「あの・・・病院は静かにしなきゃ・・・・・ね・・・」

弱々しいシンジの声。

あの逆転サヨナラ満塁ホームランのツケは、約1ヶ月再入院という形でシンジにまわってきていた。

つまり、夏休みがほとんどパーということになる。

今度は完治するまで絶対に退院させてもらえそうにない。

治ったばかりのとんぼ帰りということで、医者も看護婦もあきれていた。

婦長さん直々に入院中の外出も絶対に許可しないといいわたされもした。

そして夏休みということで、前回は学校があったために一日中シンジの看病をしていることの

できなかったガールズは、今回朝から夕方までずっと病室に入り浸ろうとしていた。

「だから、アンタ達はおねえさんに会いにアメリカにでもいったら?」

「今は、ダメ。」

「アスカこそお忙しいでしょうに。いいのよ、シンちゃんの世話は”私が”するから。」

幸いにも、二人部屋だがもうひとつのベッドは空いているため、この争いが直接誰かに

迷惑をかけるということは、現状なさそうであった。

それでもここは病院だ。

シンジはもう一度言ってみることにした。

「病院は静かにしなくちゃダメだよ・・・」

やはり弱々しい声。

3人の迫力に完全に負けていた。








ねるふ商店街のみなさん      第12話    ごちゅうもんは? 前編








「困ったわね。」

「あぁ・・・」

困った表情のユイと、表情のわからないゲンドウ。

店じまいをしながら夫婦は会話をしていた。

「シンジがいなくて乗り切れるかしら?」

「・・・・・」

二人は明日に控えた”半期に1度ねるふ感謝祭”の心配をしているのだ。

毎年この日は大勢の人が詰め掛けてくる。

一部を除く店が利益を無視したセールをうつというねるふ商店街が年間で最もにぎわう日のひとつだ。(書店などはできない)

この食堂でも当日限定メニューを出すので、毎回お客はあふれるほどやってくる。

そんな忙しいなか、店のすべてをやれるシンジがいないのは大きな痛手だ。

平日の営業でもピークになると少しつらい。

「なんとかするしかあるまい。」

と、ゲンドウが言った時勢いよくドアが開いた。

「おじさま、おばさま。あたしにまかせてください!」

ドアを開けて立っているアスカがいた。

「ちょっとアスカ、目立ちすぎ。」

後ろにはレナ・レイもいた。

シンジの病室からの帰りのようだ。

「アタシが手伝いますから安心してください。どのみち家の手伝いはできませんから。」

中学生がパチンコ屋の手伝いをするわけにもいかない。

開店前・閉店後の清掃の手伝いくらいしかできないだろう。

「そうね・・・おねがいしようかしら?」

「ああ、問題ない。」

「精一杯がんばります!」

ぺこりと頭を下げるアスカ。

「私も私も手伝う〜」

「私も・・・」

レナは手をバタバタさせながら、レイは小さく手を挙げてアピールする。

「二人ともありがとうね。」

笑顔のユイ。

「いいえ、今から将来のために練習すると思えば私からおねがいしたいくらいですよ。」

「将来・・・碇君が料理を作る・・・私が運ぶ・・・でも碇君のご飯は私が作ってあげる・・・」

ぽーっとした表情のレイ


「アンタ達にできるのかしら?」

中学生にしては発育がいい胸をはってアスカが言う。

「そういうアスカだって、料理とかできるの?」

レナの指摘は最もだ。

「ハンッ、お客様に出せるようなものはできないわ。でもアタシにはこの美貌があるから大丈夫なのよ!」

「去年も手伝ってもらいましたからね。私も料理に集中できて大助かりでしたわ。」

「ああ、そうだったな。」

一息ついた夫妻はお茶を煎れていた。

「確かにアスカは外面だけはいいからね〜。その点内面からかわいいレナちゃんはウエイトレスにぴったり♪」

「ウエイトレス・・・・接客係り・・・・エプロン・・・・裸?」

意味不明なレイの言動に、ゲンドウはお茶を噴出した。

きっとレイの裸エプロン姿でも想像してしまったのだろう。

ドスッ!!

誰にも見えないスピードでユイの地獄突きがゲンドウにヒットした。

ジャイアント○場でも1本とられそうなキレの一撃。

テーブルに倒れかかるゲンドウ。

「あらあら、お茶が気管に入ったみたいね。」

笑顔でゲンドウの背中をさするユイ。

「それじゃ、明日は3人におねがいしましょうか。」

言葉を発することのできないゲンドウは右手を少し上げて賛意を表明した。

「まかせてください!」

「碇家の未来の嫁としてがんばります♪」

「がんばる・・・・」

やる気十分の3人。

「明日はいつもどうりに11時にお店をあけるからおねがいね。」

「はいわかりましたおばさま、10時30分ごろに来ますね。」

「ええ、それ位でいいわ。おねがいねアスカちゃん。」

「じゃあ私帰りますから、また明日よろしくおねがいします。」

ぺこりと頭を下げるアスカ。

頭をあげると、

「アンタ達アタシの足を引っ張らないようにね。」

ライバル2人を口撃しておいた。

が・・・・・

「明日は私のシンちゃんの奥さんへ向けての修行・・・その第1歩・・・・がんばって手伝えるようになって・・」

「ありがとう綾波・・・・・・ううん、いい・・・・・綾波っておかあさんみたいだね・・・・・なにをいうのよ・・・」

姉妹そろって旅に出ていた。

今度は帰京も遅くなりそうな旅路のようだ。

「・・・・はぁ・・・・ほんっとにいい性格してるわね。」

同じ位いい性格しているアスカは自覚0かもしれない。

明日のために早く寝ようとさっさとこの場を後にすることにした。









後編へつづく・・・・




あとがき

おひさしぶりです。
更新とまってました・・・・・
今回、今までで一番短い文となってしまいました。
続きも来月中にはなんとかしたいです。