@菅原道真
と「天神様のお通り」 894年遣唐使を廃止した人物として菅原道真をあらかじめ授業に登場させておく。そして、北家藤原氏の権力確立時のライバル排斥事件として、菅原道真の大宰府への左遷事件を取り上げる。その時次のような補足の質問を生徒にする。
a道真は大宰府左遷後すぐに死ぬ。死んだ後、やがて何の神様となったか。
答えは、「学問の神様」。知っている生徒もいるかもしれない。
b彼の神様としての名前はなにか。
答えは、「天神」。このとき、わからない場合、ヒントとして「とおりゃんせ」の歌を歌う。「とおりゃんせ、とおりゃんせ、ここはどこの細道じゃ、天神様の細道じゃ」
cなぜ、彼は「天神」とよばれるようになったのか。
答えは、「天神はもともと雷のこと。菅原道真が死んですぐに宮廷に雷がおち、醍醐天皇はじめ、貴族たちが死傷した。人びとは、この落雷を左遷させられて死んだ道真の祟りだとして怖れた。道真は雷(天神)となって祟ったとされた。」
そして、こうして菅原道真のことを「天神様」と呼ぶようになった。そして、天神様を祭る神社は「天満宮」と呼ばれ、有名なものは北九州の「太宰府天満宮」と京都の「北野天満宮」だという。今では毎年受験生が大勢この神社にお参りする、と説明。そして、私は北野天満宮のおふだをもっているので、それを生徒にみせる。さらに、天神様を祭る神社は各地に建てられた。このあたりにも天神さんとよばれる神社はいっぱいあるよ、と説明。生徒にきいてみると、何人かは「うちのそばに天神さんという神社がある」と答える。
A御霊信仰とリング山村貞子
平安時代半ばになると、恨みをもって死んだ人が現世の人を祟るという御霊信仰の説明がでてくる。そして、そうした霊を鎮めるため、御霊会が行われたと説明される。あるいは、陰陽師の説明で、平安時代には祟りが信じられていたということにもふれる。このように平安時代は祟りという観念が日本に本格的に広まった時代である。
このままでは受験用知識にとどまり、生徒はよく理解しない。そこで、恨みをもって死んだ霊が人を祟るという「祟り」の発想は日本独特のものだと強調する。西洋では、死んだ霊は天国にめされるか、さもなくばそこらに浮遊していたずらをするだけで、恨んで祟るということはないらしい。日本人は、霊は祟ると考える。道真然り、早良親王然り、四谷怪談然り、山村貞子然り。
その辺を近年の恐怖映画の大ヒット作である「リング」を例に説明する。「リング」は、生徒たちの多くもよく知っている。映画のストーリーは、山村貞子という超能力者が井戸に投げ込まれ殺されその恨みを彼女の念写ビデオを見た人に晴らしていく、という話だ。そには日本独特の祟りの観念がある。そして、このような映画は、日本人しか理解できない。欧米の人がこの映画をみてもピンと来ないだろう、説明していた。
そしたら、昨年、「リング」のハリウッド版がほぼ作成されたという。ストーリーもほとんど日本版と同じだという。私は、「祟り」の観念が欧米人に理解できるかどうか不思議がったが、その後、この映画をみた欧米人の反応を見聞きすると、やはり「リング」の世界観は、日本独自の世界観だと受け取っているみたいである。「祟り」の観念は日本独特のものであるようだ。 |