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天女の密室/荒巻義雄 |
1977年発表 角川文庫 緑468-6(角川書店) |
密室トリックは、ユニークではありますが、釈然としない部分もあります。 一番すっきりしないのは、外部から鍵がかかる密室であるという点です。特に3年前の事件では、雪の上の足跡という問題はあるものの、外部犯行説があっさり否定され、事故として処理されているのはやや納得がいきません。 しかしながら、密室内の密室、すなわち目張りによってガスの侵入を防ぐというトリックは、“内”と“外”の逆転という位相幾何学的イメージにもつながり、非常にユニークなものだと思います。 ちなみに、20年前の事件の方は今ひとつはっきりしませんが、宇良亀代はおそらく、3年前の事件と同じことをやろうとしていたのでしょう。ところが、小間の茶室にこもって目張りをしているうちに睡眠薬が効いてきて意識を失ってしまい、逆に酔いつぶれたふりをしていた日下部光輝が、壁の孔からゴムホースを差し込んだのだと考えられます。 そして、この密室トリックのヒントが、冒頭の「宇良家秘文」にあからさまに示されているところが見事です。 2000.05.26読了 |
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