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忍法双頭の鷲/山田風太郎

1969年発表 角川文庫 緑356-22(角川書店)

「猿姫様」について
 国家老・巨摩刑部の孫にあたる世継ぎが相次いで急死するものの、最も怪しい江戸家老・柳沢兵之進はその時に限って不在――一見すると、不在の柳沢兵之進がどうやって世継ぎを殺したかという、アリバイトリックないしハウダニットであるかのように思えるこの謎が、実は巨摩刑部がなぜ孫を殺したのかというホワイダニットになっているところがよくできています。しかもその動機は(一般的ではないにせよ)この時代ならではのもので、ある種特殊な舞台における特殊なロジックを利用したミステリとして非常に秀逸です。

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 漣四郎と城助の任務は常に、彼らの思惑に反して各藩に厳しい結末となっています。この非情な結末が、冒頭の伊賀組に対する処遇と呼応し、さらに終幕の根来衆の末路へとつながっていくあたりは、実にうまい構成だと思います。

 しかしそこで、風太郎忍法帖らしいカタストロフではなく、ある種ハッピーエンドとなっているのがやはり異色。“忍法泥象嵌”の使い方も見事です。

2004.12.15読了

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