「三月の兎」から「暗闇の鴉」までのエピソードを挟んで、「お終いのネメゲトサウルス」でようやく決着を迎えています。 安藤麻衣子の死が直接の引き金になっている「鏡の国のペンギン」と、安藤麻衣子の人物像に光が当てられている「暗闇の鴉」。これらに比べて、「三月の兎」や「ダックスフントの憂鬱」では、安藤麻衣子(の死)との関連は薄いように思えます。しかし、(ネタバレなしの感想には書きませんでしたが)〈被害者〉安藤麻衣子だけでなく、〈犯人〉、そして〈探偵〉神野菜生子もまた、間違いなく本書の主役なのです。結局のところ、発端である「ガラスの麒麟」と結末である「お終いのネメゲトサウルス」に挟まれたエピソードは、〈被害者〉・〈犯人〉・〈探偵〉の関係に厚みを持たせるためのものといえるのではないでしょうか。 「お終いのネメゲトサウルス」では、野間直子が描いた似顔絵を目にした時点で神野菜生子が〈犯人〉を知った可能性が示唆されています。しかし、「三月の兎」から「暗闇の鴉」までの“回り道”を経由することによって初めて、〈被害者〉・〈犯人〉・〈探偵〉の複雑な関係が織りなす事件の全体像が浮かび上がってくるようになっているのです。 |
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