旅行記

「サトシ・24才・春」

4月13日 6時00分
 おっさんのいびきにてさわやかに起床。それにしてもなんで平日なのにこんなにたくさんの人達が寝てるんだろう? 200程はある寝台はほとんどうまっています。いろんな事情がありそうだよな・・・・・
 昨夜は一度も聞かなかった『入れ墨お断り』の館内放送が、実にひっそりと流されています。別に入れ墨関係の方の味方をする訳ではないですが、これはちょっとした差別だなぁ。早朝に静か〜に放送するところが、なかなかせこいですな(笑)
 八点式ジェット風呂にもう一度ゆっくりとつかってから、出立。八点ジェット最高!



4月13日 6時30分
 今日で三日目、まったく素晴らしい天気が続きます。祝福されてるな、等と夢見がちな事を考えつつ厚木ICへ。今日は伊豆半島をひとまわりして帰る事にしました。本当はもう一泊位していきたいところだったんだけど、宿泊先を探してさまようのはほとほとうんざりです。
 朝から高速をぶっ飛ばして(飛ばすといっても95キロ位ですが・・・・)再び、沼津ICから伊豆方面へ。そういえば昨日彫刻の森でエビピラフと季節のサラダを食べて以来、ろくにメシを食っていない。夜は迷っている間は軽いパニック状態で、晩メシは抜いてしまいました。健康ランドでビールのつまみをちょっと食べただけです。ま、普段からそういう事はざらにあるんだけどね・・・(汗) 適当に見つけた喫茶店で軽く朝食をすませながら、おおざっぱな経路を決めます。
日本地図で伊豆半島のど真ん中をまっすぐぶち抜いて太平洋側に出た後、海岸線を半周して再び沼津へ戻る事に決定。


4月13日 9時30分
 伊豆といえば京極の「塗仏の宴」の主な舞台ですね。伊豆の山の中を抜けながら色々思い出しました。ねじけた形の悪い山を見つけると「あれが下田富士だな、おせんの山だな」と決めつけたり、韮山に入れば「ここにへびと村があるんだな、くんほう様が居るのだな」等と思ったり・・・。別に京極の本に影響されていった訳じゃないですが。それに「塗仏の宴」は影響される程には面白くないですね、正直言って。
 とにかくここは僕の想像していた以上に深い山でしたが、途中で石川さゆりの「天城越え」で有名な浄蓮の滝を発見したので、トイレ休憩をかねて立ち寄る。ていうかトイレの為に立ち寄ったんですが、結果的にいうとここはかなり美しい場所でした。この3日で立ち寄った色々な場所のなかでも、群を抜いて美しい滝でした。お土産物屋を覗いて
石川さゆりまんじゅうとかを探したんだけど、残念ながらありませんでしたね、絶対あると思ったんだけどなぁ(笑)


4月13日 11時45分
 ようやく山の中をぶち抜いて大平洋岸へ到着。僕は山育ちのお猿さんだからか、基本的に海という場所に恐怖を感じる人間です。得意ではないにせよ一応泳げるサトシですが、海では恐怖が勝ってしまって絶対に泳ぐ事が出来ません(川でなら泳げます)。なぜこんなに怖いのか、自分でもよく分かりません。
 しかしながら距離を置いて眺める海は、今日のように天気の良い日の海は非常に美しい。ついつい目を奪われてしまいます。そしてそういう眺望の良い場所というのは当然一歩間違えば断崖へダイブってな場所なんですよね。しばらくちらちらと海を眺めながら走っていると、ちょっとした休憩スペースのような物があったので、しばらくそこから海を眺める事に。まったく美しい海と空です。空と海が見事に溶け合っています。という訳でここでも詩を1編書いてみました

 ここを出る時に1台の車の後に付きました。以後2時間程もずっっっとその車の後についていました。同じ車の後ろに2時間も付いている事なんて一般道ではまずないでしょう。スピードをそれ程出さず、すごく丁寧な運転をする人の車でした。
 色々と前をいく車の人の事を考えながら付いていきました。
 
 運転者は60才をちょっと越えた老人(以後「おじいちゃん」)。助手席は彼の奥さんでおじいちゃんと同年令(以後「おばあちゃん」)。前の車の様子が分かった訳じゃないですが、灰色のクレスタだったから間違っても20の女子大生って事はないと思います。
 長野県の田舎に暮らしている二人はおじいちゃんの定年の際に、息子夫婦からプレゼントされた伊豆旅行へ来ています。
 おじいちゃんは40年にもおよぶ公務員生活(警察官か教師)を仕事ひとすじで暮らしてきた人で、新婚旅行以来での妻と二人の旅行になります。助手席でやけにはしゃいでいるおばあちゃんを見て、ちょっと戸惑っています。
 おばあちゃんは貞淑な妻をずっとつとめてきましたが、実は若い頃に一度だけ浮気をしたことがあります。実直で鈍感なおじいちゃんは全然気付いていませんが、そんなおじいちゃんに対しては今でも申し訳ないと思っています。
 最近息子夫婦との同居をすすめられている二人ですが、おじいちゃんがかたくなにこれを拒んでいました。おばあちゃんも孫と一緒に暮らしたかったのだけれど、嫁との折り合いがあまり良くないため迷っています。二人とも孫を溺愛していて、息子夫婦とは教育方針について幾度か激しい衝突がありました。
 二人とも体はすごく丈夫で、おじいちゃんはこの旅行の後は植木屋さんへの就職が決まっています。おばあちゃんも近所の子供相手に開いている、週に2度の書道教室をまだまだ続けて行けそうです。
 二人はあまり多くの言葉を交わす訳ではありませんが、深い信頼と愛情で結ばれているのです。

 しばらく上のような事を考えていましたが、やがておじいちゃんのクレスタは一軒のそば屋の駐車場に入っていってしまいました。さようなら、おじいちゃん、おばあちゃん。良い旅行をしてください。



4月13日 15時00分
 再び高速に入る前に、沼津の「おさかなセンター」みたいな所に立ち寄って、お土産を探す事にしました。・・・・・なんかあんまり気の効いたお土産がないですね・・・。せんべいや漬け物や干物なんかを買うくらいなら何も買わない方がましな気がするしなぁ・・・。もうちょっと寒い季節ならともかく、今さら蟹でもないような気もするなぁ。アワビを買おうとも思ったんだけど、
アワビ高っ!! これじゃ手が出せないよぉ・・・・。結局干物を何種類か買って帰りました。ダメな男だなぁ・・・。


4月13日 16時00分
 再び高速道路に入り、いよいよ帰路につきます。帰ると決めたら一刻も早く帰りたくなってきたので、後はノンストップで家路を急ぎます。
 ・・・・・
眠い・・・。やはりいくらか披露がたまってきてはいるのでしょう、単調な高速を運転するのにはあまりにも眠たすぎます。車の中で目一杯のどでかい声を張り上げて歌を歌っていても、どこかにけだるい気配が漂っています。このまま2時間運転を続ける自信はありません。どこかのPAで少し休憩をいれた方がいいなかな・・・・等と思いはじめた時、目の前の車が警察に止められました。パトカーが僕の横を通り過ぎたな・・・と思ったら、パトカーの赤色灯がクルクルと回転しはじめました。しまった!キセルがばれた!と思っていたら、前を走っていた車でした。助かった・・。おまけに目も覚めた。最後の危機をからくも脱したサトシは一気に家へと帰り付いたのでした。


4月13日 18時00分
 ようやく家に辿り着きました。正直ほっとします。
 3日の間ずっと素晴らしい天気に恵まれました。雨が降るどころか雲を見る事すらまれだったという位、完璧な天気が続きました。旅をするうえで天気というのは非常に重要な要素であると思うけれど、この点ではすごくついていたとしか言い様がありません。
 最後に3日間の総移動距離850キロ(この車買って4ヶ月間に走った距離の4分の1にもなります・・・)を見事走り抜いたミニ、ご苦労様でした♪

愛車のミニ
おつかれさんね〜

めにゅうへ