2月14日 午前0時のみなさん


2月14日。

強気な子も、内気な子も好きな人に想いを伝える日。

製菓メーカーの戦略とはいえ、自分の気持ちを後押ししてくれる日であることに間違いはない。

そんな恋する人々の2月14日0時のこと。




〜水瀬家〜

「うーん……なゆちゃん、これでいいかな?」

「多分、大丈夫だよ」

カンカンカンカン……

手にしたハンマーで、鉋の歯を調整するあゆ。

シュッ、シュッ、シュッ、シュッ

テーブルに置かれたチョコレートが鉋で削られていく。

「こうやって薄くすれば、溶けやすくなるよね」

「うん、ばっちりだよ」

どうやら湯せんでチョコレートを溶かす準備のようだが、

あからさまに方法が違う。

「私もがんばるおー、香里のために!」

名雪は手にしたノミでチョコレートを削る。

二人とも過程は別にして最終的にできるものは案外まともになるかもしれない。




〜天野家〜

「美汐ちゃん……チョコ……甘い……ね」

「あっ……いいのよ、好きっ……な、あっ……だけ食べ……も……」

「うん♪ 全部舐めちゃうね♪」

「そう…よ、全部、くっ……舐めちゃっていいのよ。でも……」

「うん、次は美汐ちゃんね♪」

謎である……


〜美坂家〜
「栞……」

「うん、分かってるよお姉ちゃん……」

「大切なのは心なのよ」

「大丈夫です。心ならたっぷりこめました♪」

「そう、、なら大丈夫よ……きっと相沢君も喜んでくれるわ。この……クマ」

そう言う香里の口の端はややつりあがっていた。

自分で言っていてあまりにも嘘だな、と思っているからだろう。

無理もない。

バレンタインの日にちと同じ14回目にしてやっと形になった

チョコレートらしきものがそこにあったからだ。

大きめのチョコには、ホワイトチョコで栞直筆の絵が描かれている。

「お姉ちゃん、ひどい……」

「あ、ごめんなさい……」

もう一度じっくりとチョコを見る香里。

正直クマにも見えなかったのだが……

「……ごめんなさい、教えてくれないかしら?」

「………お姉ちゃん本当にわからないんですか」

「ええ、ごめんなさい」

「これ、祐一さん……です」

「そ、そうだったの……でも、チョコレートは見た目じゃないわよ。

 味がよければOKよ」

「お姉ちゃん、さらりとひどいことを言いますね」

「あはは、ごめんなさい。栞ががんばって作ったんだもの、おいしいわよね」

ひょいと転がっているかけらを口に入れる。

「うん、おいし……」

ドタッ!

「お、お姉ちゃん!?」

「しお…り、な、な、何を…いれたの…」

「秋子さんからもらった特製愛のエッセンスです♪」

祐一ぴんち……




〜北川家〜

「さて……仕上げだな」

両手に乗るサイズのハート型チョコレート。

そこにホワイトチョコで最後の仕上げをする。

”親愛なる相沢へ”

「待ってろ相沢、真実の愛を俺が伝えてやるぜ!!!」