プロテクター/L.ニーヴン
Protector/L.Niven
1973年発表 中上 守訳 ハヤカワ文庫SF321(早川書房)
最初に読んだ時には、“人類の世界にようこそおいでくださった”
というニック・ソールの言葉に対する“それはどうかな”
という返事に疑問を覚え、続く“私の名は、ジャック・ブレナン。ベルターだ。”
という台詞(いずれも123頁)に至って頭の中が(不可解さで)真っ白になったものでしたが、再読してみると苦笑を禁じ得ません。古今東西のSFで描かれたファーストコンタクトのやり取りの中でも、かなり秀逸な部類に入るのではないかと思います。
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さて本書では、人類がパク人の突然変異した子孫であるということになっています。このアイデアから逆算したと思しき、人類の老年期と共通するプロテクターのデザインが非常に秀逸です。
“プロテクター”という立場はフスツポクからブレナン、そしてトルーズデイルへと引き継がれていき、最後には人類を守るために一つの植民星が丸ごと崩壊させられたことが示唆されています。冷徹な判断によって引き起こされたこのカタストロフが、もっとも大きく好みが分かれるところではないかと思います。
最後は唐突にメタフィクション化され(“この記録を小説化するのは”
・“この(注:小説化された記録を送信する)レーザー・パルスの”
)、何とも落ち着かない不気味な印象を残す結末になっています。パク人との戦いを直接描くことなく、読者の想像に任せる幕切れが見事です。
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なお、パク人の遠征のきっかけとなる銀河中心の爆発については「銀河の〈核〉へ」(『中性子星』収録)で、またブレナンとトルーズデイルが発見した中性子星〈フスツポクの星〉(後に〈BVS-1〉と改名)については「中性子星」(同書収録)で、それぞれ扱われています。
2006.08.03再読了