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SFミステリ傑作選/風見 潤・編

1933年発表 講談社文庫117-2(講談社)
「ミラー・イメージ」 (アイザック・アシモフ)
 鏡像のような対称性が支配する事件において、唯一存在する非対称に着目するという発想はユニークです。

「消えたダ・ヴィンチ」 (J.G.バラード)
 “なぜわざわざこの時代に加筆をするのか?”という疑問は残りますが、それでもこの盗難の動機はとんでもないもので、気に入っています。

「明日より永遠に」 (キース・ローマー)
 “自分”という存在を継続させるために必要だったはずのクローンが、不死が達成されたとたんに邪魔になってしまうという皮肉な状況が魅力的です。

「ピンクの芋虫」 (アンソニイ・バウチャー)
 タイム・パラドックスを回避できているのか、いないのか。骸骨が二重に存在することができないために、本人が消失してしまうという発想はユニークですが、肉の分はどこへ行ったのかという疑問が残りますし、指だけが芋虫のように動き回るというのも受け入れがたいものがあります。ただ、この不気味なイメージは秀逸ですし、骸骨の消滅と本人の復活という構図は鮮やかです。

「ウルフラム・ハンター」 (エドワード・D・ホック)
 磔になった死体を誰も(神父以外)確認しなかったというのも、また見張りが居眠りしたことを隠すために殺人まで犯してしまうというのも、この世界(文明)の設定から導き出されたもので、非常によくできています。

「重力の問題」 (ランドル・ギャレット)
 比較的単純な機械トリックですが、燃えるロープが光球のように見えたために、魔術が事件にかかわっているように思わせられるところがよくできています。また、このパラレルワールドならではのラストが、革新的な未来を感じさせます。

2000.07.14読了

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