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マスグレイヴ館の島/柄刀 一

2000年発表 (原書房)

 まず本土の方の事件については、足跡のトリックがよくできています。特に、樫の木のところで歩幅がやや乱れていることにうまく説明がつけられている点や、足跡を消す作業を洗車という行為によって自然にカムフラージュしているところはうまいと思います。唯一不満なのは、操作ミスで作動していたビデオカメラによって“犯人”が逃走していないことが裏付けられている点です。ここのところはあまりにも偶然性が高すぎるように感じます。

 マスグレイヴ館の事件は非常によくできています。豪快なトリックだけでなく、それによって不可解な死を演出しているところが秀逸です。ただ、レバーや水門、そして“独房”の位置などは、図面で説明してほしかったところです。

 ところで、作中に何度も「あなた」という呼びかけが挿入されているところは、中途半端なメタフィクション性を感じさせられて鬱陶しく思いましたし、“シルビー・ハッチングスは、あなたがすべての犯人だと言っている”(357頁)という箇所でそれが頂点に達しましたが、読者ではなく慶子のお腹の中にいる赤ん坊への呼びかけだったという真相には意表を突かれました。ただ、必要不可欠なネタかといえば、そうでもないように思います。また、全編が赤ん坊に対して語られていたにしては、エピローグの最後の一節が浮いています(“え? この子の名前?”(390頁)という文章は、明らかに読者に向けて語られたものでしょう)。

2001.04.19読了

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