成人のアトピー性皮膚炎について      サノ皮膚科クリニック

 

 アトピー性皮膚炎とは。 成人型アトピ−性皮膚炎は「体質的な湿疹」で、乳幼児期から続いている場合、乳幼児期にあったものが一度治って再び大人になって出てくる場合、大人になってからはじめて出てくる場合などいろいろあります。この病気にかかりやすい体質はまれなものではなく、ありふれたもの(人口の約10%)です。アトピー性皮膚炎もありふれた病気で、病気のコントロールも比較的容易で、けっして難病などではありません。難病のように宣伝しているのは高い商品(温泉の湯、化粧品など)や特殊治療を商売にしている人達です(難病と思わせないと高いお金を払ってくれないため)。

 対策の基本的な考え方。 この病気はある時期がくれば必ず治る病気ですが、その時期まで放置しているのは良くありません。大切なことは、積極的に治療して「湿疹のない状態」をつくり、仕事や学校やその他活動に支障のない快適な生活を送れるようにする事です(QOLの向上)。また、湿疹のある皮膚は、アレルギー物質を通過しやすく、それが刺激になって、治りきる時期が遅れるといわれていますので、早く治りきるためにも湿疹の無い状態が必要です。

アトピー性皮膚炎は体質にいろいろな悪化の因子(ホコリやダニなどのアレルギー物質の刺激、花粉の刺激、皮膚の乾燥、発汗、細菌の繁殖、ストレスなど、患者さんそれぞれに複数の因子)が加わって湿疹がでる病気ですので、治療は悪化の因子を除いたり、湿疹をなくす薬を使ったり、保湿剤でスキンケアをしたりします。 

 日常生活の注意 3才以上の場合食べ物のアレルギーはまずありませんので、通常、食物は何を食べてもかまいません。入浴も構いません。入浴温度は38℃〜40℃が適当です。長期間入浴時に石鹸を全く使用しないと湿疹が悪化しますので、石鹸を使って洗ってください。だだし、ゴシゴシこすらないでください。また皮膚が乾燥する場合は石鹸の使用を2日に1回などに減らしても構いません。石鹸はほとんどの場合ごく普通の石鹸でさしつかえありませんが、まれに、普通の石鹸が合わないことがありますので、その場合は低刺激性の石鹸を使います(湿疹の石鹸、洗剤についてのパンフ参照)。 乾燥肌タイプのアトピ−性皮膚炎では肌や空気の乾燥が悪化させる原因となります。石鹸の使用回数を減らしたり、保湿剤を塗ったりします。 ホコリの中にいるダニが湿疹を悪化させる原因になっていることが多いので、掃除はていねいにしましょう。

 治療について。主たる治療は外用療法で、ステロイドホルモンの外用薬プロトピック軟膏、ワセリンなどの保湿剤が3本柱です。また、コレクチム軟膏(JAK阻害剤)も使われます(16歳以上)。特に、ステロイドホルモンの外用薬が治療の中心になります(すべての大学病院でステロイドホルモンの外用薬が使われています)ので、医師の指導に従って治療を行うことが大切です。外用薬は指示どおりに使えば、全身的な副作用はまったくなく、副作用がでる可能性のあるのは、塗った場所だけです。 顔、首、体など場所により、局所的な副作用の起こりやすさが違いますので、外用薬の種類(強さ)がかえてあります。指定の場所以外にぬらないでください。顔だけは、治るのに時間のかかる副作用がありますので、長期間自分の判断でぬり続けたりしないよう、気を付けてください。顔はプロトピック軟膏のほうが、この副作用がでにくいので、プロトピック軟膏とワセリンが治療の中心となります。

 内服薬(抗アレルギー剤)は湿疹の出現やかゆみを抑えますが、効果に個人差があります。

その他治療としてプロアクティブ療法、narrow band UVB療法、免疫抑制剤内服療法、生物学的製剤、があります(アトピー性皮膚炎の第第二選択治療のパンフレット参照)。プロアクティブ療法は頻回に湿疹病変が出現する方の寛解維持療法に推奨されます。

 参考文献 日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎ガイドライン2018。アトピー性皮膚炎 竹原和彦 小学館 。アトピービジネス私論 竹原和彦著 先端医学社 。(20208月改変)



アトピー性皮膚炎の検査について

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T)増悪因子を調べる検査・・・アトピ−性皮膚炎は「体質的な湿疹」で、除けば完治するような原因はありませんが、湿疹を悪化させるいろいろな要因(増悪因子)があります。増悪因子を減らせば、その分湿疹が軽くなります。増悪因子を調べる検査には下記のものがあります。

@ 特異的IgE…採血による検査です。採血の難しい乳幼児などは、検査を行うのが難しくなります。判定はクラス0から6まであり、2以上が陽性ですが、高い値ほど、増悪因子の可能性が高くなります。ただし、陰性でも増悪因子であったり、陽性でも増悪因子でない場合があり、100%信頼できる検査ではなく、かなり参考になる検査と考えればよいでしょう。いろいろなアレルゲン(アレルギー物質)が調べられます。

Viewアレルギー39特異的IgE 39種類を一度に調べる検査です。ヤケヒョウヒダニ、ハウスダスト1、ネコ皮屑、イヌ皮屑、ゴキブリ、スギ、ヒノキ、ハンノキ、シラカンバ、カモガヤ、オオアワガエリ、ブタクサ、ヨモギ、アルテルナリア、アスペルギルス、カンジダ、マラセチア、ラテックス、卵白、オボムコイド、ミルク、小麦、大豆、ソバ、ピーナッツ、米、ゴマ、エビ、カニ、キウイバナナリンゴ、鶏肉、牛肉、豚肉、マグロ、サケ、サバ39種類です。

A スクリーニングパッチテスト・・・皮膚に触れて湿疹を起こす原因として多いアレルゲン22種類とコントロール2種類を貼るテストです。当院では、一度診察をしたうえで、火曜に貼り、木、金と受診できる人のみ行っています(時間に余裕のある方しか検査できません)。その間入浴はできません

U)その他検査・・・採血による以下の検査があります。

@非特異的IgEIgEの総量を調べる検査で、アレルギー疾患では高い値を示しますが、他の病気でも高く出ることがあります。値が正常でもアレルギー疾患の場合があり、高くても違う場合もあるので、参考程度の検査です。また、重症度とは比例しません。

ATARC…TARCは、アトピー性皮膚炎の皮疹の程度に応じ、高値になったり低値になったりするので、アトピー性皮膚炎の重症度を客観的に判定出来ます