「行財政改革の推進について」

 

平成161012

墨田区行財政改革推進委員会委員 清宮寿朗

 

1.(2年間の委員会活動の感想)

 

 この2年間、区のご厚意により墨田区行財政改革推進委員として墨田区が抱える諸問題を検討し意見を述べる機会を与えられたことにまず感謝したい。

1990年のバブル崩壊後、景気が長期にわたって低迷し、今後も当分の間は目立った景気浮揚が見込めない状況下にある。景気の長期低迷や少子高齢化、完全失業率の高止まりといった状態が続くなかで、国のみならず自治体も税収減等による慢性的財政危機に陥っている。必然的に従来からの行政経営のあり方について抜本的改革を余儀なくされたといえる。

以下、「行政経営に関する意識改革」と「既存システムの改革」にわけ、それぞれの改革推進活動についての感想を述べてみたい。

 

(1)「行政経営に関する意識改革について」

 地方分権推進一括法が2000年4月に施行され、国と自治体の関係は形式的には新たなものになった。すなわち、新自治法においては機関委任事務が廃止され、国と自治体、都道府県と市区町村の関係は「対等」原則を定めて新しい関係、段階に入ったといえる。

もちろん「対等」原則といっても、「三位一体改革問題」や「都区制度改革問題」等にみられるとおり、国・都道府県・市区町村のそれぞれの役割分担や適正な財源分配、税源移譲、課税自主権等地方財政のあり方を決定づける重要課題が未解決であり、これらの重要課題の議論、交渉、解決の過程を通して、国・都道府県・市区町村間のより実質的な「対等」関係が形成されてゆくものと思われる。

しかし、地方分権推進一括法、とりわけ新自治法によって、区が基礎的自治体として国や東京都と対等の立場に立った意義は決して小さいものではない。

墨田区が、今や国や東京都の出先機関ではなく、独立した基礎的自治体になったことを区民、区議、区職員のすべてがあらためて再認識するとともに、憲法上の住民自治、団体自治の本旨でもある自治体の自立精神と自己責任の意識を持って区行政経営の改革に取り組んでゆかねばならない。

2年間における委員活動を通じての率直な感想として、区職員の意識改革が予想以上に進んでいる、ということを指摘したい。

ただ、地域経済活性化や税収増をめざしての地域経営のあり方に関する取り組みについては、これから、という感じがする。

いずれにせよ、基礎的自治体としての墨田区の未来、「自立した、心温まる地域連帯社会構築」への道のりは、これからが本番といえる。

 

(2)「行政経営に関する既存システムの改革について」

  (会計システムについて)

行政経営、特に財務会計に関する情報公開を実現する施策の一つとして実施された「企業会計方式による財務諸表作成の導入」及び公開は高く評価することができる。

  今後の課題としては、

第一に、公道等の換価不能の固定資産を含まない貸借対照表、固定資産及び流動資産、負債の目録及び各資産、負債の各項目を時価(ものによっては簿価でよい)にした上での計算書や損益計算書の各科目内訳書の作成及び公表である。

第二には、決算重視の財務会計への転換である。

第三に、繰り越し可能とする財務会計手法の導入。

第四に、外部監査制度の導入などがあげられる。

また、過去10年間のデータを科目別に図表化すれば、容易に納税者の理解がえられ、財政上の問題意識も明確化されるようになる。区の財政状況や予算関連の政策立案を説明するのにも有益なはずである。

 

要約すれば、納税者・住民の視線にあわせた経営会計の透明化を図るとともに定期的な財務チェック・評価の目(経営評価委員会など)の存在を設け、納税者に対する説明責任を果たす、ということにつきる。

(組織と人材活用について)

ほとんどの組織にあてはまることであるが、タテ割り的行政組織は行政機能の閉鎖性、セクショナリズムを生み、結果として行政経営の効率性、生産性を阻害する。

この点、区が実施した事業部制、グループ制(主査制)の導入は大いに評価できるものであった。

  今後の課題としては、住民を「公共サービスの顧客」と位置づけ、「顧客満足度」向上を目標とする「現場主義」経営に徹することである。これは山崎区長の持論でもある。

  その実現のための要点の具体例を一つあげる。アンケート調査の有効活用である。

定期的に区民の公共サービスに対する意識や潜在需要及び新しい公共サービスへのニーズを繰り返し調査し、かつ多角的にデータ分析することである。

過去に行われた区のアンケート調査をみると、いかにも形式的と思われる内容のものが多かった。アンケート票の内容には、政策担当者の問題意識や解決能力、説明能力が大きく反映される。その点をふまえ、各政策課題における問題点の抽出方法や住民の判断材料としての情報提供の吟味等について、さらなる改善に尽力していただきたい。

  次に、人材活用についてであるが、まず、外部からの人材活用の具体策として、民間企業との人事交流促進や区在住の主婦やシルバー世代を対象とした短時間制職員(パート職員や有期契約職員等)制度の導入などをあげることができる。

  シルバー世代を短時間制職員として雇用する場合は、地元企業の定年退職者などを優先雇用するべきであり、区職員OBの再雇用はできるだけ抑制するべきである。

民間から幅広い人材、キャリアを公募し適材適所に配置して区民の多様なニーズに対応するとともに、区職員が彼らから学ぶことが重要であること。また、区職員OBの再雇用には住民から疑問視される可能性が高いということが、その主な理由であるが、地方公務員OBの場合、現役時の平均年間給与のみならず退職金や再雇用の機会に比較的恵まれており、かつ地方公務員共済年金等で生活保障も民間企業退職者とくらべて優遇されていることに対する納税者・住民の目を無視することはできない。特に完全失業者率があいかわらず高止まりして、景気低迷が続く中では十分考慮すべき点である。

事業分野やケースによっては20代・30代からの採用も積極的になされるべきである。特定のプロジェクトに関しては、若い世代や外国人対象に有期契約職員を公募することがあってもよい。

現職職員の大幅な人員削減と年間労働時間の大幅短縮により可能なかぎり人件費を圧縮し、短時間制職員や有期契約職員の採用枠を増やしワーク・シェアリングで住民の雇用機会を拡大するべきであろう。また、それが庁内人材育成や公共サービスの効率化、生産性向上にも貢献するはずである。

  一方、庁内における人材活用としては、区職員の中でも特に中間管理職、ミドル・リーダーの育成に重点をおくべきである。

その教育研修内容の主眼は、実践的経営能力の養成である。行政経営に関する本質的問題を探り、問題解決のための思考訓練と論争能力を開発し、具体的解決案の提示ができるような人材の養成を目的とする場をつくるべきである。

そのためにも錦糸町駅周辺に社会人向け夜間・通信制度併用の大学院墨田校舎を誘致してもよいと思う。

同時に、地域政策・計画立案や法令・例規の自立的解釈と自主運用のできる人材育成も望まれる。特に、地方自治法にある広域連合制度等の導入計画や運営の能力、対外交渉能力開発は今後ますます重要になってくるはずである。

以上のような庁内人材の活用対策が進めば、事業事務単位での意思決定権を現場責任者に持たせることが可能となってくる。

  (人件費の圧縮について)

 平成18年度までに職員数を約2069人まで削減する、とした数値目標を掲げての人件費圧縮策は評価できる。

 今後の課題は、職員数削減をもって良しとするのではなく、Aで述べた人材活用の推進と組織の柔軟性によって、あらためて公共サービスの生産性・効率性を高め「コスト削減」を一段と押し進めることである。

 また、給与・退職金・特殊勤務手当等賃金体系の官民格差を縮めるための改定の継続的努力が必要である。一例をあげれば、特別区人事委員会が毎年行っている民間企業の給与等に関する実態調査の方法やデータ及び勧告理由の情報公開とそのあり方をめぐる議論の場を区長会や公務員制度改革委員会等公的組織の下に設置することなどの提案を積極的に行うことである。

 

2.(行財政改革の今後の課題)

 今後の課題を、便宜上、内部問題と対外問題にわける。

  ■内部問題(住民自治の問題)

(1)ホームページ、ケーブルテレビ等による行政情報・議会情報の公開と説明責任の徹底。特に議会や委員会の様子をケーブルテレビで生中継するなどして、住民の議会活動に対する関心を高め、議会情報を積極的に公開するべき段階に来ていると考える。議会の活性化も情報公開がカギを握っているといえる。

(2)   政策・事業事務評価のための外部評価委員会の設置。今回の墨田区行財政改革推進委員会の後継委員会として設置することを要望したい。

(3)   会計外部監査制度の導入。公認会計士、弁護士、税理士等専門家による外部監査委員会設置と委員会活動の随時公開を要望する。

(4)   区内に点在する国・都・区・民間の様々な分野の観光資源をまとめ映像観光ライブラリーとしてケーブルテレビやホームページで公開し内外に墨田区の観光資源情報を発信する。江戸東京博物館発吾妻橋着の下町観光ミニ路線バスの運行事業も検討されたい。これも広域連合の事業の一つとして台東区・江東区等との複数区連携で企画・運営してもよいと考える。

(5)   東京都立大学や早稲田大学等の社会人向け大学・大学院下町校舎を錦糸町駅付近に誘致する。社会人向けの大学・大学院であるから夜間・通信・インターネット併用のプログラムであることが望ましい。区職員や地域企業のミドル・リーダー、起業家、専門家、外国人実業家等の研修や交流の場としても活用できる。

  ■対外問題(団体自治の問題)

  特に「適正な財源配分」の問題では、地方交付税算定や国庫補助負担金の配分システムにおける国のコントロール、地方債の起債における規制(2006年に許可制から原則「協議事項」に改正され規制が緩和される)の原則撤廃に向け、全国の自治体が連携して国とねばり強く交渉してゆかねばならない。場合によっては「国地方係争処理委員会」の場で国と対等に闘う決意、勇気も必要であろう。

墨田区の行政経営の効率化・生産性向上のためにはケースによっては広域連合制度の有効活用も視野に入れておく必要がある。

具体的には、複数区連携による「ミニ債券市場」開設及び運営等の新規事業を広域連合で実施するなどの検討も早めにしておくとよい。「ミニ債券市場」を、区発行の地方債や一定基準以上の地域内企業の社債をインターネット上に公開して取引する債券市場にすることを提案したい。

ついでながら、このシステムが構築されれば、複数区内の企業や個人が所有する特許・著作権等知的財産権や潜在的ニーズ情報流通のためのインターネット知的財産流通市場構築にも応用ができるはずである。

  中長期的観点にたった税収増のためには国や都との役割分担及び財源配分に関する新しい財源配分システムの再構築も急務であるが、ITを活用した地域活性化策や地方財政に軸足をおいた税制改革及び課税自主権の確立についても、墨田区は国や都のみならず、他の市区町村に対しても、自立した基礎的自治体として積極的に提言してゆくべきである。

 

以上