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災園/三津田信三

2010年発表 光文社文庫 み25-4(光文社)

 “灰色の女”の正体が怪異でも何でもなく*1、四人の子供たち+深咲による“悪戯”だったという真相には、やはり少々脱力。そして、笹井一個氏によるカバーイラストに、大胆にも五人の“灰色の女”が描かれていることには、さすがに苦笑を禁じ得ません。

 とはいえ、〈祭園〉でのいびつな“家族”関係が、子供たちによる“悪戯”や深咲による犯行の動機の背景となっていることに、何ともイヤな感じが残ります。このあたりもまた、本書のテーマともいうべき血筋としての“家”を強調しているといえるのではないでしょうか。

 奈津江が最初に三紀弥と出会った場面では確かに“みきひさ(73頁)とルビが振ってありますが、この漢字なら“みき”と読むのがおそらく普通で、お狐様の別称“日御碕”のアナグラムであることに、必要以上に気づきにくくなっているように思われます*2。が、それはさておき、台詞自体は何の変哲もないものであるにもかかわらず、なかなか強烈な後味を残す最後の一行が秀逸です。

*1: 同時に、奈津江の特殊な能力が〈祭園〉ではほとんど役に立たないまま終わっているのが、何ともいえないところです。
*2: 私自身ずっと“みきや”と読んでいたので、最後の“種明かし”がすっと腑に落ちなかったのが残念。

2010.09.16読了