多汗症について

サノ皮膚科クリニック

汗には、温熱で出る汗と、手のひら、足の裏のように精神的緊張等で、出る汗があります。患者さんの多くは手足の多汗症ですが、腋窩(わき)の多汗症もあります。

以下ガイドラインの推奨度を記載します(A行うよう強く勧められる。B行うよう勧められる。C1行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない。C2根拠がないので勧められない。D行わないよう勧められる。)

多汗症の治療

    エクロックゲル(12歳以上)、ラピフォートワイプ(9歳以上)の外用・・・原発性腋窩多汗症の方に11回外用します。他の多汗症の適応はありません。抗コリン薬のため、緑内障の方、前立腺肥大の方は使用できません。適応は「発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある場合(HDDS3)」以上の症状のある方に限られます(腋窩B、掌蹠C1、頭部顔面C2)。

    アポハイドローション(12歳以上)の外用・・・原発性手掌多汗症の方に11回、就寝前に両手掌全体に塗布します。抗コリン薬のため、①と同様の注意が必要です。適応は「発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある場合(HDDS2)」以上の症状がある方に限られます。

②塩化アルミニウムの外用…保険適応ではないため、自家製剤のもの(濃度20%~50%)や、アルミニウムを含む市販薬を用います。(腋窩、手掌B、足底C1、頭部顔面C1)。

③内服薬…グランダキシンという自律神経失調症に使われる薬が有効な場合があります(C1)。多汗症に保険適応のある抗コリン薬であるプロ・バンサイン(60mg2)も有効な場合があります(C1)。

④イオントフォレーシス…水道水等の液体に、手などをつけて、電気を流すものです。保険適応がありますが、機器を持っている施設が限られています(掌蹠B、腋窩C1、頭部顔面C2)。

⑤ボットックス…ボツリヌス菌を注射するもので、一時的に交感神経を麻痺させて発汗を抑えます。薬品は高価です。重症の原発性腋窩多汗症(発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある場合HDDS4)のみ、保険が使えます。手など他の部位の多汗症は自費の診療になります(腋窩B。掌蹠C1。頭部顔面C1)。

⑥手術…交感神経を切断する方法ですが、手の汗は止まっても体中にかえって汗をかく(代償性発汗)副作用が出る場合があるので、手術はお勧めしません(既存治療が効かず、生活の質を大きく損なう場合のみ、手掌B、腋窩C1、顔面C1)。

⑦その他、神経ブロック(C1)、マイクロ波、超音波、高周波、レーザー(腋窩C1)、精神(心理)療法(C1)。

現在、当院では、相談とエクロックゲル、ラピフォートワイプ、内服薬の処方のみ行っていますので、塩化アルミニウムの自家製剤やイオントフォレーシスやボトックスなどを希望される患者さんは、東京医科歯科大の多汗症外来、その他を紹介しています。

参考…腋窩の多汗に臭いが伴う場合わきがと呼ばれますが、塩化アルミニウムの外用や、抗生物質の外用のほか、腋窩の皮膚や汗腺を取る手術も行われます。

参考文献…日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版、藤本智子ら」、日本皮膚科学会雑誌「皮膚科セミナリウム、藤本智子著」                (20233月改変)