「それでですね・・・」

昼休み。私と祐一さんはいつものように中庭で話しています。

祐一さんとつきあい始めて、もう1年になりました。

その間いろいろなこともあったけど、私達は基本的にラブラブ♪

見た目小学生のたいやき娘や、あやしい肉まん両刀娘、

永遠に眠っていてほしい祐一さんの同居人を排除しながら平和は続きました。

だけど、最近の祐一さんはすこしおかしいです。

最愛の私とのデートの時にも眠りだしたり、昼休みの愛の語らいの時間でも、

急に反応がなくなったりしてしまうんです。

現に今だって・・・

「く〜〜〜」

イチゴマニアの魂が乗り移ったかのような眠り方です。

そんなに私と一緒にいるのが退屈なんですか?祐一さん。

くやしかった私は、祐一さんの分のアイスも食べて先に教室に戻りました。

私との話の途中で眠った罰です。そこで眠って遅刻してください。








午後の授業が始まった。

数学の授業は嫌いです。

以前、お姉ちゃんにそういったら、

「数学って、答えがきっちりと出ておもしろいじゃない。」

なんて言われました。

でも、嫌いなものは嫌いです。

足し算と引き算と掛け算ができれば、立派にお嫁さんはできますから大丈夫ですよ、祐一さん♪

そういえば、授業にまにあったのかな?

ちょっと悪いことしちゃったかもです。反省です。

いちおう、次の放課に様子を見に行って、謝りましょう。

と考えてたら都合よくチャイムが鳴ってくれました。

早速祐一さんのクラスに行くことにします。

祐一さんの席は廊下側。窓を開けて驚かせましょう♪

そう思って、祐一さんの席付近の窓に近づきました。

すると、祐一さん、お姉ちゃん、おまけの会話が聞こえてきました。

「どうしたの、相沢君。最近寝てばかりじゃない。名雪と変わらないわよ。」

「最近、家でまともに寝てないんだ・・・」

「私も祐一のせいで全然眠れないよ〜」

「2人でなにかしてるの?」

「まぁ・・・・な。」

「祐一がんばりすぎてて、昨日なんか私の部屋でそのまま寝ちゃったんだよ〜」

えっ?なんていいましたか?

「しょうがないがろ、疲れたんだから。でも、栞にはいえないなぁ。このこと。

 説明できないしな。」

私に言えないって?

説明できないって、どういうことですか?

窓をあけて祐一さんを追及する勇気のなかった私はその場を離れました。






冬場の日の入りは早いです。

すぐに辺りは暗くなります。

祐一さんとの思いでのベンチに腰掛けて、いままでのことを思い出していました。

初めての出会い。

初めてのデート。

初めてのキス。

初めての・・・・・・・・・・。

いろいろなことが思い出されました。

なぜか涙が溢れてきます。

私、悲しいのでしょうか?

それとも悔しいのでしょうか?

わかりません。

明日は私の誕生日だっていうのに、前日にこんなことを知るなんて・・・

もしかしたら、誕生日にふられるのかな?

やだな。最悪の誕生日になりそう・・・・・・・・。

「ここにいたのね。心配したのよ」

いつのまにか隣におねえちゃんが座っています。

「どうしたの、何かあったの?」

ハンカチで私の涙をふきながら、やさしい声をかけてくる。

おねえちゃん、知ってるでしょ。相沢さんに裏切られたんだよ、私。

知っててそんなふうに声をかけないでよ。

思わずそういいそうになったけど、なんとか飲み込んだ。

おねえちゃんは純粋に私のことを心配してくれてるのだから。

やつあたりみたいなことはしたくなかった。

「ううん。ちょっと考え事をしてたら、なぜかこうなちゃったの」

だからそう答えた。

「大丈夫よ。これからは悲しいことよりも、うれしいことの方が多いから。」

おねえちゃんが私の手を引いて立ちあがった。

おねえちゃんがここまで言うということは、相沢さん達のこと知らないのかな?

うううん。おねえちゃんもあの会話に混ざっていたから知ってるはず。

なんで隠すの?

それとも単なる私の勘違いなの?

「さっ、帰りましょ。」

それでも、私の手をひく姉にそれを聞くことはできなかった。






その夜。

私はなかなか眠れなかった。

眠るといやな夢を見そうなきがしたから。

ボーンボーンボーン。

下の部屋にある時計の音が聞こえる。

もう12時。

おめでとう、私。

心のなかでなんとなくハッピーバースディの歌を歌っていたら、

ドアをノックする音が聞こえた。

ドアが開いておねえちゃんが入ってきた。

「栞、起きて。」

「起きてます・・・」

「そう?それは好都合だわ。」

そういうと部屋から出ていってしまいました。

一体なにをしに来たんだろう?

布団をかぶりなおして、目を閉じる。

イヤな夢を見ませんように・・・・・・・そう願いながら眠ることにした。

と、今度はノックもなしにドアが開いた。

「今度はなぁに?おねえちゃん。」

私は体を起こしてドアの方を見た。

そこにはなぜか祐一さんがいる。

もしかして夢かな?

呆然としている私に、祐一さんはいきなりキスをしてきた。

「17歳おめでとう、栞。」

?マークが飛んでいた私の意識は一気に覚醒した。

なぜか涙が溢れてくる。

「ごめんな、おどろいた?」

私の様子に祐一さんはあたふたとしている。

そりゃ、驚きましたよ。

こんな時間にいきなり祐一さんがくるのだから。

「これ、誕生日プレゼント。」

涙のとまらない私に祐一さんはきれいな包装をしたものを差し出した。

無言でうけとる私。

「開けてみて。」

笑顔の祐一さんがベッドに腰掛ける。

私は言われるがままに包装をとった。

中からは、白いマフラーと手袋が出てきた。

「秋子さんと名雪に教えてもらって作ったんだけど・・・どうかな?」

照れている祐一さんは私の方をじっと見ている。

祐一さんが編物をするなんて聞いた事がなかった。

初めてにしてはすごくできがいい。

それだけがんばってくれたんだ・・・・・・・。

マフラーの編み目を手のひらで感じる。

その手触りがここちよかった。

その手触りから、急に昼間の会話を思い出した。

「最近家でまともに寝てないんだ・・・」

「私も祐一のせいで全然眠れないよ〜」

「祐一がんばりすぎてて、昨日なんか私の部屋でそのまま寝ちゃったんだよ。」

つまりこれを作るために、祐一さんはほとんど寝ないで編んでいたわけで、

名雪さんはそれにつきあわされていた。で、疲れた祐一さんがそのまま

名雪さんの部屋で寝てしまったというわけですね。

私の早とちりだったんだ・・・。

ごめんなさい、祐一さん。あなたをもっと信じるべきでした。

でも、2人は1つ屋根の下に住んでいるし、いつも仲がいいから、私不安だったんですよ。

「うれしいです・・・すごくうれしいです!」

私は祐一さんの胸に飛び込みました。

やさしくうけとめてくれる祐一さん。

いつまでも私をうけとめていてくださいね♪







<おわり>


なんとか、栞誕生日記念SS書けました。
栞のあの寒そうなかっこを見てたら、マフラーと手袋なんていいかも
と思い書き始めました。編み物って結構めんどうで、むつかしいんですよね。
きっと祐一も「だめだー!」なんて言いながら、何回もほどいて編みなおした
事でしょう。やはり、すべて自分で編み上げたいでしょうから。
後、書き忘れたけれど、こんな時間に祐一が栞の部屋を訪れてもOKです。
家には香里しかいないので・・・あの放課中に香里に頼んで入れてもらったわけです。
両親は旅行かなにかかな?(べたべた・・・)
PS.いいタイトルが思いつきませんでした



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