注:これはゲームKanonの時間を1年ずらしてのお話となります。
つまり、祐一がこの街に来たのは、1年の冬であったということです。
現在は新学期が始まったばかりの4月となります。
選挙戦が書きたかったのさっ♪
ドズルのように、そんなことは認めれんぞ、という方は、ブラウザの戻るを押してね。
「諸君、このままでは我らの政権は危うい・・・・・」
夕暮れ時の1室でその会合は行われていた。
「会長、なにか打開策はあるのですか?」
そこは、生徒会室であった。
会長の久瀬を中心とした”倉田佐佑理対策委員会”が開かれているところであった。
現在、久瀬政権に大きく影を落としかねない人物がなんと次の生徒会選挙に出馬してきた
ことをうけての緊急対策会議である。
「それにしても、なぜ倉田が・・・・・」
会議の記録をとっていた書記が考え込む。
「そんなことは現状では問題にならない。彼女にどう対抗するかが問題なのだ。」
久瀬冷静に状況を判断していた。
久瀬の頭のなかでは、6:4で未だ自分が優位にたっているという解答にいたっていたが、
相手には自分にないものがある。つまり”アイドル性”である。
たいして考えもしないで、かわいいからこっちに・・・という輩の票が流れる可能性が高いからだ。
実際自分でも、佐佑理に投票してしまいそうなほどだ。
影ながら佐佑理さんに惚れている久瀬であった。
政権伝説 前編 5000HIT記念SS
「それにしても、ほんとうに出馬するとは・・・」
いつもの非常階段で昼食をとっている、祐一・佐佑理・舞。
「あはははーっ、約束ですからね〜。」
「佐佑理は約束を守る・・・・」
たこさんウインナーを口に運び、舞が祐一をにらむ。
「いや、そういうことじゃなくてな。」
3人の約束とは1週間前のある事件がきっかけでされたものである。
朝、いつものごとく名雪の寝坊でギリギリのバンジージャンプな登校をしていた祐一だったが、
不運にも名雪が転び、それに祐一が巻き込まれるというアクシデントのために遅刻する。
祐一達が校門に辿り着いた時(ちょうどチャイムが鳴り終わった時)そこから校舎へと向かう
一団がいた。久瀬政権の皆さんである。
「君は相沢君だね、遅刻とはたるんでいるのではないかな。」
久瀬が目ざとく祐一を発見する。
「会長さんこそこんなところにいたら、遅刻ですよ。」
祐一なりに対処をする。
わざわざ”さん”をつけるところが彼らしい。
「我々は生徒会活動のためにここにいるのだよ。すでに学校には朝のホームルームに遅れることは、
通達済みさ。君らのような生活失格者と一緒にしないでほしいな。」
久瀬の隣りにいる会計の男がメガネをかけなおしながらいう。
「その生徒会様がわざわざ朝からこんなところでなにをなさっているのでしょうか?」
皮肉いっぱいに祐一は言葉を投げ返す。
「祐一いこうよ。」
名雪がそでをひっぱるが、祐一は動かない。
「朝のあいさつ運動というやつさ。朝のあいさつから始まる学生生活のなんと爽やかなことか。」
書記の男が襷を指差す。そこには確かに”1日はおはようから”とかいてあった。
「あなた達は、おはようというよりも、おそようですわね。」
副会長の女が左手を口元に持ってきて言う。
「問題のある人間は群れるものだが、やはり君もだな。」
久瀬は祐一が佐佑理達と一緒に、佐佑理が作った昼食を食べていることを知っていたため、
祐一のことが憎かったのだ。
「それは誰のことだ・・・」
祐一の声のトーンが落ちる。
暗に舞のことを問題児と言っている彼らに腹をたてているのである。
「じゃあ、先輩方失礼します〜。」
それを察した名雪が祐一を引きずりながら校舎に向かおうとする。
「はなせよ、奴らに言わないといけないことは山ほどあるんだ。」
「そういうこというと、お母さんに言って”謎ジャムパーティー”だよ。」
祐一はその手をふりほどこうとしたが、名雪の言葉に動きが止まる。
以前の水瀬秋子主催・謎ジャムパーティーを思い出す。
謎ジャムサンド、謎ジャムご飯、ちょい謎チャーハン、謎かけそば・・・・・・・・・・
そして極めつけの、”謎汁”・・・・・・・・・
思考が少しの間止まる。
/* 水瀬秋子のお手軽クッキング〜 vol.1
謎かけそばの作り方♪
1.たっぷりの謎ジャムを用意します
そこに謎っぽい調味料を混ぜて、味をまろやかにします♪
湯煎でジャムを温めてください
2.麺は細麺を固めにゆがきます
3.ゆであがった麺を軽くいためます
4.3をおさらに盛り、麺が冷える前に謎ジャムをたっぷりとかけます
5.お好みによりイチゴを乗せると、お子様によろこばれます
以上、水瀬秋子のお手軽クッキングvol.1終わり */
「いや、それでも男にはやらなくちゃいけない時があるんだ!」
久瀬達の方を向く祐一。
しかし、そこに彼らの姿は無かった。
「祐一が固まっている間に、行っちゃったよ。」
そう、祐一はあのときの記憶の回想のために、3分ほど硬直していたのだ。
身体は正直である。祐一の体を守るために、3分間闘っていたのであった。
そして、その怒りは遅刻と担任に怒られたことにより、昼休みまでつづくこととなった。
チャイムが鳴って、いつものところ、いつもの時間。
「祐一さんどうかしたんですか〜。」
「・・・・・」
先ほどから無心に佐佑理のお弁当をがつついている祐一。
佐佑理の問いに答えようとするが、おにぎりが喉につまる。
舞が自分が飲もうとしていたお茶を差し出す。
それを一気に飲み干す祐一。
「ふ〜〜〜。やっと、一息ついた・・・・・・・」
祐一はもう1杯水筒からお茶をそそぐとそれを飲み干す。
「いや、ちょっと朝にいろいろとイヤなことがありましてね、佐佑理さんのお弁当で中和してたところです。」
「そうなんですか〜。」
「佐佑理さんのお弁当を食べると、幸せな気分になれるからな。」
「・・・・・・・(こくん)」
祐一の意見に舞もうなずく。
「そうですか〜。それはよかったです。佐佑理もそういってもらえてうれしいですよ。」
そういうと、佐佑理はナイフを取り出してりんごをむき出す。
「佐佑理さん、なかなかやりますね。」
その皮むきテクを見て祐一が関心する。
「実は俺、それ得意なんですよ。」
皮むきの手つきをする彼。
「そうなんですか〜。以外ですね〜。」
「勝負してみません?」
「いいですよ〜。」
「佐佑理は負けない・・・・・・・」
舞がたこさんウインナーを飲み込む。
「おっ、言ったな〜、舞。俺が負けたらなんでも1つだけ言う事を聞いてやるぜ。」
「じゃあ、私が負けたら祐一さんのいうことを一つ聞いてあげますね。あははーっ♪」
佐佑理のその言葉に祐一の妄想は膨らむ。
裸エプロンで食事を作ってくれる佐佑理さんや、なぜかきわどいウエイトレス姿の佐佑理さんや、
果ては、巫女すがたの佐佑理さんの姿まで浮かんでくる始末だ。
俄然燃え上がる祐一。
「じゃあ、やりましょう。」
2人はほとんど同じ大きさのりんごを手にもつ。
そして勝負は開始される。
お互いに、皮をつなげつつも細く、長くむいていく。
そして結果は・・・・・・・・・・・・・・・・祐一の勝利であった。
「北のりんごむき職人の血と技を受けつぐ俺に敗北は許されないのだ!」
意味不明な発言の祐一。
「祐一さんにこんな特技があったなんて驚きですね〜。」
「以外・・・・・・・・」
2人の皮の差は僅か1センチであった。
「約束ですね。なにか1ついってください。」
佐佑理さんは笑顔で言う。
その笑顔がまぶしい祐一はとても先ほどの妄想を口には出せなかった。
「そうですね〜・・・・・・佐佑理さんが生徒会長になって、俺を副会長にしてくれるとか?」
この高校の生徒会は会長のみ選挙で選ばれ、役員は会長の任命によるものであるため、
祐一が副会長になることも実現する。
もちろん、生徒会役員で無くなった久瀬に今朝のお礼をしたいと考えたのだ。
一瞬だったが。
「なんてね。これからもおいしい弁当を作ってくれればOKですよ。ついでに食べさせてくれたりしたら
うれしいけど。」
祐一の発言に舞がチョップを入れる。
そのお昼はそれで終わったはずであったが、翌朝の生徒会長立候補者の公示に佐佑理の名前があり、
祐一は驚いたのだった。
<つづく>