亭 通 信

 

2013年3月17日    TPP ISD条項について。

 

★3月19日、「追伸2 ISD条項についての補説2」を最後に加筆しました。

★3月21日、「追伸3 2013年3月11日 TPP交渉参加についての国会中継を見ての感想」を追加しました。

★3月26日、「追伸2の後半にTPP政府調達条項について」を追加しました。

★3月26日、「追伸4 FTAとEPAの差異について」を追加しました。

★3月27日、「追伸5 政府のTPP参加の大義名分・外交戦略は破綻している」を追加しました。

★3月29日、「追伸6 日韓中FTA交渉スタートについて」を追加しました。

 

 ISD条項とは、「毒素条項」とも呼ばれているもので、「投資家対国家の紛争解決に関する条項(Investor State Dispute Settlement )」のことをいう。

 FTAやTPP、EPAといった自由貿易協定で問題になっている条項で、韓米FTA協定においても韓国内で問題化し、TPP交渉ではオーストラリアがISD条項をTPP協定に入れるべきではない、とオーストラリア政府部内においても主張され議論されている。

 その論旨は「TPPのような多国間経済連携協定におけるISD条項は、結果的に国内投資家・国内企業より実体的・手続的に大きな保護を外国投資家・外国企業に与えるものであって憲法で保障されている法の下の平等に反する」というもの。

 2011年、オーストラリアのギラード政権は「法の下において国内企業と外国企業は同等に取り扱われるべきであるとの内国民待遇の原則は支持する。しかし外国企業に対して国内企業が有する権利と比べて手厚い法的権利を付与するようなISD条項は支持しない」との主張をしている。

 現にISD条項を含まない自由貿易協定の具体例をオーストラリアはすでに持っている。オーストラリア・米国FTA協定(AUS・FTA)である。

 今回、オーストラリアはTPP交渉に参加しているが韓国は参加していない。本当は日韓豪が連携して米国に対抗し、少なくとも当分の間はISD条項をTPP協定に盛り込まない、と合意したいところだが、この3か国は米国主導ですでに上手に分断されている。韓国は今回はTPPに参加していないし、日本が交渉のテーブルにつく9月(早くても7月)にはTPP協定の内容がほぼ固まっていて交渉の余地がほとんどない。またオーストラリアもそれまでには米国に押さえ込まれてしまっているだろう。

 現在の米国は昔の米国とは違う。オバマ政権が誕生して、これでアメリカも昔のようなアメリカン・ドリームの国に復活するのか、と大いに期待していたのだが、結果を見ればあきらかなように、選挙期間中に公約していたことは何も実現されていない。ホワイトハウスの重要スタッフにもブッシュ政権内で活躍していた人が多く入り込んでいる。

 日本の民主党に対する以上の失望感を私も味わっている。

 現在のグローバル企業はもはやモンスターでホワイトハウスに彼らをコントロールする力はもはやなくなっている。

 しかも前回の大統領選挙ではとほうもない政治資金、約1億ドル(約100億円)の政治資金が必要だったと言われている。今回の大統領選挙では約1.7億ドルかかったとも言われている。

 新聞を読まない、ニュースやCMはテレビだけ、と言っても過言ではない米国での選挙戦なので確かにお金はかかる。しかしそこにグローバル企業がオバマ政権につけ込むスキがあったのではないか。

 いずれにしても現在の米国政府(TPP交渉の実権は通商代表部が握っている)はグローバル企業のいいなり、という状態である。過去4年間のオバマ政権もそうだった。

 今回のTPP交渉の事実上の相手は現在の米国通商代表部である。昔の良き時代のアメリカではない、ということを肝に銘ずるべきである。

 ところでISD条項に関する裁判はどこでやるのか。

 それは米国の影響下にある世界銀行傘下の「国際投資紛争解決センター」(米国ワシントンDC、世界銀行本部内)で行われる。この一点だけとっても米国側グローバル企業が圧倒的に有利である。

 しかも判決での審査基準は「投資家にとって実害があるかどうか」であって、そこでは法の支配、正義は通用しない。

 訴訟費用も大きなリスクである。たとえば審査担当者一人につき1日日当が約30万円かかる。裁判外で訴訟前の和解交渉をしてもここでも同様法外な弁護士費がかかる。多国籍企業化している米国大手法律事務所にとってもTPPは願ってもない新天地となる。

 3月15日(金)、安倍首相がTPP交渉参加を正式に表明したが、その際に政府からTPPに参加した場合のメ損得の簡単な試算表も合わせて公表された。

 それによるとTPP実施後の10年間でGDPが約3兆円増加すると予想している。年平均で約3,000億円にしかならない。1%にも満たない0.6%のGDP増加である。しかもこの試算はTPP推進派の謀民間金融機関が試算しているので甘く見積もっている可能性もある。

 政府は0.6%のGDP増加を求めてTPPに参加しようとしているのか?

 それに比して日本が失うものが大きすぎる。利潤追求優先、数値目標至上主義で教育もゆがめられ、最後には日本の心も伝統も文化も失いかねない。

 国とは何なのか。

 国は憲法で保障されている「国民の幸福を追求する権利」(13条)や「法の下の平等」(14条)を遵守しなければならない。

 憲法、国民の幸福や基本的人権を無視してまで、グローバル企業や投資家のためのTPPに日本が参加する必然性、必要性、大義名分、哲学が見えてこない。

 それから安倍首相の参加表明とともに公表された資料の中には、TPP加盟国11か国のGDP合計が世界のGDP合計の40%超となる、との指摘もありTPPの経済的影響力の大きさを強調していた。

 しかしその数字は逆に、日米二か国のGDP合計がTPP加盟国11か国のGDP合計の80%超であることも明示したことになる。

 つまりTPPは実質的には日米TFAであるということだ。

 TPPとFTAの違いについて、ここで一言。

 FTAは締結国相互の弱点を例外項目として棚上げすることができるが、TPPではそれが不可能ではないがきわめて困難である、という点にある。具体的に言うと、たとえば今回国会で話題になった農産物を例外項目にできるのかどうかという問題で、日中韓FTAでは可能だが、TPPではきわめて難しい、ということだ。           

 そこで関税撤廃をするかわりに農家への補助金等産業生産者向けの支援策(約10兆円規模)が取りざたされているが、それもTPP下では不公平な非関税障壁と見なされてしまいISD条項で訴えられる可能性が高い。

 TPP参加には慎重にならざるをえない。TPP交渉に参加することも、どうやら遅すぎてしまったようで多国間交渉のメリットは失われている。

 またTPPに日本を加盟させようとあせっている米国の真意にも問題がある。

 米国のグローバル企業・大資本は日本企業の株や不動産、技術の他、国民が保有している個人金融資産約1,515兆円や民間企業が保有している約50兆円の内部留保もねらっている。サブ・プライムローン事件、リーマンショックを忘れてはいけない。米国金融機関は低所得者層からも平気で生き血を吸う集団だ。低所得者層だけではない。彼らは奨学金制度に見せかけた学資ローン契約で多額の借金を大学生に背負わせて莫大な収益を上げている。

 国の責務、主権を手放してでも、海外からの投資を拡大させ、日本企業の国際競争をつけることが経済成長に不可欠だ、というIMF・世界銀行が世界中に広めた新自由主義の主張、考え方が本当に日本にとって有効でかつ必要なことなのかかどうか。

 海外の投資家・グローバル企業はユダヤ資本や欧米のグローバル企業だけとはかぎらない。中国の大資本家(ニューヨーク・タイムズによれば温家宝前首相の個人資産だけでも約1兆円にのぼるという)・中国系グローバル企業が日本以外のTPP加盟国で投資会社や金融機関、ハイテク企業・IT企業、不動産会社、農業生産・流通会社等を設立して、あるいは買収して日本市場に参入してくることも覚悟しておかるばならない。

 これからの日本にとって本当に必要なことは何なのか。日本人にとってのこれからの幸せとは何なのか、いや、人間にとって幸せな社会、国とは何か。TPP協定締結を契機に、国会で決議するまではもちろんのこと、TPP施行後も少なくとも10年間は真剣に監視し、考え続けてゆきたい。

 我々日本国民は、3.11以後、政府や東電が、繰り返し行ってきた福島原発事故、放射能汚染等に関する情報隠蔽、メディアコントロール(情報操作)を忘れていない。

 TPPでまた同じ人災を繰り返さないためにも国民は政府に問い続けかつ監視を怠ってはならないと思う。

 99%の人間の幸せを犠牲にして1%の富裕層、グローバル企業・大資本家の利潤追求のためだけにTPP参加を決定してはならない。日本の未来のために。

 

(追伸1) ISD条項についての補説1 (2013年3月17日)

 TPPが締結されたからといって日本の法律が無効となるわけではない。

 しかし国民健康保険法等の法律が残ったとしても米国等の民間医療保険会社、病院、医師会、医療機器メーカー等からISD条項で訴えられ、彼らの医療市場参入が認められれるようになれば日本政府による薬価等医療費の抑制もできなくなる。

 10年後には、国民皆保険制度が残ったとしても、現在の米国のように非人道的な医療現場に日本人自身が直面しているだろう。

 また米国が、TPPと知的財産保護法(PIPA)やオンライン海賊行為禁止法(SOPA)をセットにして日本のIT産業を買収したり、著作権侵害等で高額の損害賠償請求をしてくることも予想しておかなくてはならない。

 そして知的財産保護法の関連で言えば薬価も影響を受ける。たとえば米国の製薬会社がジェネリックの使用禁止を訴えてくる可能性がある。

 また日本企業も日本以外のTPP加盟国に本社を移転し、あるいは子会社等を設立して、外国企業として日本市場に再上陸するケースも増えてくるだろう。

 最後に、私からの提案を一言。

 私はTPP等多国間経済連携協定に反対はしない。けっして反対派ではない。きわめて慎重な賛成派である。

 それは農業関係者でなくとも誰しもが考えていることだと思う。

 当然、私も無条件で賛成、というわけにはいかない。日本の将来がかかっている。単純に戦前のように日本政府に白紙委任することはできない。

 条件付賛成である。条件は以下の通り。

 協定の締結過程における重要事項(国民生活に影響が予想される事項)は透明にし、政府や政党、マスコミは説明義務を果たしてもらいたい。そのためにはまずTPPでの手続きはその重要事項については「デュープロセス」で公正・公平・透明に行われることが合意されなければならない。

 できればのことだが、さらに日本・韓国・オーストラリア・インド(できれば台湾も)が一緒にかつ同時に交渉参加できる経済連携の枠組みをつくって再スタートすることを提案したい。

 それは、もう遅い、と言われそうだが、そもそもTPP協定の締結目標は2015年中であった(2011年11月時点でのTPPに関する公表によれば)。それがいつのまにか2013年9月中、おそくとも年内に合意と2年も早まっているのだ。原則にもどって2015年内合意でもいいはず。そして韓国、インドに交渉参加を打診し彼らとの連携も検討すべきだ。

 あるいは韓国のように日米FTAを先行させるという方法もある。案外、これが一番無難なのかもしれない。日印FTAと日ペルーFTAは交渉を完了している。日豪FTA(農業・酪農の国、北海道を犠牲にするわけにはいかないのでじっくり対策を練るべきだ)も交渉中だ。日メキシコFTA、日チリFTA、日ASEAN・FTA、日スイスFTAはすでに発効している。あとは日韓中FTAの交渉もはじまっている。

 

(追伸2) ISD条項についての補説 (2013年3月19日)

「日本は過去いくつものFTAを締結してきたが、いままでISD条項で日本政府が訴えられたことはない。清宮はISD条項を恐れすぎてはいないか」というご意見をいただきました。

 確かに日本も過去いつくかのFTAを締結してきました。しかし相手国は発展途上国ばかりで日本から技術援助や経済援助を受けている国ばかりです。かれらが援助国の日本をISD条項をたてに訴えるとはとても考えられません。そして日本が優位な立場で締結し運用されて来たことも事実です。

 また、先進国、特に訴訟社会・訴訟大国のアメリカを相手にしたFTAはまだ締結していません。今回のTPPはその加盟国GDP合計の80%以上を日米で占めることから、事実上の日米FTAという側面もあるわけですが、米国相手の経済連携協定は初体験ということになります。

 韓米FTAやNAFTAを見ますと、米国系グローバル企業によって相手国政府を相手取って訴訟を起こしていますし、データとしては出てきませんが、訴訟前の段階で行う和解(示談)交渉も頻発しています。TPPで米国系グローバル企業がISD条項をたてに日本政府を訴えることは当然予想されますし長い目で見るとかなりの件数になると思います。そういう流れだと思います。

 仮にISD条項はそんなに気にしなくてもいい、というのであればTPP協定のメイン・アグリーメントから外すべきだと思います。

 豪米FTAの時のように、TPP協定でもISD条項が外せたならば問題の半分は解決です。残る問題はTPP協定第11章の「政府調達」条項と協定書メインアグリーメントと同時に締結される「労働協力に関する覚え書き」が残る問題となります。

 これらの条項は、日本の大企業にとっては大きなメリットと考えられますが、しかし地方の中小企業や労働者にとっては大きなデメリットになる可能性があります。またFTAとは違いTPPの場合は都道府県レベルの広域自治体だけではなく、市区町村レベルの基礎自治体においても中期的に見れば大きな影響がでてきます。

 「政府調達」関連で一例をあげれば、一般競争入札の実施のケースです。基礎自治体における一般競争入札の範囲がTPPによって大きく広がり基礎自治体もTPP加盟各国の建設会社や人材派遣会社、警備会社、IT企業、事務機器メーカー、運送会社、宅配会社等に対して公正・公平な公共事業の一般競争入札を実施しなければならなくなります。入札関連資料はすべて英訳し各国の関係機関に通知しかつインターネットによる電子入札のシステムも入れ替える必要がでてきます。

 人件費や物品等の安価な海外企業(多国籍・グローバル企業も含めて)により落札されるケースが国、都道府県はもとより市区町村レベルでも増えてくることは目に見えています。

 いずれは国や自治体が出資している地方公社、独立行政法人や第三セクター、公益法人、学校法人等の準公共的企業・団体の一般競争入札(企画コンペ等)にも海外企業・グローバル企業が参入してくるはずです。

 それに伴って日本に加盟国企業に雇用された様々な人種の人・モノが入管法等の非関税障壁を気にせず日本の基礎自治体に自由に入ってくることになります。

 そういう意味からも基礎自治体における税収、予算、事業計画にも大きな問題が出てきますし、日本人の雇用問題も発生します。

 他にも多くの課題がありますが後日、あらためて書くことにいたしますが、「政府調達」だけを取り上げても、FTAの場合とは違い、TPPでは農協等農業関係者だけでなく、国、自治体等にとっても大問題であることに早く気がつくべきです。

 ★(参考)

TPPの政府調達には基礎自治体(市区町村)による調達も含まれる。入札公開基準額も大幅に変更される。

人材派遣業や警備業などの入札が含まれる物品等入札では従来の20万SDR(約2,000万円)以上から5万SDR(約500万円)以上に。

技術的サービスは、現在の150万SDR(約1億5,000万円)以上から5万SDR(約500万円)以上に。

建設業は現在の1500万SDR(約15億円)から500万SDR(約5億円)以上に変更される。

 SDRとはIMF(国際通貨基金)加盟国が特別引出権(Special Drawing Rights)の単位で、1969年に創設された国際準備資産の一つ。当初は1SDR=1米ドルだったが変動相場制以降は通貨標準バスケット方式が採用され換算される。これはIMF加盟国が保有している国際準備資産(金やドル)を補完するもので、加盟国内で利用可能な通貨に対する一種の潜在的請求権。米ドル、円、ユーロ、ポンドへの交換が行われておりその交換価値は、米ドル表示で毎日IMFの公式サイトで公開されている。

 

(追伸3)  2013年3月11日 TPP交渉参加について国会中継を見ての感想(2013年3月21日)。 3月8日の国会中継を見ていて、みんなの党の江田幹事長の質問からわかったこと。

それはTPP交渉参加が遅すぎたということである。

このままだと多国間交渉のメリットであるTPP内で仲間を探して連携する暇はなく、それどころかTPP内ですでに構築された連合国が日本に対して圧力をかけてくることになる。

TPP交渉はこのままだと早くて7月、場合によっては9月交渉参加ということになり、9月内に協定合意を強要されてしまいそうだ。

TPP交渉は事実上、形式
、参加のための儀式になってしまいそうだ。

この状態でもしTPPに参加決定し協定が発効してしまうと、日本が米国主導の経済GHQないしIMFの経済統制下に入るに等しい結果となる。

それではTPP域内において日本にとつては失うものに比較して得るものが少なすぎる結果になる。

自由貿易・投資自由化といっても実質的には米国(多国籍大資本)にとっての自由があるだけでの結果になる。

アメリカ
製ともいえる「ISD条項
の存在がそれを暗示している。


TPP交渉にこれから参加することはかまわないが、すでにTPP参加のメリットはほぼ消滅しており、かえってデメリットの方が大きくなっている。

この際、TPP交渉のテーブルから離脱することも視野に入れてとりあえず参加して、次善の手かもしれないが、離脱後、RCEP(東アジア地域包括経済連携構想)を前提とした日米FTA(二国間交渉であればゼロベースで始めるので日米だけの一騎打ちができる)、あるいはインドや韓国などにも交渉参加を呼びかけて日韓印米4カ国FTAのような枠組みでゼロから始めたらどうだろう。

もしTPP11か国の枠組みに固執するのであれば、まだFTAを締結していない関係国の中の利害対立の少ないコロンビアとは早急にFTAを締結し、利害対立のあるニュージーランドや米国とは時間をかけてFTA交渉をゼロからすればよいと思う。

  (参考) オーストラリアとはすでにFTA交渉中。カナダ・メキシコはNAFTAでアメリカ市場の一部になっているし、メキシコてはすでにFTA締結済み。チリともすでにFTAを締結しており、ペルーとのFTA交渉はすでに完了している。また、ブルネイ・ベトナム・シンガポール・マレーシアは2008年に日・ASEAN包括的経済連携協定を締結している。ちなみに日印FTA交渉は終了し、日GCC間でのFTAも交渉中。日EU間のEPAは4月からスタートする予定。

あるいは最初からRCEPをゼロベースで始める
という選択肢もある。

いずれにしてもこのままでは日本市場は米国政府、というよりも欧米の多国籍企業・大資本群、具体的には全米貿易協議会(NFTC)の会員企業やユダヤ資本に、時間をかけて巧妙に支配されてしまうだろう。

彼らはホリエモンどころではない。ホリエモンの何万倍の力を持っているグローバル企業・大資本である。それを思い起こして欲しい。

 

(追伸4)  3月25日、政府はEUとの間でEPA交渉に入ることを発表しました。そこでEPAとFTAとの差異。そしてGATT、WTO、TPPとの差異についてご質問がありましたので簡単に説明しておきます(2013年3月26日)

WTO(World Trade Organization /世界貿易機関)は1948年に成立したGATT(General Agreement on Tariffs and Trade)を引き継いで1995年に新たに設立された機関で、日本は1955年にGATT時代に加盟している。

GATTは「関税および貿易に関する一般協定」のことで、関税や輸出入制限等貿易の障壁を取り除き自由で無差別な貿易を推進することを目的としていたが、GATTの目的をWTOは引き継いでいる。

WTOとGATTとの差異は、WTOがサービスや知的財産権をも含めた世界の貿易全般をコントロールすることになり、そのための立法権および司法権をも有することになった点にある。

WTOは世界の150か国以上の国と地域が参加している。WTOでは発展途上国に対する例外措置はあるものの原則として加盟国すべての国に対して同一の関税を一律に適用している。

しかしWTOは加盟国が増えるしたがって交渉は常に難航するようになった。また決まったルールを加盟国に一律形式的に適用するので交渉はさらに難航し問題解決が困難になってきた。

そこで締結した国家間にだけ、その合意された関税等のルールが適用されるというGATTメインアグリーメント第24条に基づいてFTA・EPA・TPP交渉が始まった。

FTA(Free Trade Agreement/自由貿易協定)は関税の撤廃とサービスへの投資規制撤廃を目的にした協定。

EPA(Economic Partnership Agreement/経済連携協定)は関税および投資規制の撤廃、投資ルールの整備、知的財産制度・競争政策の調和、人的交流の拡大、各分野での協力を目的にした協定です。

TPPもEPAもGATT第24条を根拠にしたFTAの一種というか拡大協定で、いずれも複数国間での成立が可能です。

 TPP(Trans-Pacific Partnership/環太平洋包括的経済連携協定)とFTA・EPAとの差異。

 FTA・EPAの場合は、交渉各国の弱点分野を保護するための例外規定がみとめられやすい点でTPPとは大きな差異があります。TPPでは加盟各国共通の一般的例外は存在しても、よほど特殊な事情がないかぎり特定の加盟国だけに適用される例外は原則として認められていません。

 

◆参考資料 外務省 TPP交渉

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/

TPP協定書の原文はニュージーランド政府公式サイトで公表されています。

 

(追伸5) 政府のTPP参加の大義名分・外交戦略は破綻している(2013年3月27日)。

 

外務省のTPP関連サイトの情報が多すぎて読みきれないしわかりずらい、というご意見がありました。確かに。それでは外務省のそのサイトにある最後のリンク先、「内閣官房」の「経済連携・TPP関係情報」の下記サイトだけを見ていただきますと 

 http://www.cas.go.jp/jp/tpp/index.html    

 その中に「TPP協定交渉の現状(説明資料)」(25年2月)というのがあります。これはTPPに関する政府の統一見解であり、かつ政府のTPP外交戦略の概要が簡単に示されています。

 参考1では「TPPに参加した場合のメリット、デメリット」を表にして掲載されています。これが政府のTPP外交戦略の概要そのものであり、TPP参加の意義、大義名分でもあるわけですが、すでに上記のように、この大義名分・戦略は破綻しています。内閣官房の考えたデメリットだけが課題として残っています。

 メリットの部分を一言で言えば、TPP参加によ経済効果が大きい、と言う点。

 それから中国、韓国、インドといったアジア経済成長のエンジンとなる国が将来はTPPに加盟し、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)に発展する可能性がある。そうなればアジアの経済成長の果実を将来的に取り込める、という点の2点に集約できます。

 しかし、同じサイト内にある「関税撤廃した場合の経済効果についての政府統一試算」(25年3月15日)を見ますと、ここで示された経済効果は失うもの、デメリットや経済的損失等に比してあまりにも小さすぎました。

 また、中国がTPPに参加する可能性はTPP第11章の政府調達条項やISD条項もそうなのですが、メインアグリーメントではない「労働協力に関する覚え書き」だけを見てもまず参加しません。韓国もTPPに参加するなら今しかありませんしインドも同様です。

 TPP加盟国11か国だけでは事実上の日米FTAですし、逆に日本市場が米国のグローバル企業に取り込まれる結果になるだけです。

 この内閣官房の資料を読むだけでも政府の大いなる戦略ミスがわかります。

 政府の政策目的はいいとしても、手段の選択ミスと国際戦略のミスということです。

 昨日からテレビや新聞紙上では、西武ホールディングの筆頭株主になっている投資ファンド・サーベラスが、TOB(株の公開買い付け)を開始した、と大々的に報道しています。

 西部ホールディングも西友のように外資系企業になってしまう可能性がいまでもあるわけです。TPPに加盟したら、非関税障壁の撤廃でこんなことは日常茶飯事のこととなり、ISD条項や政府調達条項で、もっと過激にやられてしまうことでしょう。

 日本の黒船による開国どころか日本の米国グローバル企業による植民地化が懸念されます。10年後には日本の上場企業の過半は米国のグローバル企業や欧米の大資本によって経営支配されていると思います。TPPによって日本経済がアジアの経済成長を取り込むどころか、米国経済に取り込まれてしまうということです。

 

(追伸6) 日韓中FTA交渉スタートについ(2013年3月29日)。

 日・韓・中FTAがソウルで昨日からスタートしたとのニュースがありました。今朝の新聞では報道されていませんが、大ニュースだと思います。外務省も最近になってTPPに韓国・中国が参加しないことがわかってきたようなんですね。

 これからが外務省の本領発揮のチャンスです。特にチャイナ・スクール、コリア・スクールの官僚たちの名誉挽回のチャンスです。

 まずやるべきことは、日・韓・中FTAをTPPよりも前にまず締結してしまうことです。TPPはそもそも2015年までに締結することを目標にしていました。いつのまにか2013年9月までと期限が縮められてしまいました。米国の対日外交対策の一つだったと思います。                 

 原則にもどってTPPは2015年までに締結すればいいのですし、日本は交渉継続ということで他の10か国に先に締結してもらってもいい...のではないでしょうか。最悪の場合は一時離脱すればいいことです。

 まずは日韓中FTA交渉を先に締結し、その上で、日韓中FTAの東アジアグループとインド(日印FTAは交渉完了)の4か国が一緒になってTPP新規加盟の交渉に入る、というのが正解だと思います。

 FTAはTPPと違って加盟国の弱点を例外扱いすることが許される協定ですから、紆余曲折はあっても締結は十分可能だと思います。また、もし日韓中FTAが無事締結されれば、尖閣諸島をめぐって懸念される日中尖閣沖海戦の危機も、ゼロにはなりませんが半減すると思います。

 くりかえしになりますが日韓中FTA締結後のTPP交渉参加が正解です。外交力では横綱級の米国に対抗するには、やはり横綱級の中国や大関級の韓国と連携しないと日本単独での交渉では米国に歯が立ちません。

 それは佐藤・ニクソンの日米繊維交渉に始まって、日米構造協議や規制改革など日米貿易摩擦の40年の歴史をひもとけば一目瞭然です。

 アジアの経済成長の主力エンジンである4カ国(日韓中印)の各国の弱点を補強しアジア経済の成長を加速させなければTPPの意味がありません。そういう意味で主力エンジンを装着した「真正TPP協定」を日韓中FTA後にめざします。

 具体的には新規参加の4カ国グループについては個別の例外事項を認めてもらう「覚え書き」を全加盟国に追加承認してもらえばいいのです。

 日本の外交力は小結級あるいは十両級ですから、今回のTPP参加においては事実上、協力しあう国も時間もない状況では米国に適当にあしらわれて完敗で終わりです。それに中国、韓国、インドの参加していないTPPなら参加する意味がありませんので、政府(内閣官房)のTPP参加の大義名分は破綻しています。

 ついでに言いますと、TPPで「日本を開国」させる、というキャッチコピーは日本のイメージダウンでした。日本は先進国では関税率が一番低い国で、一番開国している国でした。それなのに、それを日本の首相にまで言わせて世界中に

日本が鎖国の国、保護主義で経済大国にまでなったずるい国、というマイナスイメージを植え付けてしまいました。またこれからもそういうマイナスイメージを米国などに利用されながら日本は外交交渉をして行かなくてはならなくなってしまっています。

 外務省の官僚にはもっと気をつけてもらいたいと思います。

 

2013年3月13日  TPPとコメの関税撤廃問題について 

 コメの関税撤廃については、2008年のWTOで2018年から完全自由化されることは決定済みのはずです。

 今日は自民党でTPP交渉参加をめぐって参加条件をまとめるべく徹夜とのこと。15日に総理が正式に参加表明するとの報道がありました。

 自民党内で一番もめているのがコメの関税撤廃問題です。JAはコメはISD条項の適用除外にすることをTPP交渉参加の条件とするよう自民党と政府に圧力をかけています。


 しかしWTOで2018年からは関税撤廃することがもうすでに決まっているのに妙ですね。

 もしWTOの決定を伏せておいて、コメをTPPのISD条項適用例外にするかわりに米国の軽トラックや砂糖も例外にすることを日本に認めさせるというのであれば、これは日本のコメの生産者や砂糖生産者およびスズキ自動車等軽トラックメーカーに対するごまかしではないでしょうか。いや国民に対する重大な説明義務違反ではないでしょうか。
 
    

2013年3月11日  国民皆保険制度とTPP (3)

 PP協定締結後も国民健康保険制度は維持される、と総理をはじめ多くの政治家のかたが明言されていますが、その趣旨が明確ではありません。TPP協定が締結されたからといって国民健康保険法その他の日本の法律が無効になってしまうわけではないので対内的には今まで通りであることは当然です。

 問題は国民皆保険制度がISD条項の適用除外になるという趣旨なのか。あるいはISD条項で日本政府が訴えられても勝訴を勝ち取る保証があるという趣旨なのか、首相その他の政治家の発言の趣旨がはっきりしません。

 

 また中国政府要人が関係する会社や金融機関、大資本家がTPP加盟国で企業(会社)を設立し、その企業を日本市場に参入させれば日本の規制を無視して自由にビジネスができてしまいます。たとえばハイテク企業やテレビ等のメディアを買収したり、沖縄の土地や島を会社名義で取得したり、ハイテク企業やフジテレビ、朝日新聞などの大手マスメディアの経営権を獲得したり、株式会社の病院をチェーン展開したり、農業や漁業等さまざまな事業に参入してきてしまうと思いますが、そういう心配はしなくていいのでしょうか?

 また政治的にも影響が出てきます。たとえば中国系多国籍企業が沖縄で土地をどんどん買い、また沖縄の企業をどんどん買収してゆけば、昨年2012年8月21日「尖閣諸島問題について」(このコーナー)でも書きましたが、中国資本の支援で沖縄の独立運動は本格的になります。尖閣問題、米軍基地問題とあわせてトリプル問題になり沖縄問題は非常に複雑なってしまいます。

 さらに日本企業としても日本の規制や税制から逃げるため、他のTPP加盟国に本社を移転し、外国企業とし日本市場にて再上陸するというケースも増えてくるのではないでしょうか。製造業だけでなくサービス産業も日本から出て行ってしまい、日本国内の産業の空洞化はますますひどくなり税収や雇用にも不安が出てきます。

 今週中に安倍総理はTPP参加表明を正式にするようですが、(1)でも書きましたが、それらの諸問題を解決してTPPに参加するだけの時間があるでしようか?

 

2013年2月28日 国民皆保険制度とTPP (2)

 2月27日(水)の産経新聞朝刊第5面に「TPP交渉で医療保険分野が急浮上し所管官庁の厚生省と総務省が国民皆保険制度が崩壊するのではないかと危機感を強めている」と報道しています。 今頃になって所管官庁の官僚たちが、ことの重大さ深刻さに気づき始めたということでしょうか。 

 私は官僚たちの情報収集力・分析力・理解力のお粗末さに危機感を強めました。 

 TPPは事実上の日米FTAと言っても過言ではない側面もあります。アメリカの出方によってはTPPから離脱し、韓米FTAのように日米FTA交渉に切り替えゼロベースで再出発する手もあります。 以下、私論。  

 それにしても日本政府はオバマ政権が目玉政策として掲げ、国民からその実現を期待されていた「単一支払い皆保険制度(オバマ・ケア=日本、イギリス、カナダが採用している国民皆保険制度)」創設が挫折した経緯をまったく知らなかったことになる。 

 アメリカにも公的医療保険制度はあった。65歳以上の高齢者用公的医療保険制度(メディケア)と低所得者用公的医療保険制度(メディケイド)の二種類である。

 しかしこの公的医療保険の受給資格を得られない者、65歳未満で低所得者ではない中流層サラリーマンは、公的医療保険には入れず民間医療保険に加入することになる。

 この公的医療保険制度と民間医療保険制度の共存体制がアメリカの医療保険制度。 

 しかし公的医療保険にも民間医療保険にも入れない無保険者が近年急増していて、その数なんと5,000万人に迫る勢いだ。さらに悪いことには、民間医療保険に入っている中流層でも民間医療保険会社の保険料の出し渋り等によって、べらぼうに高額な医療費を支払わされている。医療費が払えず借金し、結果として破産申請する者は年間で約100万人に達しているという。 

 そこでオバマ大統領は、メディケアを全国民に広げるオバマ・ケア(日本式単一支払い皆保険制度)実現を公約し、それが多くの国民に支持され大統領に当選したわけである。 

 しかし民間医療保険会社や製薬会社の莫大な資金投入でメディア・コントロールし、結局オバマ大統領はオバマ・ケア実現に失敗してしまった。 

 結果、今まで通りにするか、それとも従来の民間医療保険加入者層にメディケア類似の新しい公的医療保険制度を設けて、二者択一の選択制に・u桙キるか、という制度設計に変更してしまった。 しかし、中流層対象の選択的公的医療保険制度は、日本式の単一支払い皆保険制度ではない。 

 たとえ日本がTPP交渉の結果、国民皆保険制度を守りきったとしても、民間医療保険制度との選択制となれば、その制度は従来の日本式単一支払い皆保険制度ではなくなる。民間医療保険会社と加入契約するか政府が所管する皆保険ではない公的国民保険に加入契約するか、国民が自己責任で選択することになる。したがって政府は、国民を代表して製薬会社や医師会、病院、民間医療保険会社、医療費用ローン専門の民間金融機関、医療機器メーカー等に対して規制・コントロール・価格交渉等がでなくなる。

 

 この点に注意を払って日本政府には交渉して欲しい。場合によっては冒頭に述べたようにTPP離脱もやむを得ない。

◆参考 単一支払い皆保険制度とは、 

 単一支払い皆保険制度とは、医療サービスを受ける国民が民間医療保険会社を介さずに政府や自治体等公的機関に直接保険料を支払い、少ない自己負担で診療・治療・手術等の医療サービスが受けられるシステム。また、国民が支払う保険料は所得によって決定され、その累進性が所得の再分配機能を持つ。さらに政府だけが介在し《アメリカのように利潤追求のみの民間医療保険会社の介入がない》することによって政府が医療費や処方薬費用をコントロールし抑制することができるシステム。 

 

2013年2月19日 国民皆保険制度とTPP (1)

 
 
 今日(2月19日)NHKで参議院予算委員会の質疑を見ていました。ちょうど共産党議員がTPP交渉参加反対の立場から医療保険制度を例に挙げて安倍総理に質問していました。

 質問の要旨は「国民皆保険制度」の存続がTPP参加によって危ぶまれる、というものでした。安倍総理は「我が国の国民皆保険制度は存続させる」旨、明言されていましたが、拝見していてどうも両者とも問題の本質にはまだ認識が及んでいない可能性があるな、と思いました。

 そもそも国民皆保険制度を存続させるかどうか、については米国側(事実上、米国通商代表部と言ってもいいと思います)はもともと問題にしていません。問題の核心二つ。第1に日本式の単一支払い皆保険制度が存続されるかどうか。第2に医療保険の適用から診療・治療対象を増やすことはあっても減らさない、という医療保険体制を維持できるかどうか、の二つです。アメリカの医療保険会社、医療機器メーカー、株式会社の病院、製薬会社、医療ローンの会社等金融機関は虎視眈々とねらいをつけています。

 2009年、カリフォルニア州で公的医療保険の適用対象から歯科と眼科がはずされましたが、一握りの金持ちをのぞく普通の市民にとっては悲惨な事態に陥っています。それからアメリカ全体をみても公的医療保険(メディケイドとメディケア)に入れない人、つまり無保険者が5千数百万人いる、という事実も直視すべきだと思います。子や孫の将来のためにも、今、アメリカはどうなってしまっているのか、アメリカの現状を正確に調べて分析し、その上でTPP参加の交渉をしていただきたいとせつに願います。

 

2013年2月17日 規制改革会議とTPP

 2月16日の読売新聞・朝刊4面に規制改革会議で25分野のうち4分野の59項目の見直し対象を決めるとの報道がありました。その4分野とは「健康・医療」「エネルギー・環境」「雇用」「創業等」となっています。会議の目的は新成長戦略を盛り込み経済再生につなげる、とのことでした。TPPの国内議論が実質始まったな、と思いました。もちろん、TPP協定が締結され日本もTPP加盟国になったからと言って、現在日本にある法律が無効になるわけではありません。国民健康保険法も存続するのはいうまでもありません。しかしISD条項によって護られた多国籍企業(TPP加盟国所属の多国籍企業ですから中国系資本も入ります)に日本市場は蹂躙され日本のそれまでの秩序やシステムは徐々に壊されて行くことになります。多くの日本企業も他のTPP加盟国に本社を移転してしまい日本の規制や税制から逃げる可能性があります。             

 それらの予防の観点から規制改革会議なのでしようが、ここでは1点だけ述べてみたいと思います。

 それは新成長戦略・経済再生という目的に対応した規制の見直し対象の選定についてです。

 見直し対象は目的からすれば、当然、行政規制立法全体というわけではないはずです。マスコミでよく使用されているキーワード「聖域なき規制の撤廃ないし見直し」というレトリックも当然、目的との関係から「経済的規制立法においては原則、聖域なき規制撤廃ないし見直し」と表現するべきであり、社会的規制立法は対象からはずすべきであると考えています。もちろん両者間の領域にはグレーゾーンもありますが、それは目的からすれば最後の検討課題とするべきであると思います。

 問題は「安全・健康・環境」に関する見直しについてです。公害や銃刀、麻薬、交通規制等の規制を含めて生命・健康に関わる薬事・医療関連の規制、そして学資ローン規制を含む教育関連規制などは社会規制であって経済的規制にはあてはまらないと思います。

 現在のアメリカの医療実態や学資ローンの運用実態を調べてみますと低所得者層にとっては絶句するほどの悲惨な状況になっています。ここでは詳細は述べませんが、環境、教育、医療など社会的規制については見直し対象とすべきではないのでは、と考えています。もちろん予算の削減の一助にはなるかと思いますが、アメリカの9.11以降のように医療分野での予算カット部分を軍事予算に回すという必要性もありませんし、また、見直しの目的は経済再生です。経済的規制を徹底的に見直すことが先決だと思います。 

 

2013年1月4日  新年あけましておめでとうございます。

 昨年もいろいろなことがありました。尖閣諸島問題(日中問題)、ips細胞で山中教授がノーベル賞受賞、安倍自民党が総選挙で圧勝、オリンピック。

 安倍第二次内閣の基本政策、たとえば大胆な金融緩和政策やTPP問題に対する慎重姿勢、外交通商政策には賛成なのですが、約400万人いる公務員の人件費(一人平均で約1,000万円といわれています)の20%削減や道州制導入による抜本的な行財政改革断行(二重行政の廃止や議員や諮問委員等の人件費・定員の大幅削減、中央政府と地方政府の役割分担とそれに対応した財源の再配分ないしシャープ税制導入以来の抜本見直し等)、幹部公務員の制度改革、経済的規制の緩和についてはもっと積極的なプログラムが必要。

 ただし経済的規制と健康・安全・福祉等に関する社会的規制を混同していっしょくたに規制緩和させるのは本末転倒です。まさかわざと混同させるようなことはしていないとは思いますが、混同していっしくたに規制緩和しますとアメリカのように若い世代、特に育児世代や学生等低所得者層が今まで以上にさらに追い詰められ、場合によってはアメリカ並みの借金人生になってしまう恐れがあります。アメリカの民間金融機関は「バイオハザード」のアンブレラ社のような存在であったことが「サブプライム住宅ローン問題」で明らかになったばかりです。その意味からもTPP交渉参加については、アメリカの民間金融機関にとっての非関税障と毒素条項適用の可能性を十分検討して、その上で経済的規制緩和にも取り組んで欲しいと思います。

 日本維新の会については太陽の党との合併で、吹いていた風が急に止まってしまいました。橋下大阪市長とみんなの党の渡辺代表のツートップだったら風は吹き続けたと思います。

 安倍自民党が年末の総選挙で大勝しましたが、自民党の今回の得票数は前回の総選挙の時よりも218万票も減っています。決して自民党の支持者が増えたわけではありません。要するに維新旋風が止まってしまっただけのことなんですね。前回は投票に行ったが今回は行かなかった、という方がそこらじゆうにいました。

 話はかわりますが「風が吹いている」は本当にいい曲でした。久しぶりに感動させられました。彼女の歌うまなざしがいいですね。ユニット「いきものがかり」がNHK紅白のトリをつとめたのはそれなりに意味深長です。

 次に風が吹くのはいつのことでしょう。しかしやたらに吹かれても困りますね。国民は混乱します。旋風は大歓迎ですが、タイミングを慎重に図って欲しいと思います。

 ところで、医療革命に直結する研究でノーベル賞受賞した山中教授は世界的な話題になりました。すでに網膜、肝臓、心臓の分化過程のコントロールに成功しつつあるようです。これは生物の進化の謎を解明するのみならず、再生、復活、そして不老不死の可能性まで予想させる大研究でした。その研究過程は奇跡と偶然の連続で、逆説的に神の存在、神の意思をも実感させられるものがありました。一方で映画やビデオゲームで話題沸騰の「バイオハザード」の世界、あの巨大な邪悪の世界へ通じる扉も現実に開かれた可能性もあります。神が現れると同時に悪魔も現れる、ということでしょうか。

 話が変わります。中国による中華思想、中華帝国主義が日中戦争および東南アジア戦争の可能性を高めています。

 またIT技術、スーパーコンピューター、人工知能の急激な進化の結果、そういう超最先端の技術を悪用した金融資本主義と軍産複合体の陰の支配者層が世界中を極端な格差社会に変えつつあります。この現象は何なのでしょう。シュンペーターが「資本主義は自壊する」と言いましたが、その自壊現象が始まつているのでしょうか。

 確かに日・米の経済も自壊過程に入っているようですし、世界中が混乱期に入ったような気がします。また、陰の支配層の影響もあってか中近東世界ではユダヤ教国イスラエルとイスラム教諸国との間での中近東戦争の危機も高まっています。

 今後は世界中がWTOの道を捨てて、TPP問題・FTA問題に象徴される世界経済のブロック化と新列強国の価値観・システムの域内統一基準化が進みそうです。

 安倍政権の基本政策も一時しのぎのものにならないよう、知恵を結集し、捨て身で硬直化した古い巨大な壁を打ち壊して(もちろん良き日本の文化伝統は別です)、新しい国づくりを目指してほしいと思います。

 今年は日本人にも、もっと真摯でまっとうな正義感、宗教観が問われて来そうです。

 若者たちはどうすればいいのか。

 古い価値観(たとえば学歴主義や偏差値主義)から解放され、それぞれが自由に思考し、自由に判断し、自分の道を自分でつくり、自分で歩んで行く力を身につける時代に入ったと言えます。

 サラリーマンからの独立を推奨する起業家精神というのではなく、たとえば親が子どもを育てる場合について言えば、今までだったら生意気な、一筋縄では行かないような子どもでも、親自身が既存の価値にとらわれることなく、子どもの個性を大切にし育むべき、ということです。

 

 2012年8月29日 竹島問題について

 竹島も、尖閣諸島と同様、米国も日本領土として認めている島ですが、だからといって日米同盟軍が韓国軍の日本領土侵略(不法占拠)に対して軍事的に排除するという行動はとれません。尖閣諸島を中国軍が侵略ないし不法占拠した場合と違う点です。

 竹島問題については外交問題として考えざるを得ないわけですが、第1に、今回、国際司法裁判所に提訴できる機会を得たということはラッキーでした。第二に、この国際司法裁判所提訴を絶好の機会ととらえ、日韓の政党、学者、学生、個別の政治家、マスコミ等、民間の各レベルで本格的なディベートの機会をつくるべきだと思います。

 もちろん問題解決をめざすわけですが、日韓の場合、いま大事なことは、結論を得る以上に、問題解決に向かってのプロセスそのもの、両国民が真剣に本音でしかも客観的事実を前提としたディベートではないかと思います。日本人も逃げることなくもっと真剣に韓国人と向き合う必要があると思います。

 それから韓国の現大統領の言動問題については、もしかすると韓国政府の問題ではなく彼個人的な資質の問題かもしれません。あわてる必要はありません。念のため、次期大統領の登場を待ってあらためて考えてみたいと思います。

 

 2012年8月21日 尖閣諸島問題について

   猫亭通信の2012年8月21日付 「尖閣諸島問題について」をTPPとの関連など一部加筆して掲載しました。

 

 尖閣諸島問題をあえてこじらせることは、日中両国にとって、外交通商上、現段階てはなんのメリットはありません。どちらかと言えば、今回の香港人魚釣島上陸騒動は、中国国内の権力闘争(現政府官僚を中心とする勢力=中道・穏健派 VS 軍をバックにする勢力=左派・急進派)に利用された事件、あるいは演出された事件ではなかったかと思います。

 一方、尖閣諸島問題が日中間の危機的な領土問題(たとえば人民解放軍と海保・自衛隊の尖閣諸島沖海戦プラス魚釣島争奪戦)としてクローズアップされてくるのはもう少し先のことと思います。私の予想としては2015年以降2020年前後までに起きる可能性が高いと思っています。

 戦略的に言えば、中国軍が東シナ海での海戦で日米同盟軍に70%以上の確率で勝てるようになってからでないと実行しても意味がありません。もし中国軍が局地戦とはいえ日米同盟軍に敗退するようなことがあれば中国人が重んじる面子は国際的に丸つぶれとなりますし、アジアでの中国に対する信用と影響力は大きく失墜します。やはり日米同盟の方が頼りになると思うようになります。

 また東南アジアの南シナ海沿岸諸国(シンガポール、インドネシア、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、マレーシア)がすでに中国によって多数の諸島や環礁を強奪されていますし、現在進行形で強奪されつつあります。中国軍が日米同盟に敗退すれば、南シナ海沿岸諸国を中心に、日米同盟に対する信用と期待が高まります。日本に対しても日露戦争に勝利したあとのアジアにわき上がった日本に対する信望と期待のような空気がよみがえってきます。

 さらに中国内陸部を中心に年々増加している事実上の反政府暴動(中国政府公表でも100人以上の暴動件数が月平均70件以上発生している)はさらに激化し倍増することになるでしょう。

 近年の中国は極端な格差社会になっており、約8,300万人いる共産党員が、エリート集団・貴族階級化しつつあり彼らの汚職・腐敗に対する怒りはいつ爆発してもおかしくないところまで来ています。

 その上、一人っ子政策の結果、親たちは子どもを戦死させることを非常に恐れています。人民解放軍の士気は下がる一方です。すでに共産党一党独裁体制の崩壊が始まっていると言っても過言ではありません。そこへ来て、強引に尖閣諸島沖海戦や魚釣島争奪作戦を決行して敗退すれば、それをきっかけに大規模な暴動が各地で発生し事実上の内乱状態に陥ってしまう可能性があります。

 ちなみに共産党一党独裁と言っても、経済的にはすでに朱鎔基前首相の三大革命の成功で都市国家連邦制が事実上成立しているので、国家権力の対象は人事(北京政府・共産党中央内部の人事で省の人事にはもはや及んでいないと言われている)・治安・軍事・金融・外交などの面だけになっています。

 しかし中国軍にとっての開戦のタイムリミットもあります。

 韓国が竹島問題や従軍慰安婦強制連行問題で反日感情が高まっているうちに、つまり韓国軍が日米同盟軍に加わらないうちに実行しなくてはなりません。本当は、韓国も、韓国自身のためにも日米韓の三国軍事同盟軍で尖閣諸島防衛にあたってもいいはずなんですね、というかやるべきなんですね。

 ここが韓国に理解されていない部分なのかもしれませんが、中国としては日・韓両国の経済が石油に依存しているうちに、つまりシーレーンが日・韓の生命線であるうちに尖閣諸島を占領してしまわないと費用対効果の面からいって尖閣諸島占領のタイミングを失ってしまいます。また日米同盟軍と開戦するという大きな賭に出る大儀名分もう失ってしまいます。

 とにかく中国軍が尖閣諸島沖海戦と魚釣島占領をしかけるとすれば2015年以降2022年前後以内になるだろうと予想しています。

 中国軍はいわゆる局地戦あるいはより限定的な局部戦であっても、世界中が注目している海戦で、一度でも尻尾を巻いて逃げ出すわけには行かないのです。日米同盟軍と質的・技術的に互角にわたりあえるようになってからでないと世界中の笑いものになってしまいます。中国は面子だけの国です。日米同盟軍と東シナ海で戦う場合は南シナ海の場合とは全く次元の異なる戦いとなりますので相当用心します。

 なお、2015年以降2022年前後以内になるだろう、との予想の理由についてはまた後半で述べたいと思います。

 ところで米国が尖閣諸島を日米安全保障条約の適用の範囲内として日本とともに本気で護る意思があるのか、という一部の識者からの問題提起があります。米国は日本を見捨てて中国と手を結ぶのではないか、という主張です。日本を見捨てるということは台湾、韓国も見捨てるということです。

 しかし米国は尖閣諸島が日本の領土だと認めているから(その証拠についてはCIAの情報本部DIが1971年に作成した「インテリジェンス・レポート/尖閣諸島の紛争」というタイトルの36ページの報告書に記載されている)ということもありますが、それ以上にアジア全域の利益、南シナ海や東シナ海の無害自由航行権・シーレーンなどの利益ですね、それと中国と米国との軍事バランス(rebalance)のために死守するでしょう。

 もし米国が軍事同盟国の日本の領土、尖閣諸島を守れなかったとすれば、米国の国際的信用は失墜し(ASEAN諸国と日本・韓国の米国離れは決定的となる)ドルの基軸通貨としての地位はアジアにおいては失われてしまうでしょう。

 また、日本国内においても、米国自身が認知する日本の領土(尖閣諸島)侵略に対して米国が協力してくれない、ということになれば、日米安全保障条約不要論、沖縄米軍基地不要論が勢いづいてきます。

 また、もし尖閣諸島が中国に占領されますと次は、台湾のみならず沖縄も危なくなってきます。台湾はまちがいなく中国の準自治国化し、間違いなく「沖縄列島も、もともとは中国のものだった」と主張し始めます。

 早晩、

 尖閣諸島は日本・韓国・台湾だけでなく中国・米国にとっても地政学的には重要地点なんですね。だからこそ中国もあきらめない。海底資源だけのために尖閣諸島領を強奪しようとしているわけではないんですね。近未来小説風に言えば、尖閣諸島を占領することによって、それだけで台湾も沖縄も属国化できてしまう。

 それだけではありません。台湾・沖縄が中国の属国化すれば、中国は戦わずして日本と韓国をも衛星国化することができてしまいます。日本も韓国もその生命線であるアラビア海からのシーレーンを中国に掌握されコントロールされてしまうからです。日本も韓国も今世紀中に中国の衛星国(北朝鮮や香港、中国領土の約60%を占める、チベット、ウィグル、内モンゴルのような自治区)に転落してしまうでしょう。

 ですから米国も真剣です。米国の名誉、国際的信用、ドル防衛、そして日本をはじめてするアジア諸国における莫大な利権を維持保全するためにも、尖閣諸島は米国の威信にかけて死守します。

 したがって日米安全保障条約が存続する限り中国も尖閣諸島を簡単に占領することはできません。

 しかし、しかしです、だからと言って日本は安心してはいられません。永世中立国のスイスを見習って、日本もその国防意識を高めてゆかねばなりませんが、米国のネオコン等の右派保守層や金融業界の動きには要注意です。ここが複雑なところです。米国国内には様々な勢力・業界が存在していて一枚岩ではありません。

 彼らは米国政府に圧力をかけ、尖閣諸島保護に対する日本から見返りを要求するべきだ、とすでに主張している可能性が高いと思います。特に、今回の大統領選挙でウォール街を中心とした金融業界をバックに善戦しているロムニー氏が大統領に当選すれば、米国金融業界が要求している日本のTPP参加やあるいは共和党の中枢を独占しているネオコン(軍需産業・石油業界・ユダヤ資本等と連携している)が要求する米国製最新兵器等の購入を、尖閣諸島保護の見返りに強引に要求してくる可能性が高くなると思います。

 尖閣諸島問題は単に対中国防衛問題にとどまりません。TPP等日本の諸問題と深く関連していますので、外務省(及び防衛省)の宣伝・情報戦能力は多角的にそして飛躍的に向上させなくてはいけません。

 そして中国情勢分析と同時に米国情勢分析も怠ってはなりません。

 米国の格差社会問題は、我々の想像を超えたものであり、半端ではありません。TPP参加によって、日本社会も米国並みの格差社会に引きずり込まれてしまう可能性があるのです。ですから中国か米国かの単純な二者択一の問題ではないのです。

 対中国に限って言えば、習近平・次期国家主席らの高級幹部派閥「太子党」や江沢民・前国家主席らの「上海閥」、胡錦涛・現主席らが率いる「共産主義青年団」、中国海軍、中国陸軍、中国空軍等の情勢分析や各省、各都市(経済の視点から見れば中国は、朱前首相がつくりあげた都市国家連邦とも言える)の経済情勢等を一カ所に集中し、それらを多角的統合的に分析する能力を身につけることです。そして中国の国家意思を的確に把握し理解しておくべきです。

  中国の本当のねらい、目的は、魚釣島占領という手段で@基軸通貨米国ドルの信用を失墜させること、A日本のTPP(事実上の日米FTA)参加を阻止し、日中韓FTAを成功させて、その上で日本の金融資産(個人の金融資産だけでも1,600兆円ある。ゆうちょ銀行も今のうちに料理しておきたいと思っているはずです)を中国が牛耳ること、B中国軍が南シナ海と東シナ海を掌握して日本をアジアから孤立化させ、沖縄の独立運動を支援して米軍のアジアにおける影響力を排除。そしてアジア・シーレーンを掌握してアジアの盟主として君臨することかもしれません。

 ちなみにアメリカの人気テレビドラマ「24」という番組がありました。リアルで面白かったですね。情報戦については「24」のかなりの部分で大いに参考になると思います。そしてその分析結果を的確にトップに、リアルタイムで報告し、関係行政機関に的確に指示させることだと思います。

  以下はあくまでも「宣伝・情報戦における情報分析と国際世論形成技術の重要性」という観点での記述になりますが、その反面教師が松岡洋右外務大臣です。「田中上奏文」論争及び中国との宣伝(国際世論形成)・情報戦で完敗しその結果、国際連盟を脱退せざるをえなくなり国際的に孤立してしまったこと(その経緯は服部龍二著「日中歴史認識『田中上奏文』をめぐる相克1927-2010」【東京大学出版会】で詳しく明らかにされている)や日独伊三国同盟をごり押しして、その結果、日米開戦という最悪の事態を招いてしまったことは良い教訓になると思います。

 それから田中義一首相(外相兼務)。1927年の来日中の蒋介石との会談で、日本の盟友とするべきだった蒋介石の北伐(中国再統一)に協力せず決裂させてしまいました。 結局この会談決裂が、中・長期的にみれば日中戦争を泥沼化させてしまった遠因となっています。田中義一首相の情報分析の甘さがありました。

 広田弘毅外相と近衛首相も同様です。蒋介石との和解と同盟の最後のチャンスをふいにしてしまいます。南京陥落直後の段階でドイツの仲裁を受け入れ、重慶の国民政府を承認して新しい日中同盟関係を築いておくべきだったと思います。

  ちなみに上記の「田中上奏文」論争に似た構造をもつ現在進行形の問題の一つは、日韓で問題になっている「従軍慰安婦強制連行問題」です。竹島問題とは違い、「客観的な証拠」のない国際紛争事案です。この問題についての国際論争は絶対さけるべきです。歴史問題における事実認識や価値判断についてもその研究ないし論争は学者・評論家等民間にまかせ、両国政府間での議論あるいは多角的国際論争はすべきではないと思います。韓国政府の徴発に乗れば「田中上奏文」問題の二の舞になってしまうでしょう。しかも、いまのところ宣伝(国際的世論操作も含める)・情報戦の能力は明らかに韓国・中国の方が一枚上手です。

 さらにもう一点。オスプレイ(V−22 )についてです。

 海上自衛隊でも海上保安庁でもいいのですが、中国海軍が尖閣諸島上陸・争奪戦で恐れるオスプレイ(=陸上自衛隊の特殊部隊や米海兵隊の移動に利用する)積載の軽空母の配備もそろそろ検討しておいたほうがいいと思います。軽空母なら専守防衛の範囲内でしかも海保が保有すれば問題ありません。また、もし予算上の問題があるならオスプレイ10機積載可能なワスプ級強襲揚陸艦「ワスプ」2隻でもいいと思います。これなら3.11のような大災害時にも被災者救助にオスプレイが大活躍できます。「ワスプ」もだめというならオスプレイイ5機積載可能なサン・アナトリオ級ドッグ型輸送揚陸艦3隻の保有でもいいです。とにかくオスプレイは日本のために生産されたような超高性能輸送ヘリコプターです。災害時や国境警備など可能な限り有効活用すべきです。

 中国は大型輸送ヘリコプターのフランス製「Z9」を尖閣諸島上陸及び奪回の精鋭部隊移動に使う計画のようですが、Z9は時速300qで一機あたり10名しか搭乗できません。福建省の基地から約370qの尖閣諸島まで約1時間10分かかりますが、オスプレイなら時速555qで移動でき、しかも一機あたり20名以上搭乗可能。沖縄本島から尖閣諸島までの約440qの距離を50分弱で到着できてしまいます。航続距離3,593qで空中給油を併用すればもっと伸びますし滞空時間も世界一です。

 尖閣諸島争奪戦では、「魚釣島奪回作戦で接近してくる海兵隊を乗せたオスプレイ撃墜を目的とした地対空ミサイルや強襲揚陸艦から上陸してくる戦車、装甲車を迎撃するロケットランチャー等を十分装備した約200名規模の精鋭部隊の先着」という「椅子取りゲーム」のようなところがポイント、というかそれが「天下分け目の天王山」となります。いったん先着されますと奪回が非常に困難になります。

 ちなみに軍艦やジェット機だけで尖閣諸島に押し寄せて来ても十分装備した200人規模の特殊部隊を魚釣島に上陸させ占領させることはできません。それを担当するのはオスプレイやZ9等の大型高速輸送ヘリコプターや強襲揚陸艦で軍艦やジェット機はその作戦をバックアップする戦力という役割分担になります。

 すでに外務省も防衛省ではやっているはずですが、南ベトナムが領有していた西沙諸島を中国が奪い取った海戦、西沙諸島海戦(1974年)とその後の西沙諸島における海底基地建設や要塞化、そして統一後のベトナムが領有していた南沙諸島の中国占領(南沙諸島海戦/1988年)やフィリピンのミスチーフ環礁占領事件(1995年に中国軍が占領し要塞化/1997年からは同じくフィリピン固有の領土であるスカーボロ環礁の領有権を中国が主張している)の事例研究、海戦経過や占領後の要塞化についても公開してほしいと思います。

 中国軍の動きについては米軍の無人偵察機(日本でもその開発に着手したようですが)や軍事衛星、日米両軍の偵察機、偵察艦船等のレーダーによってリアルタイムで探知できる体制が整っているので、尖閣諸島争奪戦で日本軍が(米軍のバックアップを得てですが)中国軍に負ける可能性は少ないと思います。

 中国軍の動きは米軍の無人偵察機(日本でもその開発に着手したようですが)や軍事衛星、日米両軍の偵察機、偵察艦船等のレーダーによってリアルタイムで探知できる体制が整っているので、尖閣諸島争奪戦で日本軍が(米軍のバックアップを得てですが)中国軍に負ける可能性は少ないと思います。

 問題は空母「遼寧」(数年間は訓練艦として使い実戦配備はしないようだ)や2015年に新たに就航する空母二隻です。この新たな空母にはジェット戦闘機を搭載して実戦配備するようですが、もちろんZ9の搭載もできるわけです。将来、もし新空母一隻にZ9を20機搭載して尖閣諸島の領海に近い海域に配置したら尖閣諸島争奪戦における日本優位は崩れてしまいます。

 2015年以降のことを考えると、オスプレイの基地反対運動もあり尖閣諸島の近くに基地を移動させることは難しいでしょう。

 そこで少なくともオスプレイ10機程度は搭載可能な軽空母2隻かワスプ級強襲揚陸艦「ワスプ」2隻、あるいはサン・アナトリオ級ドッグ型輸送揚陸艦3隻でもいいですが、日本独自の保有が必要となってくるわけです。基地の問題も解決しますし、災害時被災者救助対策にも活用できますので国民の支持は得られると思います。

 それでもダメというなら大型ヘリコプター搭載空母やワスプ等強襲揚陸艦をすでに保有・運用している米軍に頼るしかありません。

 前述のように、米国は尖閣諸島は必ず死守せざるを得ないわけですが、しかし、新大統領は、選挙戦でのスポンサーや支持基盤からの要求で、日本と一種の駆け引きをせざるを得なくなる可能性はあります。少なくとも「日本のTPP参加を条件に尖閣諸島保護する」と条件づけしてくる可能性があるわけです。もちろん、新大統領がロムニーかオバマかでその圧力の強さにも差が出てくるわけですが、ロムニー大統領の場合は、日本に対してTPP参加をかなり強行に要求してくると思います。米国金融業界から見れば、日本はあいかわらず「黄金の島」なんですね。

 以上のように、尖閣諸島問題は、実は日本のTPP参加問題と深く関連していて、仮にオバマが新大統領になったとしても日本のTPP参加問題はあいかわらず大きな問題で、大変難しい判断を迫られることになります。2013年度はこのTPP問題が文字通り国論を二分する大問題になり、場合によっては政界再編の対立軸の中の主軸にさえなる可能性があります。それほどまでに大問題です。

 余談ですが、2002年から朱鎔基前首相(1998年3月17日首相就任)の三大革命の一環として始まった日中韓FTAに日本が参加表明していれば、尖閣諸島の石原都知事の都有化宣言や野田内閣による国有化があったとしても、私は、今回のようなに時を同じくして尖閣諸島問題や韓国大統領の竹島上陸問題などは発生しなかったのではないかと思っています。

 現在のところ財務省に近い野田総理はまだTPP参加表明はしていませんが、外務省に近い岡田副総理は何故かなりあせっていますね。岡田副総理が内閣の中枢にいる現政権のままでは多くの議論や検討がなされないまま日本がTPPに参加決定してしまうおそれがあります。

 もちろん「TPP参加決定」ではなく「TPP参加の条件を交渉するテーブルに参加」することには何の問題もありません。

 いずれにしても、ここは本当に難しい判断が求められるところです。日本の未来をアメリカに託すのか、あるいはアジアに託すのか。

 日本はまさに岐路に立ったといえるでしょう。

 

★関連する国際公法 

 日中共同声明(1972) 

 日中平和友好条約(1978) 

 日中漁業協定(1975)

 日中新漁業協定第6条第2項(2000)

 日中関係資料(東大) http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/indices/JPCH/index.html

 国連憲章(第2条第4項) http://unic.or.jp/information/UN_charter_japanese/

 

  2011/7月21日(木) 「プロフィール&私の昭和史」のコーナーに今日、書き加えたお勧めのテレビ・ドラマです。それはKBS第1テレビ 朝鮮戦争60周年特別企画ドラマ「戦友」です。

 1950(昭和25)年に朝鮮戦争が勃発して1953(昭和28)年に終結するまでに、半島では米軍(戦死者5万4千人)、中国軍の戦死者を含めると400万人以上の尊い命が失われました。

 朝鮮戦争のその壮絶な戦いの内容はKBS第1テレビ ・朝鮮戦争60周年特別企画ドラマ「戦友」(2010年度作品/全20話/「テ・ジョヨン」のチェ・スジョン主演)で知ることが出来ます。

 ノルマンディー上陸作戦の凄惨な戦いから始まるアメリカ映画「プライベート・ライアン」の映像もすごかったですが、「戦友」はそれ以上の迫力でした。そして、物語の内容や主題もすばらしく、私が過去にみたテレビ・ドラマや映画の中では最高傑作と言っても過言ではありません。韓国の歴史テレビ・ドラマの中でも特筆すべき作品として「テ・ジョヨン」や「海神」「朱蒙」「風の国」を挙げることが出来ますが、それらの作品を超える名作でした。また日本のNHK大河ドラマやアメリカの「24」などの人気テレビ・ドラマシリーズをも超える内容でした。韓国人の心の原点の一つが、このドラマで明らかになります。ラストでは心から泣けました。韓国と韓国人に対する我々日本人の意識が完璧に変わります。韓国人と一蓮托生の運命にある日本人必見のドラマです。

http://www.kbs.co.kr/drama/625/intro.html

 私はこの作品を観て、いま「朝鮮戦争とは何だったのか」「戦友とは何か」「家族とは何か」「命を捧げることのできる祖国とは何か」「生きる、あるいは生き残るとはどういうことなのか」を深く考え始めています。平和ぼけの私が、若い時にこのドラマを観ていたら、きっと違った人生を歩んでいたに違いありません。そんな作品でした。


 一方、朝鮮戦争における米軍の後方支援を担当した日本は、結果的に大きな経済的恩恵を受けることになりました。いわゆる朝鮮特需(主に繊維と鉄関係)といわれるものです。この特需景気は、その後、1955(昭和30)年に始まった有史以来の好景気といわれる「神武景気」や1958(昭和33)年から始まる「岩戸景気」へと続く高度経済成長の跳躍台となりました。

 

 2004

「行財政改革の推進について」〔墨田区行財政改革推進委員としての意見書〕(2004.10.12)

郵政3事業の民営化問題について(2004.9.17)

最近の日中問題を考える(2004.8.27)

内閣と議会について(2004.6.27)

極東にのこる限定的冷戦構造(2004.6.12)

公的年金制度改革について(2)(2004.6.11)

著作権法改正について(2004.6.3)

公的年金制度改革について(1)(2004.5.15)

憲法裁判所について(2004.5.13)

スペイン軍のイラク撤退について(2004.4.21)

憲法9条に関する合憲性審査について(2004.3.31)

自衛隊のイラク派遣の合憲性の判断について(2004.3.31)

正義(大義)のための戦争について(2004.3.29)

21世紀における日本の安全保障問題(2004.3.11)

自衛隊のイラク派遣問題について(3)(2004.3.1)

アングロサクソンについて(2)(2004.2.29)

アングロサクソンについて(1)(2004.2.24)

公務員の人件費について考える(2004.2.15)

自衛隊イラク派遣しか選択の道はなかったのか(2004.2.8)

国会承認後のイラク問題(2004.2.3)

集団的自衛権論議における新しい問題点(2004.1.28)

農業と雇用について(2004.1.23)

首相答弁についての疑問点(2004.1.22)

首相の施政方針演説についての疑問点(2004.1.21)

現段階での自衛隊派遣に関する争点は……(2004.1.19)

オニール前財務長官発言であらためて考えたこと(2004.1.17)

自衛隊派遣の前にやるべきこと(2004.1.17)

北朝鮮のミサイル配備について(2004.1.17)

反小泉」という言葉の意味について(2004.1.15)

刑事裁判における裁判員制度導入について(2004.1.13)

市町村合併について(2004.1.11)

信州への県名変更について(2)(2004.1.10)

靖国神社への内閣総理大臣公式参拝問題(3)(2004.1.10)

2004通常国会に期待すること(2004.1.9)

信州への県名変更について(1)(2004.1.7)

靖国神社への内閣総理大臣公式参拝問題(2)(2004.1.7)

若手研究者・技術者の育成について(2004.1.4)

靖国神社への内閣総理大臣公式参拝問題(1) (2004.1.3)

拉致事件について(2004.1.2)

 

 2003

 

教育基本法改正に関する中教審答申について(2003.12.31)

国民投票制度について(2003.12.30)

教育について3(2003.12.27)

イラク復興支援のための東京会議開催を(2003.12.23)

日本人の思考停止状態ということについて(2003.12.22)

ベーカー元国務長官登場の意味(2)(2003.12.21)

イラクへの自衛隊派遣問題では判断基準・条件こそが問題(2003.12.20)

ベーカー元国務長官登場の意味(1)(2003.12.20)

NPO法人について(2003.12.17)

越智道雄論文を読んで(2003.12.16)

自衛隊のイラク派遣問題について(2)(2003.12.11)

国連安保理決議1511について(2003.12.7)

自衛隊のイラク派遣問題について(1)(2003.12.6)

中国に対するODA問題について(2003.12.5)

ソニーの経営不振について(2003.12.4)

日本は何故アメリカに追従するのか?(2003.12.3)

国連安保理決議1441について(2003.12.3)

文明と文化について(2003.12.2)

全国高専「ロボットコンテスト2003」(2003.11.23)

テクノロードやまがた2003(2003.11.22)

歴史問題について(2003.11.15)

科学技術の評価について(2003.11.15)

知財戦略について(2003.11.13)

民営化の本来の意味について(2003.9.20)

公務員の概念と範囲について(2003.9.20)

二大政党政治のための与野党の対立軸(2003.9.12)

議員定数問題(2003.9.8)

持続性のある景気回復を目指して(2003.5.11)

憲法第9条改正私案(2003.4.29)

国連改革について(2003.4.14)

日米安全保障条約について(2003.4.11)

教育について2(2003.4.10)

教育について (2003.3.30)

憲法第9条解釈の整理と私見(2003.3.28)

アジア通貨基金設立に向けて……(2003.3.4)

住基ネット問題について(2003.2.11)

道州制(州府制)の導入問題について(2003.2.11)

為替政策について(2003.1.27)

道路関連四公団の民営化問題について(2003.1.24)

不良債権処理加速策について(2003.1.23)

構造改革について(2003.1.22)

金融緩和政策について(2003.1.20)

 

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