「そんな!聞いてないよぉ!」

シンジの声が開店前の食堂に響き渡る。

「当然だ。今言ったからな。」

お約束のポーズでゲンドウが答える。

だが、頬にはられた”けろけろけろみ”のバンソーコーがその威厳を損なっている。

しかし、ゲンドウの発言はシンジをオロオロさせるのに十分だった。

すべては昨日の1本の電話に起因する・・・。





ねるふ商店街のみなさん   第3話 しんじとぶ





「この人がりょーさんですか。」

シンジは手に取った写真をまじまじと見ていた。

男くさい笑いを浮かべた彼は、シンジの知る誰かを思い出しそうだった。

「素敵な方ですね。男らしくって優しそうで。」

「確かに素敵だけどね〜。でも私の好みは違うタイプよ♪」

レナはシンジにウインクする。

「えっ!?あの、その・・・」

しどろもどろになるシンジ隣のレイまで彼を見つめて赤くなっている。

だが、レナのウインクと視線で手一杯のシンジはそこまで気がつかない。

「あらあら、二人とも。」

「シンジ、しっかりしなさい。」

お仕置きを終えてこちらにきたユイと

ダンボールを開け他のアルバムを取り出しているレンは3人を見てクスクスと笑っていた。

だが、そんなはにゃんとした一時を打ち崩すように携帯電話が鳴った。

「はい、レンです。・・・・・・・・りょーちゃん?りょーちゃんなの!

ちょうどりょーちゃんの話をしてたとこなのよ・・・・・・・・

うん、うん、うん・・・・・・・ええっ!!?どうして?うん。うん。うん。」

始めは嬉しそうに話していたレンだが、急に表情が変わった。

とまどいの色がうかんでいる。

レイもレナも何事かと姉の方をじっと見ている。

「・・・・・わかった。話し合ってみる。うん・・・ううん、いいのよ。じゃあまたあとで。」

ピッという音とともにレンは、愛する妹たちに目を向けた。

どうしたの?なにかあったの?と目で訴えられていた。

「リョウイチから電話・・・内容は明日話すわ。気持ちの整理をしたいの」

レンの深刻そうな顔に妹達はなにもきいちゃいけないと悟った。







シンジ・ユイも帰宅し、妹も寝静まった。

草木も眠る丑三つ時。

しかし、レンは眠れなかった。

さきほどのリョウイチからの電話の内容が頭の中でグルグルまわっている。

もともとレンはリョウイチと同じ会社の研究室にいた。

そこで優秀な研究者として活躍していたわけだが、

両親が事故死したため退職した。

その際、強いひきとめがあったのはいうまでもないが、

研究者として生活していくと、当然家に帰れなくなる日が多くなる。

当時小学生だった妹2人をほおっておくことはできなかったため、会社を辞めたのである。

その後、両親が経営していた本屋で生活をいていたが、

土地の問題が発生し、ここねるふ商店街にこしてきたのだ。

しかし、今日の電話が彼女の心を揺さぶった。

以前彼女が提唱していたプロジェクトが実行されることとなったのだ。

これを進めていたのはリョウイチであるが、プロジェクトを進めるうえで

レンの力が必要と彼は判断したのだ。

いや、彼は彼女にも参加させてあげたかったのだ。

幸い二人の妹はもう中学2年生。

アメリカに一緒に連れてくればいいと彼は言う。

当然ながら、レンはこの研究をしたかった。

研究室にいたときからその理論をまとめあげることに全力をついやしていたのである。

しかし、妹達を無理やりアメリカに連れていくということをしたくはなかった。

だが、頼るべき親戚もいない状態では、どちらかが妥協するしかない。

もし、一緒に連れていっても、研究に追われまったく妹達の面倒をみることはできない。

これが日本ならばまだいいのだが、勝手知らぬ異国の地。

どうしても、不安が先行する。

考えが煮詰まったレンは外に散歩にでた。

商店街を抜け、公園を目指す。

場所は昼間ユイに教えてもらって、だいたいわかっていた。

さすがにこの時間ともなると、誰ともあうこともなく公園へついた。

ひとひとりいない深夜の公園。

ふと見ると、街灯に照らし出されているブランコが目に入った。

なんとなくそれにこしかけてみる。

子供の頃よく両親におしてもらったなと思いながら、地面をけった。

「お父さん・・・お母さん・・・」

キィキィキィ・・・・・・・鎖がすれる音が夜の公園にこだまする。

が、しばらくしてその空間が打ち破られた。

「こんばんわ。」

公園の入り口に碇ユイが立っていた。











「というわけで、レイちゃんとレナちゃんを預かることになったの。」

「そうだ。わかったならシンジ、上の部屋に2人を案内しろ。」

「今、何か説明したの?」

「シンちゃん・・・母さん悲しいわ。家族の間に言葉なんていらないと
 
 おもってたのに・・・・・・・・うっうっ・・・」

当然のことながら嘘なきのユイ。

「シンジ、お前には失望した。」

すでに2人を預かることは決定事項となっているらしいことに、

これ以上シンジは口を出すという無駄な努力をする気もなかった。

なんとなく未来に大きな不安(恐怖)を抱きつつ、2人を2階に案内することにした。

「こことここが空き部屋になってるから使ってよ。」

2階には4つ部屋があり、現在シンジが1部屋使っているだけだった。

当然、空き部屋にはほこりがたまっていたわけだが、学校から帰るまでに、

ユイとゲンドウが掃除をしておくらしい。

なんにせよ3人は部屋の確認をし、学校へ急ぐわけだが・・・

「おはようございま〜す」

あまりにもなじみのある声にシンジは固まった。

さわやかなはずの朝の挨拶が死刑宣告のように重く聞こえる。

2人と一緒に住むなんてことがアスカに知られたら・・・

そう考えると、階段から足が一歩も動かなくなった。

いっちゃダメだ、いっちゃダメだ、いっちゃダメだ!

口ずさむが・・・すでに2人は下に到達していた。

「なんであんた達がここにいるのよ!」

桃太郎も鬼ケ島に行くのをやめたくなるような声が響き渡る。

シンジは逃亡を選んだ。

だが、逃げ道はない。

いや、1つだけある。

シンジは2階の窓から外を見た。

あれだ!

シンジは某香港映画を思い出し、それを実践した。

窓からジャンプする。

計算では、アーケードの布によって、スピードが軽減されるハズ!

・・・という彼の目論見は、一瞬でくずれた。

布がぼろすぎたのである。さらに薄かった。

地上に到達する瞬間、ジャッ〇ー・チェンは偉大だとシンジは思ったのだった・・・







<つづくかな?>


ど〜も〜。せーりゅーです。
ついに2000Hitいきました。
うれしいかぎりです。
まだ続きは書く予定なのでまた読んでくださいね♪
シナリオどーり、1人減りました。
これからあのキャラも登場するのに、
人が多すぎると困ったりするんですよね・・・
まぁ、レンさんはまた出てきますが。



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