今週の憲法タイトル
No.74_2 2001.10.9
お断り=今週の憲法の掲載号がとんでいますが、アメリカでおきたテロ事件を取り上げた記事を優先して掲載します。ご了承ください。


ガンジーに学ぶ
パレスチナ問題(上)



 国連総会は10月1日〜5日、テロ対策の集中討議を行い、167ヵ国が発言。9月11日の事件についてイラクを除くすべての国が非難し、国際社会が協力して対応すべきという姿勢を示した。イスラム諸国は、パレスチナの反イスラエル闘争をテロと見なさないよう求め(10月4日「朝日新聞」)、パレスチナ代表は今度の事件が「国家テロや外国による占領を許している現実と何らかの相関関係がある」と訴えたという(同7日「読売新聞」)。

 今度の事件によって、次のように重要な問題が提起されていると思う。

1.パレスチナ問題の根の深さ
2.「武力信仰」を克服できない人類の“発達遅滞”
3.大国によって翻弄される民族自決
4.グローバリゼーションが顕在化させた文明の矛盾
5.大国連合による法治主義の徹底破壊

 これら諸問題を統一的かつ実践的に解いた人物にガンジーがいる。まず、彼のパレスチナ問題に関する1938年当時の発言を抜粋する(M・ガンジー「わたしの非暴力・1」森本達雄訳、みすず書房、1997年、初版70年、103〜109頁)。


大砲に守られてパレスチナに入るのは間違いだ


私はユダヤ人に対して全面的に同情を寄せている。彼らは、いわばキリスト教の不可触賎民であった。キリスト教徒の彼らに対する扱いと、ヒンドゥー教徒の不可触賎民に対する扱いは、非常に似通っている。いずれの場合も、彼らに向けられた非人間的な扱いを正当化するために、宗教的是認に訴えている。

ユダヤ人のナショナル・ホームを求める叫びは、それほど私の心に訴えかけてはこない。それを是認するのは、聖書と、ユダヤ人がパレスチナに帰ってからも執拗に熱望してきた不屈の精神とである。どうして彼らは、世界の他の民族たちのように、自分たちが生まれ、生計を立てている国を故国としないのだろうか?

パレスチナは、イギリスがイギリス人に、フランスがフランス人に属するのと同じ意味でアラブ人に属する。ユダヤ人をアラブ人に押しつけようとするのは誤りであり、非人道的である。今日パレスチナで起こっていることは、いかなる行為の道徳的規範によっても、正当化されることはない。

もっと高貴な方法は、彼らが生まれ育てられた地で、彼らを正しく取り扱うように主張することだ。フランスで生まれたユダヤ人は、フランスで生まれたキリスト教徒たちがフランス人であるのと全く同じ意味で、フランス人である。もしユダヤ人の故国がパレスチナ以外にないというのなら、彼らは、自分たちが定住している世界の他の土地を去ることを喜んで考えているだろうか。それとも彼らは、自由意志で留まることのできる二重の故国を望んでいるのだろうか?この故国を求める叫びは、ドイツのユダヤ人追放をもっともらしく正当化している。

聖書におけるパレスチナは、地理的な概念ではなくユダヤ人の心の中にある。彼らが、地理上のパレスチナを故国とみなさなければならないとしても、英国の大砲にかくまわれてそこに入るのは間違っている。宗教的行為は、銃剣や砲弾の助けを借りて行われることはできない。彼らはアラブ人の善意によってのみ、パレスチナに定住できるのである。彼らは、アラブ人の心を変えるよう努めるべきだ。ユダヤ人の心を支配したもうその同じ神が、アラブ人の心を支配したもうのだ。

ユダヤ人は、アラブ人の前でサティヤーグラハ(注参照)を行い、アラブ人に小指一本振り上げることなく、射殺されるなり死海に投げ込まれるなり、されるがままになることである。そのとき彼らは、世論が彼らの宗教的熱意に味方してくれるのを見出すだろう。彼らが英国の銃剣の助けを退けさえすれば、アラブ人を説得できる方法はいくらでも無数にあるのだ。現状のままならば、彼らに何の害も及ぼしていない人たちを掠奪することにおいて、彼らもイギリス人の共犯者である。



〈注=編集部〉サティヤーグラハ

 「真理を堅持して離さない闘い」のこと。積極的・攻撃的な非暴力運動について、ガンジーが命名した言葉である(森本達雄「ガンディーとタゴール」、第三文明社、1995年、88頁)。




奉仕を愛することによって故国になる


私はなにもアラブ人の不行跡を弁護しているわけではない。彼らもまた、自国への不当な進入とみなしているものへの抵抗に、非暴力の方法を選んでいてくれたらと思う。けれども、一般的な善悪の基準によれば圧倒的に勝ち目はないが、アラブ人の抵抗に反対を唱えることはできない。

神の選民であると主張するユダヤ人たちよ。地上における自分の地位を要求するため、非暴力の道を選ぶことによって、神の選民の名にふさわしいことを証明したまえ。パレスチナをも含めてすべての国が、攻撃によってではなく奉仕を愛することによって彼らの故国となるのだ。

あるユダヤの友人が、セシル・ロース著「文明へのユダヤ人の貢献」を送ってくれた。そこにはユダヤ人たちが、世界の文学・美術・音楽・演劇・科学・医学・農業などを豊かにするため、何をしてきたか記録されている。その気になればユダヤ人は、軽蔑され保護される西洋の賎民として扱われることを拒否できる。神に選ばれた真の人間となることによって、世界の注目と尊敬を集めることができる。彼らはその多くの貢献に加えて、非暴力というこの上ない貢献を重ねることができる。



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文責・河野道夫


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