ずっと気になっていた。

あの日別れた女の子の事が。

いや、忘れられなかったと言ったほうが正確かもしれない。

初恋の女の子。

いとこの、ちょっと変なところもあるけれどそこもまたかわいく感じたあの子。

水瀬名雪。

ジャンパーのポケットを探る。

使い古した定期入れを取り出した。

小さい時、親父にねだってもらったものだ。

実際に通学定期を入れているわけではない。

入っているのは・・・・・1枚の写真。

かわいらしい小学生の女の子がそこにはいる。

別に俺はロリコンというわけではない。

ここを離れる時に持っていた、たった1枚の写真。

カメラに向かってピースをしているおさげの女の子。

大切な思い出・・・・

「名雪・・・」

指で名雪をやさしくなでる。

もうすぐ彼女に会える。

だが・・・・

「寒いっ!」

少し前から雪が降り出した。

北の地、記憶に薄い駅に降り立った彼を迎えにきてくれるはずの天使は未だ現れない。

時計の針はもうすぐ3時を示そうとしていた。

「耐えることも、また愛さ・・・・」

そういいつつも、水瀬家の場所がわからない彼には動きようがなかった。

せめて連絡先くらいはちゃんとメモをとっておくのだったと、15分に1回は後悔している。

ゆっくりと定期入れをポケットにしまった。

雪の中普通なら近くにある喫茶店にでも入ってまっていればいいものの、

ここで名雪を待っていたかったから、雪を頭につもらせながらもベンチに座っていた。

名雪に会ったら・・・あの時の返事をちゃんとしなくちゃな・・・・・

あやまって手が滑ってしまい、名雪の作ってくれたゆきうさぎを叩き落してしまった。

あの時は・・・どうしていいのかわからなくなって、なにも言葉を出せなかったんだよな・・・

俺の生きてきた中で最大のミスだった。

だから、今日は俺から告白するんだ!

電話でそれとなく秋子さんに

「名雪、元気ですか? 彼氏でも作って高校生活を謳歌してるとか?」

と聞いてみたら

「いいえ、彼氏はいないみたいよ。」

という答えが返ってきた!

もしかしたら、名雪は一途に俺の事を想っていてくれたり・・・・

なんてことだったら・・・



「名雪、久しぶり。」

「祐一・・・また来てくれるの待ってたんだよ・・・」

「俺もまたここに来たかった・・・いや、お前に会いに来たかった。」

「えっ!?」

「名雪、あの時言えなかった言葉を今言うよ。」

「・・・(真っ赤)・・・」

「俺はお前のことが好きだ。」

「祐一っ!!」




そして二人は再会の抱擁をしつつ、恋人という関係になる・・・・

完璧な展開だ。

こういう展開だと助かる。

「雪、つもってるよ。」

などと妄想していると、背後からかわいらしい声が俺の頭に投げかけられた。

この俺の心をぎゅっとわしづかみにするような声は・・・

後ろを振り向いた。

そこには・・・・俺の初恋の女の子が成長した姿があった。

当時の面影そのままだ。

ただ・・・・・・隣に見知らぬ美人がいた。

それも何故だか腕を組んでいる。

「・・・・・・・・・・・」

とりあえず、遅いぞとでも言って会話を始めようと考えていたが、その予定すら頭からふっとんだ。

なぜなら、その美人に名雪が腕を組んでもたれかかっているからだ。

「どうしたの? 寒くて固まっちゃったの?」

「い、いや・・・久しぶりだな、名雪。」

「うん、久しぶりだね。ちゃんと私の名前覚えててくれたんだ」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

また会話が凍った。

名雪の隣の美人はキツイ目でこちらを見ている。

「そちらはどなたかな?」

「紹介がまだだったね、この人は私のクラスメートで彼女の香里だよ。」

へぇ〜、クラスメー・・・・・って、彼女!!?!?!?!?

「えっと・・・どういうことかな、名雪さん?」

「名雪、この人よくわかってないみたいよ。」

「そうだね・・・」

「仕方ないわね、ちゃんと理解させてあげましょう。」

などと意味不明なことを言うと、その香里という女はこともあろうに俺の名雪を抱き寄せて口付けた!

「うゔっ・・・・・う・・ん・・・・」

それって舌入ってません!?

「はぁはぁ、香里いきなりこんなの・・・」

口が離れた時名雪が抗議のセリフを呟いたがお構いなしにまたその唇は奪われていた。

何秒、何分それが続いたのだろう・・・・・・

俺はただ唖然としてその光景を眺めていただけだった。

やがて、その悪夢のような光景に終わりがきた。

名雪はくたっとして文字通り体を香里に預けていた。

「こういうことだから・・・・名雪とひとつ屋根の下だからって、欲情して手をだしちゃダメよ。」

「・・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜」

香里の刃が俺の思い出を切り裂いた。

俺はただ叫びながら見知らぬ街を疾走しているのだった・・・・・





<たぶんつづかない(笑)>


構想1分。
作業45分。
・・・・うぐぅ・・・ごめんよ・・・・・