「あれ? シンジは?」

突然のことに驚いたアスカは、一人学校まで歩いてきていた。

現在、校門前。

「なんなのよ、あのチカンは! 私に抱きついていいのは・・・・シンジだけなんだから。」

などど独り言を言っているうちに到着となったのだった。

「どーせ、今から行っても後から行っても遅刻なんだから、ここでバカシンジでも、

待っていてあげましょうか。」

と、校門を背もたれに待つこと2分。

アスカのガマンはすでに限界を超えそうになっていた。

あまりにも早い限界である。

ウル●ラマンもまだ必殺技をださない。

「暑い!!」

初夏の日差しがアスカを照らす。

「とにかく暑いのも、ヘンタイに抱きつかれたのも、ぜ〜んぶシンジが悪いのよ!」

地面を蹴っ飛ばすアスカ。

「これはなにかペナルティーが必要ね・・・・・・・」

にやりとして、アスカは考え込んだ。

なにかいいことは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あった。

「これよ。これしかないわ!!」

拳を握りしめるアスカ。

流れる汗もすでに気にならない。

「シンジ・・・早くいらっしゃい・・・・」

アスカはシンジが自分の元へ来るのを一日千秋の思いで待つこととなった・・・

そのころ、当のシンジ君は交差点で倒れていたカヲルを助けていた。

公園に思いをはせていたシンジがふとアスカのことを思い出し前を見ると、

視界にはアスカの姿はなく、かわりに交差点のところに人が倒れていた。

慌てて駆け寄るシンジ。

「大丈夫ですか?」

痛めている脚のために姿勢を低くできないシンジは、とりあえず声をかけた。

「その声はもしや・・・・・・」

倒れていた人物が目線を必死に上げた。

その視界に入ったのは、彼が求めていたもの。

「君は、碇シンジ君だね?」

「えっ!?どうして僕のことを・・・」

「ふふふ・・・君は君が思っているよりも有名なのさ。認識を改めたほうがいいよ。」

「そうなの?」

「そうさ・・・・・」

アスカからのダメージも瞬時に回復したカヲル。

美形とギャグキャラが持ちえる特技である。

「ところで、何でこんなところで倒れてたの? 具合が悪いの?」

「ちょっと、人にぶつかってね。たいしたことはないさ。」

アスカの世界さえも狙えそうなパンチがたいしたことないはずはない。

「よかった。」

繰り出されるシンジスマイル。

カヲルの心に150000のダメージとなった。

『これが本物なんだね・・・・・・・ますます好意に値するよ・・・・』

このままシンジと遠い旅路に出たい衝動に駆られるカヲルであったが、

まだ彼の理性は働いていたようだ。

「碇シンジ君。キミは登校の途中じゃなかったのかい?」

「あっ、そうだ。遅刻しちゃうよ!」

「もう遅刻だよ。」

自分の腕時計を示すカヲル。

「あはは、そうだった・・・・・・ってアスカは!?」

自分のご主人様が見当たらない忠犬シンジはあせった。

アスカを見失う=後でおしおき

そんな等式が頭の中に浮かんでいた。

「急いで追いつかなきゃ。」

「そうだね、急いだほうがいいね。僕達はきっとまた出会えるから・・・・」

「えっ?」

「とりあえず、またねってことさ。」

「うん、また。」

お互いに逆の方向に歩きだした。

その道が交差する日はそう遠くないであろうことは、シンジの知る由でなかった。






ねるふ商店街のみなさん  第7話  じしんはゆれる





「お・そ・い!」

ようやく校門に到着したシンジをアスカは怒りの表情で待ち構えていた。

「シンジは遅いし、変態に抱きつかれるし・・・・今日は朝から最低だわ!」

「ごめん・・・」

「反射的にあやまんないの!」

「・・・ごめん・・・・」

「ほらまたぁ。」

「じゃあ、どうすればいいんだよ・・・」

シンジの呟きをアスカは聞き逃さない。

待ってましたという表情を出さないで、

「そうね・・・・私、あの変態に抱きつかれて気持ち悪いのよね・・・・」

だが、アスカのその雰囲気が幼いころから一緒に過ごしていたシンジに警報を打ち鳴らしていた。

「それもこれもシンジの所為なのよね・・・」

「・・・そうなの?」

「そうなの!」

「ハイ・・・そうです・・・・」

「そんなシンジには・・・・・私の憂さ晴らしになってもらうわ。」

「ええっ!!」

「そうね・・・・とりあえず・・・・」

とその刹那、揺れがあたりを襲った。

比較的大きな揺れであった。

わずか数秒のできごとであった。

が、それがもたらしたものは大きかった。

「アスカ、もう大丈夫だよ。」

自分に抱きついているアスカにやさしく声をかけるシンジ。

地震に弱いアスカがこうなることは長年の付き合いでわかっていた。

アスカの唯一の弱点である。

「おさまったみたいね。」

「うん、もう大丈夫だよ。」

しかしアスカはなかなかはなれない。

「アスカ?」

「ちょっと、足がすくんでるのよ。もう少しこのままでいなさい。」

もちろんうそだ。

最近、一緒にいる時間が少なく、シンジを少し遠くに感じていたアスカには心地よい時間であった。























「あ〜〜〜っ!!!! アスカ!!!!」





時間は少しさかのぼる。

「シンちゃん遅いなぁ・・・・・・」

授業中、器用にシャーペンを回しているレナ。

榛名先生の国語の授業は退屈なのだ。

さわやか系として生徒には人気は高い榛名だが、

授業がつまらないことでも有名であった。

とにかく、まじめなのだ。

授業以外では、おもしろい先生なのだが・・・・・・

国語の授業でお約束の段落分けについての説明が続いている。

「国語は苦手なのよねぇ・・・・・・・」

国語だけではなく、ほとんどの科目が苦手という彼女。

後で、おねえに写させてもらお〜っと・・・・・

どうせ聞いててもわからないので、レナは妄想の世界に入った。

ちなみに、レイはシンジがまだ登校してきていないため、授業にいつもよりも集中できておらず、

ノートは真っ白だ。

4人で委員長のお世話になることであろう。

そんな雰囲気の教室を不意に大きな揺れが襲った。

「キャーー!!」

「・・・・・・・」

「キャー!!!!」

「敵襲だ〜!!」

驚いて騒ぐもの、声も出ないもの、とっさに愛用のヘルメットを装備するもの、まだ寝ているものと

様々な反応があった。

「みんな、落ち着いて! 机の下に・・・」

と榛名が大声で指示を出す頃には、地震は収まっていた。

教室中を見渡す榛名。

誰も怪我などはないようだ。

安心すると、落ちた教科書と黒板消しを拾った。

「みんな、大丈夫か? なにかあった人は、僕に言ってくれ。」

という榛名の教師らしい声は、生徒の耳に届いていない。

すでに、

「今の地震おおきかったね。」

「某国の秘密兵器かもしれない・・・」

「こんなに揺れたの初めてだよね。」

「あの? なんかあったんか?」

などと、生徒達は地震についての雑談にはいっていた。

完全に授業の雰囲気(?)は消え去っていた。

そんな中、窓際の席であるレナは、外はどうにもなってないのかな?と思い見ると・・・・・

特に火事も起きてる様子もなく、被害はなかったようだ。

しかし、少女の心に衝撃をあたえる光景がそこにはあった。

なんと、シンジとアスカが校門のそばで抱き合っているではないか。

「あ〜〜〜っ!!!!アスカ!!!!」

思わず大声で叫ぶレナ。

その大声に、クラスメートはなにがあったかと窓際に集まる。

一瞬、息呑んだ一同。

が、次の瞬間に口々に大声を発していた・・・・・・

「授業・・・・・」

黒板の前では、寂しそうな榛名がぽつんと立っていた。







<つづく>


お久しぶりとなります。
ここまでの流れを忘れ去られそうなくらい、間があいてしまいました。
またおつきあい願えるとうれしいです。




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