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コンピューター検察局/E.D.ホック

The Transvection Machine/Edward D.Hoch

1971年発表 風見 潤訳 ハヤカワ文庫HM67-1(早川書房)

 まず何といっても、〈トランスヴェクション・マシン〉が偽物だったというのが驚きです。あまりにも大胆ともいえますが、これを成立させているのは未来社会という設定、そして登場人物たちの機械への信仰です。未来が舞台であるために、読者はこのような装置もあり得ると思い込んでしまいますし、登場人物たちの言動もその存在を裏付けるものです。時代設定を利用したこのトリックは、J.D.カーのある長編(以下伏せ字)(『火よ燃えろ!』)(ここまで)にも通じるところがあります。

 犯行手段のトリックもよくできています。〈トランスヴェクション・マシン〉が犯行に使われたのではないかという疑念もちらつかせながら、さらに革命グループ〈HAND〉に重要な役割を与えて過度の機械信仰への疑問を描くことで、読者の目を機械にひきつけ、真相をうまく隠してあると思います。

2000.07.23再読了

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