アトピー性皮膚炎の特殊な治療について           サノ皮膚科クリニック

 

 はじめに…アトピー性皮膚炎は本来、大多数の皮膚科医に正しいと認知されているオーソドックスな治療法(@悪化因子の除去、Aステロイド外用剤、プロトピック軟膏、保湿剤の外用、B抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服)で治療されるべき病気ですが、オーソドックスな治療法ではどうしてもうまくコントロールできない人のために、いろいろな特殊治療が試みられています。特殊な治療は副作用が大きかったり、効果や副作用がよくわかっていなかったりしますので、それなりの注意がいります。

 紫外線治療…紫外線が皮膚の免疫力を抑えるため、アトピー性皮膚炎などの皮膚のアレルギーを抑える目的で行われます。しかし、紫外線には発癌性、皮膚老化促進、シミなどの副作用があるため、紫外線療法を実施する患者さんは限られます。以前はUVAという光線を照射するPUVA療法が行われていましたが、現在はnarrow band UVB(ナローバンドUVBのパンフレット参照)という光線を照射するのが主流です。1週間に1〜数回の通院(もしくは入院して毎日照射)が必要です。また、アトピー性皮膚炎で全身に照射するには、大型の装置が必要で、保有している医療機関は限られます。当院には小型の照射器のみ置いていますので、部分照射になります。全身照射は東京医科歯科大学や順天堂練馬病院等への紹介になります)。

 免疫抑制剤内服療法…免疫抑制剤のシクロスポリン(商品名ネオーラル)はもともとは臓器移植の拒絶反応の抑制のために使われる薬です。この薬はその強力な免疫抑制作用により、アトピー性皮膚炎の発疹を抑制し、かゆみも抑えるため、アトピー性皮膚炎にも非常に効果があります。その副作用は、腎障害、肝障害、高血圧、貧血、感染症にかかりやすくなるなど、いろいろあります。従って、免疫抑制剤の内服はステロイド軟膏の外用に比べ、効果も優れているが、副作用もはるかに大きいと言えます。以上から、ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤(プロトピック軟膏)等の既存治療で十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上の重症のアトピー性皮膚炎患者さんのみが保険適応で、このような場合のみ副作用を厳重に監視しながら試されるべき治療法と思われます。なお、この治療法を開始するには、厳重な副作用チェックが必要ですので病院での導入(薬の開始)をお勧めします(当院ではネオーラルの導入は行っていませんので、病院への紹介になります)。

イソジン療法…黄色ブドウ球菌というばい菌は、アトピー性皮膚炎の悪化の原因のひとつであるため、黄色ブドウ球菌を殺菌すれば、その分アトピー性皮膚炎の発疹は軽くなる場合があります。イソジン消毒液は黄色ブドウ球菌に対する殺菌力が強いので、直接皮膚にイソジンを塗って殺菌します。これが、イソジン療法です。ただし、確かにイソジンは細菌の細胞膜を破壊して殺菌しますが、同時に人間の皮膚の細胞もいためてしまうので、かえって、発疹が悪くなる場合もあります。また、まれにかぶれる人もありますので、注意がいります。また、イソジンはポビドンヨードというヨード化合物なので、大量に使うと、甲状腺に異常をきたす場合がありますので、全身などの広範囲に使うことは避けるべきです。

以上から、アトピー性皮膚炎の治療としてはお勧めできません

 超酸性水療法…超酸性水の殺菌力で皮膚の黄色ブドウ球菌の増殖を抑えて、アトピー性皮膚炎の発疹を軽くしようという治療法です。しかし、超酸性水の殺菌力は弱いので、あまり効きません。また、極端な超酸性(pH3.6 以下)だと皮膚を刺激しますので、注意がいります。この治療法にあまり大きな治療効果は期待できませんので、大金を投じることのないようお勧めします。

 参考図書…アトピービジネス私論 竹原和彦著 先端医学社2300円。こうして治すアトピー 竹原和彦著 岩波書店700

201312月改変)