今週の憲法タイトル
No.99 2002.4.29



見えてきた9条改憲案

衆院調査会で安全保障の自由討議=4・25



 衆議院憲法調査会は、4月22日、沖縄県名護市で地方公聴会を開催。参考人は、山内徳信(平和憲法・地方自治問題研究所主宰)、新垣勉(弁護士)、恵隆之介(ビジネス・スクール校長)、垣花豊順(沖縄国際大教授)、稲福絵梨香(大学生)、安次富修(沖縄県会議員)の各氏から「21世紀の日本と憲法」について意見を聴いた(敬称略)。
25日、参考人の発言を要約した中山会長報告は、以下の通り(ほぼ原文)。

▼山内:9条は国民の命そのものだから、政治家は憲法を尊重擁護し、また我が国は平和国家のモデルとして、9条の精神を世界に広めるべきだ。

▼新垣:沖縄戦の教訓は、軍事力で国民の生命は守れないということ。個人の尊厳の観点からも、非武装平和主義を体現する9条を守るべきだ。

▼恵:交戦権は国の当然の権利であり、武力の裏づけなしで国家の独立と平和は維持できない。9条を改正すべきだ。

▼垣花:憲法、教育基本法の基本理念である個人の尊厳が普及徹底するよう、国会議員、教員等は憲法の「個人の尊厳」を尊重擁護すべきである。

▼稲福:学ぶことは義務ではなく権利だから、奉仕活動の義務化は行うべきでなく、ボランティア活動では、地域に支えられて地域とともに生きる関係が重要だ。

▼安次:戦争放棄の理想は保持しつつ、必要最小限の自衛力の行使及びその国民による直接的コントロール、立法権と行政権の完全な分立、地方自治の充実―を憲法に明記すべきである。


■安全保障で自由討議


 25日の衆院憲法調査会は、その後、安全保障に関する自由討議に移った。注目されるのは、相当数の与野党議員が9条改憲案を示したこと。また民主党の夕力派ぶりが目立ってきたこと。この日、同党の発言者8人のうち、明らかに9条遵守・実践派と見られるのは、わずか1人(今野東議員)だけである。以下、発言順に要点を紹介する。

★赤松正雄(公明、比例近畿、当3、1945生)

 有事法制については“万が一”といわれるように、残された1ポイントが有事に躊躇されるなら ば、9999の努力が水泡に帰すことになる。万が一に対応する法律を用意するのは政治の責務。

★春名真章(共産、比例四国、当2、1959生)

 沖縄県民が有事法制を拒否するのは、地上戦の経験から、軍隊は住民を守らないこと、武力による平和はありえないことを体験したからだ。平和原則を突き崩し、戦争をしない国から戦争を進める国へと変貌させてしまう有事法制は許せない。

★金子哲夫(社民、比例中国、当1、1948生)

 「備えあれば憂いなし」というが、日常不断の努力で「憂い」をつくらない政治こそ必要。前文で「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないように決意し」たのは、戦争が政府の行為によって起こるためだ。またその事態に至らないようにする政府努力こそ重要という意味だ。

★中野寛成(民主、大阪8区、当9、1940生)

 単に憲法を改正するもくろみの憲法調査会ではなく、本心からいかに憲法があるべきか、また憲法が守られているかを精査する機関として、常設の委員会にすべきではないか。

★高市早苗(自民、比例近畿、当3、1961生)

◇「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」するために貢献しようとする諸外国と協調し、積極的な努力を惜しまない…という考え方を憲法に入れ込むべきだ。

◇国民、国土、主権といった国家の構成要件が諸外国等(テロも)によって侵害を受けるか、その可能性が高いと判断される場合に限って、自衛権の発動として交戦権を行使できるということを、積極的に書込むべきである。

◇自衛隊を国軍とし、国民の生命財産を守る自衛の体制、国際貢献などの任務を書込み、文民統制を明確に。「外交保護権」を憲法で担保する。

★松沢成文(民主、神奈川9区、当3、1958生)

◇第2章「戦争の放棄」を「安全保障」に。9条1項に侵略戦争は絶対に行わないことを、2項に主権国家としての自衛権と自衛軍、シビリアン・コントロールを明記する。集団的、個別的自衛権については、ときの政府の政治判断だ。

◇3項は、国連の平和維持活動への全面的協力。4項は、唯一の原爆被爆国として大量破壊兵器の根絶をめざすことを宜言すべきだ。

★首藤信彦(民主、比例南関東、当1、1945生)

◇前文の高い精神性の一方で、現実社会における平和の維持と構築は十分ではない。現に民主化支援、予防外交、市民による平和維持などの活動が展開されているが、日本では不十分だ。

◇パレスチナ和平に対し日本はさまざまな努力をしているのに、風前の灯だ。このとき日本の外交は何もしていない。私は、外務委員会で「犯罪的な沈黙」だと言っている。

◇憲法精神を現実の政治・外交に生かすため、ジュネーブ4条約の追加議定書の問題、国際刑事裁判所などについて積極的にとりくむ必要がある。憲法を外国に輸出すべきだという意見もあるが、在日外国人に英語やハングルで憲法講座を組んでいるのか。東チモール大統領になるシャナナ・グスマンから、平和憲法の学者を送って新憲法作成に貢献してほしいと頼まれたが、だれも行ってくれないし、資金援助も得られない。

★藤島正之(自由、比例九州、当1、1943生)

◇自分の国は自分で守ることを明確に規定。しかし一国平和主義にはならず、国連中心に自衛隊派遣を含め積極的協力を明記する。

◇有事における自衛隊の行動円滑化には異論ないが、体系的な考え方が必要。たとえば、権利制限の根拠は憲法上「公共の福祉」しかないが、有事にはもっと大きな根拠があると感じている。

◇有事には段階があり、国家危急事態、その前段階、大規模テロ、武装船や不審船など、各段階で国民の権利関係が違ってくる。体系的なものの中で、それぞれのケースを考えるべきだ。

★小林憲司(民主、愛知7区、当1、1964生)

 有事対応は本来、憲法で定めるべきものなのに、危機が起こるたび個別法を作ってきた。国際緊急援助隊派遣法、国際平和維持活動協力法、周辺事態法、船舶検査法、テロ対策特別措置法など。この方式はもはや限界に来ている。

★葉梨信行(自民、茨城3区、当12、1928生)

◇9条は文言が複雑で多様な解釈ができ、その中で自衛隊合憲論が確立している。しかし、安全保障に関する無責任体制、すなわち特殊日本的平和観念が横行している。つまり「平和」とは非武装の状況で、武装することは平和の破壊――という観念が、まだ広く行き渡っている。

◇軍事力が平和に貢献し、抑止力となっている。日米安保条約で沖縄に米軍が駐留することで、近隣諸国と力のバランスが保たれ、平和が保たれている。この事実をまず受けとめよ。

★中村哲治(民主、比例近畿、当1、1971生)

 集団的自衛権を行使できない憲法解釈に問題がある。解釈変更は国会でやれる。憲法解釈の第一次的権限は国会にあるのだ。それをやらずに改憲を唱えるのは、国会議員の責務放棄である。

★斉藤鉄夫(公明、比例中国、当3、1952生)

 どんな場合でも非暴力という考えと、正当防衛のための最低限の暴力は認める考えとがある。9条は二つの考えを包含している。私は後の方に軸足を置いているが、9条は集団的自衛権等の解釈も含めて、当分の間堅持することが妥当だ。

★中川正春(民主、三重2区、当2、1950生)

 「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」のは、国連による平和構築、国連軍の創設、各国は不戦――という理想があったから。朝鮮戦争で、それが現実にならず、日米安保条約と米国の極東戦略のシステムに入り込む決断をした。有事法制を議論するこの際、もう一度この基本を考えるべきだ。集団的自衛権は、解釈でなく憲法に明記するというスタンスで話を進めたい。

★今野 東(民主、宮城1区、当1、1947生)

◇憲法の平和のうちに生存する権利と、侵すことのできない永久の権利としての基本的人権を侵害するおそれのある有事法制は、無理な憲法解釈をしなければならない。自衛隊法など有事法体系を補充・強化すればよい。

◇憲法が有事を想定していないのは、平和的手段によって有事を起こさないようにすることに本旨があるから。しかし安保条約は有事を想定し、第5条で日米共同対処を規定。この矛盾と相克の中で日本の安全保障は揺り動かされてきた。

◇日本有事の未然防止のために必要なのは、自立した平和外交と日米安保条約の見直しだ。有事の議論より予防外交についての議論を。

★伴野 豊(民主、比例東海、当1、1961生)

 健全な危機管理意識のもとに計画し行動する準備は、やっておかなければならなかった。先輩議員の怠慢だった。また、解釈しなければわからないようでは憲法として不十分だ。

★土屋品子(自民、埼玉13区、当2、1952生)

◇早く憲法を改正して集団的自衛権も盛り込む。

★植田至紀(社民、比例近畿、当1、1965生)

◇平和憲法の具現化として、北東アジアの非核地帯の創設、国会における不戦国家宣言、平和基本法の制定、米軍基地の整理縮小、日米地位協定の改定による国内法優位の原則の確立、ODA基本法の制定などをめざすべきだ。

◇有事法制は国際潮流への逆行。人類は、螺旋を描きつつ平和の確立のために試行錯誤を続けてきた。有事法制の提案は、歴史を知らないか、歴史の進歩を否定するか、どちらかではないか。

文責・河野道夫


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