さきさんへ。

 はじめまして。ホームページのほう、拝見しました。
実は、昨日、久しぶりに友達と会って以来、自己啓発セミナーが気になっていたのでネットで情報を検索していたら、ここにたどりつきました。今、私は途方にくれているので、お力をお借りしたくてメールしています。

 以下にやりとりで覚えていることを詳しく書きます。

 私は今、大学○年生です。私のことを勧誘した彼女も○年生で、彼女とは高校の塾での友達でした。
 お互い違う大学に通っているため、全然会っていなかったのですが、先日、携帯のメモリーを見ていたら会いたくなったので会おうよ、とメールがきました。
 私は、久しぶりだし楽しそうだから、とOKの返事をしました。そして、昨日、卒業以来、○年ぶりに初めて会うことになったのです。

 待ち合わせ場所は渋谷。それは彼女が午前中に渋谷にいるから、と指定したものです。カフェに行き、何せ久々なので、冷たいものを飲みながらお互いの近況報告や、専攻についてなどの話をしていました。
 話の中で、彼女は「毎日が充実している・楽しい」「いつも顔が笑ってしまう」「頭で考えて、理性でいろんな感情を押さえつけるのではなく、感覚的に、思ったことを素直に言える様になった」「最近、大学以外で知り合った友達とすごく仲が良く、濃い関係で、大好きなんだ」「自分を知る、素直な自分でいる、って気持ち良い」などと連発するのです。

 最初、私は留学とか、恋愛とか何か転機になるような出来事があったのかな、とくらいにしか考えていませんでした。それか、私は心理学をとっているので、グループセラピーのようなものを体験したのか、程度にしか考えませんでした。
 彼女は、自分がどんな人間か知りたくて、参加実習型の自己分析をした、と私に説明したからです。そして、今とても仲がよいといっている女の子たちもその自己分析で出会った子達であることが話をしていて分かってきました。

 その自己分析にどんな実習があるかも話してくれたのですが、

・お互いの第一印象を言い合う
・グループに分かれ、もうひとつのグループの人はまわりから、そのグループの人の実習を見て気づいた癖や、直した方が良い点などを観察・書きとめて、あとで公表する
・2人一組になって、片方は何も言わず、一方だけがひたすら相手がどんな風に見えるかを、ひたすら話す。それをパートナーを入れ替えて、繰り返す
・一番最後には、「ポジティブ・フィードバック」といって 輪の中に、自分が立ち、皆に”最初は〜だと思ったけど、今は〜な人だと思う”などの 前向きなフィードバックをしてもらう

などがあるときらきらしながら語っていました。

 そして分析の仲間は、皆トラウマや消したい過去などもすべてさらけ出して付き合った仲間だから、今までは、3日間でそんなに人と仲良くなれるとは思っていなかったが濃い時間を共有したから、とても深い関係である、とも言っていました。

 終始、普通に会話をしながらも
「素直にものをいうようになったら、彼氏との関係もうまくいってる」
「だらだらしていた自分とさよならできた」
「時間の使い方がうまくなった」「本当に心から笑えるようになった」
「毎日楽しすぎて、電車に乗っているときでも笑いっぱなし」
「客観的に人を見れるようになった」
「どんなに忙しくても、気持ち次第でうまく時間は使えることを知った」
「自分を向上させたい、という気持ちできてる人もいれば、自分探しをしているひともいる」
「○○ちゃん(私の名前)は向上心が強いから、実習を受けたらもっとパワーアップしちゃうよ!」

などと、どんどん続いていきました。

 私は、さすがにそこまでくると、段々胡散臭さを感じるようになっていました。また、彼女は「洞察力も鋭くなった」といって、私について、いろいろ指摘をしてきました。”あなたは不安がりって感じ”などの類で、私の性格分析的なことです。
 中にはあたっている部分もあったので、多少は納得しながら相槌をうっていると、彼女は「自己分析を受けてから、人のささいな表情の変化や、しぐさなどでちょっとした心情の変化なども分かるようになった」というのです。まるで私は自分の性格を彼女に見透かされているかのようで、そこら辺から、いくら友達といえど、段々不快にもなっていっていた気がします。

 私は彼女に「なんか、すごい”もろさ”を感じるんだよね。」といわれ、確かにそういう部分も強くありはするので「何でそう思うの?」と聞き返したら「そうやって、理由を知りたがって、理屈や頭で物を考えようとするのって 実習を受ける前の私とまったく同じだ」と言って笑い出しました。
 そして、そのあと、「きっとむかついたよね。ごめんね」「でも、そういう2面性というか、向上心があるけどもろさもある人ほど、伸びるんだよ。」って言われました。
 反論したい気持ちは山々だったのですが、反論しても「そうやってすぐに頭で考えてるのね」と少し人をばかにしたような感じで言われて、すっかり反論する気も萎えてしまいました。
 しかも、彼女があまりにも笑顔で、まるで悟りを開いているかのようにそれこそ、後光がさしているかのように穏やかでにこやかだったので、「すごい体験をしたんだね」「すごいね」といったような返答しかできませんでした。
 これで、しつこくダイレクトに勧誘されていたら、最初から疑っていたのでしょうが

途中までは、団体名も費用も特に何も言わなかったので、紹介・勧誘というよりは、ただ宣伝してるだけなんだ、と思い軽く受け流していましたのですが、途中、一回だけ団体の名前をいって、それは完全には聞き取れなかったけれど「メディオス」で間違いないと思います。
 費用も7万5千円、と言っていたので、一致しますし。その費用の高さにおどろくと、彼女は納得した顔で「やっぱり高いと思うよね。私も最初に聞いたときは、あまりの高さに驚いた。無理、って思ったし。でも、これは一生ものだし、今まで自分の外側に投資してきたことを考えたら内面に投資したこともないし、自分を知るのは何をするのでも大切だから、価値はあると思う。私もそれで世界観・価値観がかわったし。」
「私も、旅行に行った直後だったから、一括では払えなくて、でも他の子も皆そうだから、トウエイっていう学生向けのローンを組んだの」
「もちろん、私もお金を借りるってすごく抵抗があったのね。要は、借金だし。でも、そのローンは高田馬場にあるんだけど、もともと学生時代に演劇とかをしたくて でもお金がない人たちがそういう学生を支援するために作ったもので。利息も2%だから、月々1500円払えばいいだけだし。 私はバイトすればすぐに返せると思ったから、大丈夫だと思ったの」と話しました。
 そして、内面を磨くことの大切さを語りだしました。外見、たとえば髪の毛や洋服などに費やしてきたお金を考えたら、それくらい投資しても良いと思う、と言うのです。
彼女は自己分析を受けたのが3月の金・土・日なので、もう返済が終わっている、と言っていました。

 話を始めたときから、なにか心にひっかかってはいたのですが、途中まで、それが何であるかの確信が私にはもてませんでした。それがはっきりしだしたのは、後半、別のカフェに移動し、夕飯を食べているときに、値段やローンについて説明しだしてからのような気がします。そして、決定打は、帰り際でした。
 彼女は「私、最近、気持ちは生もの、っていうフレーズにはまってて。 もし、○○ちゃん(私の名前)がちょっとでも興味を持ったんなら、 明日(昨日なので、今日)でも話だけでも聞きに行かない?一緒に行くから」と誘われたことです。
 この段階で、あぁ、これはきっと自己啓発セミナーの勧誘だ、と確信するようになりました。その場ではすぐに断れる雰囲気ではなかったので、口実をつけてまた、夜の間に、スケジュールを調べてみてから返事をする、とその場を逃れました。
 もちろん、行く気はありません。
 そもそも、会話の最中に相槌を打っていたのも最初は納得できる部分もありましたが、途中からは半分受け流しで社交辞令的なものであったからです。

 もともと、なぜ彼女がそれにかかわりだしたのかは、彼女いわく高校のときに、一緒にだらけていた友達が、久々に会ったらすごく冷たい人だったはずが、すごく親身になって話を聞いてくれるようになっていてその激変ぶりに驚いたかららしいのです。
 そして、その変身の理由を聞いたら、自己分析を受けた、というのではなしだけでもいいから、と説明を一緒に聞きにいったらしいです。今、私の友達はそこの社員の人とも今、仲がよいらしくしきりに褒めていて、一回その人たちとだけでも会ってほしい、といわれました。(彼女は、エリさん、という小柄だけど、ちゃきちゃきしている明るい素敵な女性、と褒めちぎっていました)
 どうも、その人たちも話を親身になって聞いてくれたり、いろいろ鋭い指摘をするらしく、全面的に信頼している様子でした。

 彼女は自分で、大学でだらだら○年間を過ごしたこと、そして、大学での人間関係の薄さを嘆いていました。そして、それを変えたくて自己分析を受けた、とも言っていました。私は彼女と違う学校ではありますが、お互いに中高一貫出身で、とても濃い人間関係のなかで育ってきたので、その感覚や気持ちはわかるつもりです。
 話を聞いていると、彼女は今も高校の友達とはよく一緒に遊んでいるみたいだし、彼氏も同じ高校の人なのですがきっと、塾友達を勧誘するくらいだから、中高の仲良しは既に誘っているのかもしれません。
 彼女は、自分の視野を広げてくれたすばらしいきっかけを他の人にも知ってほしい、という善意でやっているみたいなのできっと身近な人にも話していると思うからです。
 実際、彼氏には話しているようですが、今、メディオスでは、女の子のみを対象として自己分析をしているらしく彼は受けられないから可愛そう、と話していました。

 中高一貫出身の傾向として、そこでの人間関係をとても大事にする人が多いです。なぜなら、やはりすごした年数も長いし、それだけ濃い関係だからです。
 私が心配なのは、彼女がこの自己啓発セミナーにはまり、周りの人を勧誘することで、それこそ”一生もの”といえるような、中高の大切な人間関係を失ってしまう可能性がある、ということです。
 私は彼女とは塾で一緒だっただけのつながりで、切ろうと思えば切れるかもしれません。しかし、同じ大学受験を一緒に頑張った者として、友達だし、見て見ぬふりをするのは、ちょっとしのびありません。
 かといって、どうしていいかも分からないのです。
 ホームページの実録を見ていると、どうもはまっていくと、更にお金を投資したりしなくてはいけない様子で、なおさら、彼女のことが心配になってきてしまいました。

 長々と乱文にて失礼しました。ただ、あまりにも途方にくれてしまっていてどうしてよいものやら、分からなくなってしまいました。

 お力添えをいただけたら、と思います。よろしくお願いします


SAKI追記:このメールは、実は数ヶ月前に体験された直後に送られたものです。直後の掲載はメディオス側に探られる可能性がありましたので、少し眠らせて、今回の掲載としました。

実録集のメニューへ