アトピービジネスについて        サノ皮膚科クリニック

 はじめに…アトピー性皮膚炎は難病ではありません。アトピー性皮膚炎はありふれた病気(人口の20%)で、時期がくれば必ず治りきる病気です。本来オーソドックスな治療で普通の生活を送りながらコントロールする病気です。ところが、アトピービジネスでは高価な物を売りつける事を目的に、アトピー性皮膚炎は難病であり、難病であるがゆえに特別で高価な治療が必要であると宣伝し、患者さんを洗脳しようとします。

 アトピービジネスとは…「アトピー性皮膚炎患者を対象とし、医療保険診療外の行為によってアトピー性皮膚炎の治療に関与し、営利を追求する経済活動」です。しかし営利企業としての性格を隠し、××友の会などと、公共の団体や患者団体を思わせる名称を使い、慈善事業のごとく勧誘を行い、入会金、カウンセリング代、会費などと称して、費用を徴収したりします。また、“驚異の××療法”などの本を出したり、マスコミを利用したり、悪徳医療機関とタイアップしたりします。

 アトピービジネスの分類

1)既存の医療と共存するもの…低刺激性石鹸、防ダニ布団などで、使用により症状が軽くなることもよくあり、また悪化することは少ないので、とくに問題はなく、推奨される場合もよくあります。ただ、信用できないメーカーもあるので、注意がいります。

2)既存の医療を否定するもの…温泉療法、エステティック、健康食品(クロレラ、プロポリス、シジュウム茶など)などで、従来の治療を中止して悪化する場合が多い。

3)医療機関そのものにおける非保険診療…SOD軟膏、SOD様食品の某クリニック、酸性水の某病院、ソフトレーザーの某クリニック、高額な某化粧品を売る某皮膚科チェーンなど。

 悪徳なアトピービジネスの展開するストーリー

1)希望を失わせる…アトピー性皮膚炎は難病で一生治らないと嘘をつく。

2)さらに不安をあおる…現在の治療をけなし、特にステロイド外用薬の副作用を誇大に宣伝する(ステロイドの大量の内服でしか起こらず、通常の外用では絶対に起こらない副作用が起きるという嘘をつく)。

3)解決法を暗示する…特殊療法による“奇跡”を具体例(体験談)として示す。

4)具体的なセールス…“奇跡”に対する対価を示す。

5)特殊療法で悪化した場合の言い訳…悪化したのを以前使っていたステロイドのせいにする。例えば「以前の治療の毒が出ている」「リバウンド」などと言う。特殊療法が足りないからだと言って、なるべく長く続けさせてお金を少しでも多く取る。

6)患者がついに特殊治療をあきらめた場合…次の患者を探す。例えば、某社の温泉療法では3〜6か月に100万円以上の費用をとるため、100人に一人でもだますことができれば商売になるので、次の患者を見つけることに精を出す。

 特殊療法が効いたことになる理由…1)誇大広告。虚偽広告…体験談の誇張やねつ造など。2)いい加減なデーター…悪化して逃げた患者をデーターから除いたり、悪化を以前使ったステロイドのせいにし、ほとんどの患者で効いた事にする。また、科学的なデーターを出さず、患者自身のあやしげな体験談を示すだけにする。3)自然軽快…アトピー性皮膚炎は自然に良くなったり悪くなったりを繰り返すので、たまたまよい時期があたった。または自然に治る時期がきた。4)悪化因子の除去…直前までの治療で使っていた薬(多くは非ステロイドの外用薬)でかぶれていたのが、中止で良くなったなど。5)ステロイドの併用…医療機関のアトピービジネスでは内服のステロイド剤や免疫抑制剤(外用のステロイド剤に比べはるかに全身的な副作用が大きい)が用いられたり、ひそかにステロイド外用剤が使われたりする。参考図書…アトピービジネス私論 竹原和彦著 先端医学社2300円。こうして治すアトピー 竹原和彦著 岩波書店700円