蕁麻疹(じんましん)について サノ皮膚科クリニック
蕁麻疹とは(ちょうど蚊にさされた直後にでるような)盛り上がったかゆい発疹がでる病気で、最大の特徴はそれぞれの発疹は24時間以内に跡形もなく消える事です(まれに24時間以上続くものがありますが、特殊なタイプです)。発疹は出没を繰り返します。多くは数日から1〜2週間で治りますが、何か月も何年も続く事もあります。
原因について…蕁麻疹は原因があると思いがちですが、原因のわかるのは数%〜20%台で、思い当たることがない場合は通常原因不明です。全身に発疹がでるので、内臓を心配される方が多いのですが、内臓が悪くて蕁麻疹がでる事はほとんどありません。まれに原因のある場合がありますが、その中で多いのは、食べ物、薬、感染(扁桃炎、中耳炎、風邪、虫歯、肝炎、ピロリ菌、その他)、物理的(後述)などです。
検査について…検査しても原因はなかなか見つからないので急性蕁麻疹の場合(1〜2週で治りきる場合)とりあえず検査は不要でしょう。しかし、急性蕁麻疹でも感染症やアレルギーが疑われる場合や、慢性で1ヶ月以上続く場合は、一度検査した方が良いでしょう。
検査には@一般検査(貧血、肝機能など)Aアレルギー検査(例えば乳幼児では卵、牛乳、大人では小麦、その他思い当たるもの)B特殊検査(膠原病、甲状腺、溶連菌、C型肝炎、ピロリ菌などの検査)などがあります。
治療について…蕁麻疹は皮膚のやや深い所でおこっているので、ぬり薬では届きません。従って、主として、内服薬による治療になります。原因不明の蕁麻疹を二度とでなくする治療法はありませんので、内服薬は飲んでいる間は発疹がでませんが、切れるとまた出ますので、かゆみが無くなっても飲み続ける必要があります。
治療薬としては抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤が中心です。効きの悪い時は通常の量の2倍まで増やします。副作用は眠気等です。また一部の胃薬を併用すると効果が増すことがあるので、ときに胃薬(胃腸の調子に関係なく服用します)が併用されます。その他トランサミン、ロイコトリエン拮抗薬、グリチロン等を使います。難治の場合ステロイド内服は短期(原則1ヶ月以内)のみ行われます。難治性で重症の場合、救命設備のある大学病院等では、抗IgE抗体製剤の注射(ゾレア)が使われる場合がありますが、高価(一回の薬価が9万円)です。
普通の蕁麻疹…急性蕁麻疹、慢性蕁麻疹(発症から1か月以上続くもの)。原因は不明ですが、体調悪化、疲労などの増悪因子があります。
特殊な蕁麻疹 @アレルギー性の蕁麻疹…食物、薬品、植物、昆虫の毒素等によるもの。とくに、野菜や果物などで、口腔粘膜に浮腫や違和感がおこるものを、口腔アレルギー(OAS)症候群と呼びます。重症例ではショックを起こします。A食物依存性運動誘発アナフィラキシー…小麦やエビなどを食べた後、運動して起こる蕁麻疹やショックで、鎮痛剤を飲むと、さらに起こりやすくなります。Bアスピリン蕁麻疹…アスピリンやその他鎮痛剤を内服や外用したときに出る蕁麻疹。C物理的蕁麻疹…皮膚の引っ掻き、圧迫、寒冷、温熱、日光、水との接触、振動などで出る蕁麻疹。Dコリン性蕁麻疹…入浴、運動、精神的緊張などによる、発汗が誘因となってでる蕁麻疹。E接触蕁麻疹…アレルギー物質に触れた所のみでる蕁麻疹。F血管浮腫…皮膚、粘膜の限局した範囲にでる浮腫で、数日間続きます。原因は通常不明ですが、アレルギー性の場合や、遺伝性(C1-INHの低下)の場合等もあります。抗ヒ剤に加え、トランサミンを使います。蕁麻疹類似疾患として24時間以上発疹の消えないG蕁麻疹様血管炎(多くの場合、抗ヒ剤に加えステロイドの内服が必要です)やH色素性蕁麻疹ISchnitzler症候群およびクリオピリン関連周期性症候群があります。(2020年8月改定)