行政書士業務根拠先例・法例等紹介

 

【(21)〜(30)】

 

(21) 公証人役場での委嘱手続代理について

「司法書士は、公証人役場に提出する委任状の作成をすることはできない。行政代書人においては作成することは差し支えない」(昭和14年3月法曹会決議)



★法曹会決議とは

 「法曹会」の組織は、明治24年7月9日に裁判所・検察庁の裁判官や検察官等を会員に設立されました(そのOB弁護士も特別会員として一部参加しています)。明治41年11月には財団法人となって現在に至っています。
 ところで法曹会決議についてですが、法曹会会員の裁判官や検察官、OB弁護士等の問題提起や質問・検討事項について、法曹会調査委員会が調査検討し決議したものを法曹会決議と呼んでいます。それら決議は、「法曹会決議要録」(上・下・追録の3冊)に記載され公になり、先例として、変更先例がない限り、現在でも有効なものとして取り扱われています。

(22) 会社設立手続

「会社設立に必要な書類の内、登記所に提出するためのもの(例えば、会社設立登記申請書、登記申請委任状)の作成は、司法書士の業務の範囲に含まれるが、しからざるもの(例えば、定款、株式申込証)の作成は含まれない」(昭和29年1月13日法務省法務次官回答)

 

(23) 司法書士の業務範囲(昭和39年9月15日法務省民事局長回答)

「司法書士は、法の示すとおり他人の嘱託を受けて、その者が裁判所、検察庁、法務局及び地方法務局に提出する書類を代わって作成することを業とする者であって、これらの官庁に提出する訴状、告訴状、登記申請書等の作成は勿論これらに添付すを必要とする書類(例えば売買契約書、各種契約書、証拠写の作成、住所、氏名、租税、公課の証明願、戸籍謄本交付請求書等)の作成は司法書士の業務範囲に属する」

(24) 電磁的記録も書類とみなすとした最高裁判決


判例 平成14年01月22日 第三小法廷判決 平成12年(あ)第1606号 破産法違反被告事件
要旨:
 破産法374条3号にいう「商業帳簿」には,可視性,可読性が確保されている電磁的記録も含まれる

内容:
 件名 破産法違反被告事件 (最高裁判所 平成12年(あ)第1606号 平成14年01月22日 第三小法廷判決 破棄自判)
 原審 東京高等裁判所 (平成9年(う)第1432号)
主    文
       原判決を破棄する。
       本件控訴を棄却する。
         
理    由

 検察官の事件受理申立て理由について
 原判決には,破産法374条3号の解釈適用を誤った違法があり,刑訴法411条1号により破棄を免れない。その理由は,以下のとおりである。
 1 原判決が是認した第1審判決の認定によると,被告人は,有限会社Bの債権者であり,Bの代表取締役AからBの債務整理について相談を受けていたところ,破産宣告が確定したBの破産宣告がされる前,被告人及びAの利益を図り,Bの一般債権者を害する目的をもって,Aと共謀の上,C税務会計事務所において,情を知らない同事務所の従業員をして,同事務所内に設置されているパーソナルコンピュータで処理するフロッピーディスクに記録されたBの総勘定元帳ファイル(以下「本件総勘定元帳ファイル」という。)に,Bが架空の債務を負担し,実際の金額より減額した賃料債権を有する旨虚偽の情報を入力させ,本件総勘定元帳ファイルに不正の記載をするとともに,内容虚偽の協定書,賃貸借契約書,清算貸借対照表を作成し,その清算貸借対照表を破産申立書と共に千葉地方裁判所に提出して,Bの破産財団に属すべき金銭債権,固定資産を隠匿したというのである。
 第1審判決は,破産法374条1号の罪の成立を認めたほか,同条3号の罪についても,同号にいう「商業帳簿」には電磁的記録である本件総勘定元帳ファイルが含まれると解して,その成立を認め,これらが包括一罪の関係にあるとして,被告人を懲役3年に処し,5年間その刑の執行を猶予した。
 これに対して,被告人から控訴があり,原判決は,上記事実のうち,Bの破産財団に属すべき金銭債権,固定資産を隠匿した点については,破産法374条1号の罪の成立を認めたが,本件総勘定元帳ファイルに虚偽の情報を入力した点については,昭和62年法律第52号による刑法の一部改正の趣旨に徴して,電磁的記録は刑法の適用上文書の概念に包摂されないものであり,そのことは特別刑法の解釈適用でも尊重されるべきであるから,電磁的記録を帳簿と認めることはできず,本件総勘定元帳ファイルは同条3号にいう「商業帳簿」に当たらないと解して,犯罪の成立を否定し,第1審判決を破棄して,被告人を懲役2年6月に処し,4年間その刑の執行を猶予した。
 2 しかしながら,破産法374条3号は,同号が定める「商業帳簿」に不正の記載をするなどの行為が行われることによって債務者の財産状態を把握することが著しく困難になり債権者の利益が侵害される危険が大きくなることから設けられたものであり,「商業帳簿」が刑法上の文書の概念に含まれることを前提として設けられたものではないと解される。したがって,刑法上の文書の概念と電磁的記録の関係を明確にした昭和62年法律第52号による刑法の一部改正は,破産法374条3号にいう「商業帳簿」に電磁的記録が含まれるかどうかの解釈と関連するものではない。
 さらに,破産法374条3号にいう「商業帳簿」は,商法32条1項にいう「会計帳簿及び貸借対照表」をいうと解されるところ,電磁的記録であっても,直ちにプリントアウトできることなどによって,可視性,可読性が確保されている限り,これらの規定にいう「商業帳簿」ないし「会計帳簿及び貸借対照表」として欠けるところはなく,破産法374条3号が定める行為が行われた場合,債務者の財産状態を把握することが著しく困難になることにおいて,帳簿の外形を備えた「商業帳簿」と差異はないというべきである。
 そうすると,破産法374条3号にいう「商業帳簿」には,可視性,可読性が確保されている電磁的記録が含まれると解するのが相当であり,本件総勘定元帳ファイルは,そのような電磁的記録であるから,同号にいう「商業帳簿」に当たると解される。
 3 したがって,原判決には破産法374条3号の解釈適用を誤った違法があり,この違法が判決に影響することは明らかであって,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
 よって,刑訴法411条1号により原判決を破棄し,上記1の事実を認定して被告人を破産法374条1号,3号の各罪で有罪とした第1審判決は,本件総勘定元
帳ファイルへの賃料債権の過少入力が同時に同条1号の罪の一部を構成するとした点を含め,維持すべきものであって,被告人の控訴は理由がないから,刑訴法413条ただし書,414条,396条により,これを棄却することとし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 検察官松永榮治 公判出席
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 千種秀夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田昌道)

 

(25) 行政書士が業として登記申請手続を代理した場合における司法書士法19条1項違反の罪の成否

 

最高裁判所平成9年(あ)第613号 司法書士法違反被告事件
平成12年2月8日第三小法廷判決、棄却
原審 仙台高等裁判所

主        文

 本件上告を棄却する。

理        由

 一 弁護人(略)の上告趣意第一の前段について
 所論は、司法書士法19条1項、25条1項は、憲法22条1項に違反すると主張する。しかし、司法書士法の右各規定は、登記制度が国民の権利義務等社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどにかんがみ、法律に別段の定めがある場合を除き、司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が、他人の嘱託を受けて、登記に関する手続について代理する業務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止し、これに違反した者を処罰することにしたものであって、右規制が公共の福祉に合致した合理的なもので憲法22条一項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和33年(あ)第411号同34年7月8日大法廷判決・刑集13巻7号1132頁、最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁)の趣旨に徴し明らかである。所論は理由がない。

 二 弁護人(略)の上告趣意のうち、その余の点は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、適法な上告理由に当たらない。

 なお、行政書士が代理人として登記申請手続をすることは、行政書士の正当な業務に付随する行為に当たらないから、行政書士である被告人が業として登記申請手続について代理した本件各行為が司法書士法19条1項に違反するとした原判断は、正当である。

 三 弁護人(略)の上告趣意は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由に当たらない。

 四 被告人本人の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でない。その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、適法な上告理由に当たらない。

 よって、刑訴法408条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥田昌道,裁判官 千種秀夫,元原利文,金谷利廣)


 
(26) 行政書士法2条6号の「行政事務を担当」の解釈に関する先例

 
「行政事務」の解釈に関する自治省行政課長通知(昭和26年9月13日)

 行
政事務とは、単に行政機関の権限に属する事務のみならず、立法ないし司法機関の
権限に属する事務に関するものも含まれるものと広く解することができる。
 したがって、この場合国会議員、裁判所の事務職員等の行う事務は含まれると解すべ
きである。
 また、単なる労務、純粋の技術、単なる事務の補助等に関する事務は含まれないもの
と解する。
 行政事務を担当する者であるかどうかの判別は、次ぎの基準によることが適当であ
る。
 

 1.文書の立案作成、審査等に関連する事務であること(文書の立案作成とは、必ずし
も自ら作成することを要せず、広く事務執行上の企画等を含む)。
 

 2.ある程度、その者の責任において事務を処理していること。

(以下省略)

27) 補助者について

 (昭和45年6月16日 45総行指発第487号東京都知事注意)

一 (省略)

 補助者とは、行政書士の監督のもとで、行政書士の命令をうけて単純な事務に従事する者をいう。その要件は次のとおりである。

1 行政書士が特に必要と認めること。

2 行政書士の事務を補助する者であること。

3 行政書士がその補助者の氏名を行政書士会に届け出ること。

4 補助者は、行政書士の命をうけ、浄書、計算等の単純な事務に従事する者であること。

 したがって、補助者は、行政書士の命をうけて行政書士の専用となって、単純な事務に従事することが原則であり、それを逸脱する行為は許されないものであること。

三 補助者がもっぱら行政書士の業務を処理する行為は、行政書士法第19条に該当し、同法第21条の罰則の適用があること。

四 行政書士が補助者にもっぱらその業務を行わせ、なんら監督しない行為は、行政書士法施行規則第4条に該当し、当該行為に対しては、知事は、行政書士法第14条に規定する処分をすることができる。

 

補助者の業務領域について(昭和53年9月14日日行連会長回答)

 補助者は行政書士の業務を補助する者であるから、行政書士に命ぜられた業務を遂行するのみならず諸官公署に出向いて書類の提出代行などなしうる。

 その場合の書類の訂正は明らかな誤記の訂正は出来ると解するが、内容の実質的な変更については許されないと解する。

 補助者の定義については「行政書士の監のもとで行政書士の命令をうけて単純な事務に従事する者をいう」(昭和45年6月16日東京都知事注意)と解する。ただし補助者の濫用などにより弊害が生ずればその行政書士の責任と考えられる。

 

(28)内容証明郵便について

(昭和11年11月法曹会決議)

「司法書士は、債権者が内容証明郵便をもって、その債権の弁済督促のために発する催告書を業として作成することを得ない」

★ただし、平成15年4月1日施行の改正司法書士法により、司法書士が新たにできるようになった簡易裁判所での手続に付随して上記の業務もできるようになったと解することができるので、この法曹会決議は実質変更されたものとみることもできる(清宮私見)。

 

(29)戸籍法の届出について

(昭和13年4月法曹会決議)

「司法書士は、戸籍法第36条のいわゆる届書その他の書類を作成することを得ないものとする」