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いざ言問はむ都鳥/澤木 喬

1990年発表 創元推理文庫419-01(東京創元社)
「いざ言問はむ都鳥」
 鴉片ケシの栽培という真相は、ある意味ありがちともいえるもので、“ケシ属の雌しべに近かった”(文庫版24〜25頁)という手がかりを考えれば、十分予想できるのではないでしょうか。

「ゆく水にかずかくよりもはかなきは」
 “ぼく”がなぜその男を釣り人と思い込んだのか、という疑問の答が秀逸です。最後の血縁関係絡みのあたりは、かなりのこじつけで無理があるように思いますが。

「飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」
 育種をやめて生態に移ったからといって、朝顔形の金魚鉢を使わないとは一概にいえないのではないでしょうか。しつこいようですが(苦笑)、そもそも金魚自体が人間に都合のいいように作り変えられてきたものですし、“お桂ちゃん”の態度が一貫しているようには見えません。

「むすびし水のこほれるを」
 このエピソードでは、「いざ言問はむ都鳥」の解決がひっくり返されています。というよりも、新たに提示された手がかりが組み合わされることで、別の解決が導き出されているというべきでしょうか。そしてそこには、「ゆく水にかずかくよりもはかなきは」で提示された地域開発絡みのゴタゴタが影を落としていますし、作中で沢木が連想しているように「飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」で使われた金魚鉢の仕掛けと同じ発想も垣間見えます。
 しかし、最後に示される真相は、いくら何でも無理があると思います。企業対エコロジストという図式があまりにも単純すぎるのも何ですが、そうであればなおさら、そこまでの手間とコストをかけるはすがないのではないでしょうか。このあたりが、どうも漫画的に感じられてならないのですが。

2003.09.07再読了

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