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白薔薇と鎖/P.ドハティ

The White Rose Murders/P.Doherty

1991年発表 和爾桃子訳 ハヤカワ・ミステリ1785(早川書房)

 密室毒殺事件の真相は、やはり拍子抜けの感があります。羽根ペンを使ったトリックはどこか既視感のある、たわいもないといえばたわいもないものですし、白薔薇の出現(と羽根ペンの回収)は密室トリックの初歩ともいえる陳腐なものです。

 しかし、現場に残された白薔薇がレッドヘリングであることが、リチャード三世の死にまつわる歴史上の手がかりをもとに解かれているところが面白く感じられます。

 一方、こちらがメインともいえるジェームズ四世の死体の謎については、普段の生活習慣から当然残っているべき特徴(鎖の跡)の不在によって真相を導き出すという手順がよくできていると思います。実験台になったロジャーは大変だったと思いますが(笑)……。

 セルカークの残した暗号詩では、“十二より三つ少ないはずだ”という語句のシンプルな真相が印象的。また、“ディオニュシウス”がサン・ドニという地名を表しているのもよくできています。さらに、頭文字が大文字になっている単語をつなげて“ライオンはいまや聖なる御手にあり”という語句を作り出すところは非常に秀逸です。

2006.08.10読了

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