「お風呂上りのお楽しみ〜」

少女は体にタオルを巻いただけというあられもない姿でいた。

湯上りでちょっと上気した表情は、男をその気にさせてしまいそうだ。

「ど・れ・に・し・よ・っ・か・な〜」

脱衣所にある自動販売機の商品を順に眺める。

そこには何種類ものパックのジュースが売られていた。

「昨日はこれだったから・・・・こっち〜♪」

100円を入れてボタンを押した。

ドスン!!!

なにやら重々しい音がした。

?マークの少女は取り出し口を覗いてみる。

そこにはちゃんとパックのジュースらしきものがあった。

いや、あの直方体はまさにそうであろう。

右手を入れて取り出す。

「わっ、重い・・・・」

小さなパックと思えないほどの重さ。

「押したボタンのと違う・・・・」

少女が買おうとしたものとはパッケージが違ったようだ。

ガチャガチャガチャ

先ほど押したボタンを連打するが、もうどうにもならない。

「が、がお・・・・・・」

ついでに返却のレバーをガチャガチャとしてみたが、やはり無駄だ。

「う〜・・・・・でも、もしかしたらおいしいかも・・・・」

ストローを取り出して刺してみる。

怪しい手ごたえを感じたが、思い切って吸ってみた。

「ゔゔゔ〜・・・・」

うまく吸えない。

「ん〜〜っっ!!!」

明らかに液体とはいえないものがストローを上がってきた。

「!?」

口にわずかに入ってきたそれに驚愕した少女。

「おいしいかもしれない・・・・」

またがんばって吸ってみた。

やはりなかなか口に入ってこないが、

「おいしい〜」

少女はご機嫌である。

砂場にうもれた宝物を探し当てた子供のような笑顔。

しかし・・・・・

「これ、疲れる・・・・」

一生懸命吸っても、なかなか飲めない。

それでもなけなしの100円を払って買ったのである。

簡単にはあきらめられない。

「みすずちんなにしてるの?」

浴場から出てきたショートカットの少女が、その髪を拭きながら話し掛けた。

残念ながら今後に期待というしかない発育ぶりだが、十二分に魅力的な少女だ。

「ジュース飲んでるの。」

「なんか、そういう風に見えないよ。」

「にはは・・・買おうと思ってたのと違うの出てきちゃって。」

「そうなの? やっぱその自販機怪しいね。」

自動販売機に並ぶ商品を見る。

「どろり濃厚シリーズって・・・・聞いたことないな。それにこのゲルルンってなに?」

見たことも聞いたこともない銘柄のジュースが並んでいた。

パックのデザインからして怪しい。

「ゲルルンってこれだよ。」

飲んでいたパックを差し出した。

「おいしい?」

「うん、おいしいよ。飲んでみる?」

あからさまな怪しいオーラをまとっているパックに物怖じした少女であったが、

観鈴の笑顔が本当においしいという表情をしていたのでパックを受け取った。

「重い・・・これ、ジュースがはいってるんだよね。」

「おいしいよ♪」

笑顔の観鈴。

飲むのをやめようかとも考えたが、少女は思い切ってストローをくわえた。

「!?」

少女の表情が険しくなる。

「おいしくなかった?」

「これ・・・飲めない・・・」

「がんばって吸わなきゃダメ。」

そういうものなの?と思いつつも、少女は全力でストローをすった。

「!!?」

「飲めた?」

「おいしいかもしれない・・・全然飲めないけど。」

驚いた表情でパックをまじまじと見ていた少女はもう一度自動販売機を見てみた。

全く知らない銘柄の商品だ。

もしかしたら、この地方限定のものなのかもしれない。

こうなると好奇心が黙っちゃいないのがこの年頃。

籠に置いてある小銭入れを取り出すと、100円硬貨を自動販売機に入れた。

「佳乃りんも買うの?」

「これ結構おいしかったから、もしかしたら他のもおいしいかもしれないでしょ?」

「そうかもしれないね。」

昨日、どろりシリーズのピーチを飲んだ観鈴はあえてコメントを控えた。

「”どろりマスカット”と”どろりメロン”ってどう違うんだろ?」

その謎は誰にもわからない・・・・・






トリガーを引くのは  第11話





キキキキキキキーーーー!!

ガガガガガガーーーー!!

「なぁ、北川。」

「なんだ相沢。」

キキキキキキキーーーー!!

ガガガガガガーーーー!!

祐一とゆかいな仲間達は車で一路、温泉宿を目指していた。

レンタカーを借り、山道を疾走中である。

「これ・・・普通のハイエースだよな?」

「佐佑理さんの知り合いがやってる店で借りたって話だぞ?」

「そうか・・・・・で、なんでこんなに滑りながら走ってるんだ?」

キキキキキキキーーーー!!

ガガガガガガーーーー!!

祐一達を乗せた車は、コーナーを文字通りすべるように抜けていった。

倒れそうで倒れないハイエース。

「うぐぐぐぐぐぐぐ・・・・」

体をうまく固定できてないあゆは祐一にしがみついている。

「いいじゃないか、役得だろ?」

「そうか?俺は首が絞まって苦しいんだが。」

最後部の座席には、名雪・香里・栞が座っていた。

この揺れの中、名雪はしっかりと睡眠中。

いつでもどこでも、どんな時でも眠れる彼女はある意味すごいのかもしれない。

それでもさすがに危険なので、香里が座席にくくりつけたようだ。

みごとなロープワーク。

一体どこで習ったのだろうか?

その香里は・・・体を固定するのに必死だ。

高速で峠を抜けていく車の揺れはすさまじい。

妹の栞はというと、祐一に背後から抱きついて揺れに耐えていた。

なんとも効率の悪い方法であるが、

この揺れに乗じて祐一と一時的接触を図ろうとする栞の策なのかもしれない。

「佐佑理さん、ハンドル握ると人格変わるからな・・・」

「ああ、この車なら無茶はできないだろうと思ったんだけどな。」

男達の想像力はどうやら足りなかったようだ。

運転席の佐佑理は涼しい顔して運転している。

激動(?)の後部座席だが、助手席の舞は特にいつもと変わらない。

缶ホルダーに置かれている水の入った紙コップを眺めているだけだ。

「やっぱりこの車、変に改造してあるよな?」

「そうりゃそうだろ、さっき抜いたの黒いGT−Rだったしな。」

この分だと予定よりもかなり早く到着しそうだなと二人は思い、

後ろの香里は二人の考えている所とは違うところに早く到着しそうだと感じていた。

文句も言いたかったが、この揺れでは舌をかみそうなのでおとなしく祈っている香里。

だがその妹栞はずっとこのままでいたい・・・・そう思っていたのだった。







「着きましたよ〜。」

明るい笑顔が素敵な佐佑理が、後ろを振り向いた。

その笑顔はとてもすがすがしく感じられる。

そこは・・・・目を回しているうぐぅとなぜか幸せそうな表情で祐一に抱きついたまま気絶している栞。

さらにはぐっすりおねむの名雪と顔色の悪い香里がいた。

「はえ〜、みなさんおつかれのようですね〜」

「おつかれ。」

舞は左手を軽く挙げた。

こちらはやはり涼しい顔。

「に・・・日本最高にして・・・さい・・・最低のジェットコースターに乗った以上の気分だわ・・・」

「そうか? 慣れれば結構面白いかもしれないぞ?」

席越しに香里の頭をなでる祐一。

いつもなら不満げな表情を浮かべそうな香里だが、そんな元気もない。

「帰りは・・・あなたたちのどちらかが運転してね・・・」

「お許しがでればな。」

祐一と潤は外に降りた。

二人とも運転する気はないようだ。

潤があゆをかつぎ、祐一が栞を抱き上げた。

「先に部屋にいってるからな。」

駐車場のすぐそばには、ちょっと古めの旅館がたっていた。

「私も行くわ。」

香里は立ち上がって、下車しようとした。

まだ足元がふらつく。

「ほら、座ってろよ。急がなくても温泉は逃げないぞ。」

まるで子供をあやすようにする祐一。

祐一に文句を言おうかとしたが、香里は無言で椅子にもたれかかった。

やはり相当につらいらしい。

「おとなしくしてたら、後で香里も連れてってやるよ。」

栞を抱いて旅館に向かう祐一。

抱かれている栞は状況がわかっているのか、相変わらず幸せそうな表情だ。

「バカ・・・・」

隣の友人に習って香里も静かに瞳を閉じることにした。








<つづく>



ということで、遅れましたがトリガーです。
あいも変わらずの短さ健在?
仕事から帰るとね・・・キーを叩くのが嫌な日が続いて・・・<言い訳
前後半ともシリアスなしとなりました。
前回の前振りでバレバレでしたが、違うゲームからもキャラもってきたのですが・・・
さてさて、ちゃんと収集つけれるかな?
次回、温泉宿にて出あいが・・・・
またおつきあいしてくださるとうれしいです。

PS.感想でよく言われるヒロインは誰か?
   ですが、ちゃんときまってますんで・・・おたのしみに
   って、現在までじゃわかんないですね(笑)。

===========================================================
香里「・・・・・・・・」
名雪「香里、元気ないね?」
香里「名雪はあの運転でなんともないの?」
名雪「寝てたから覚えてないよ。」
あゆ「うぐぅ・・・怖かった・・・・」
栞 「まさか佐佑理さんがあんな人だったなんて、びっくりです。」
香里「どうしたの? 栞、目つきが怖いわよ。」
栞 「なんでもないですよ、おねえちゃん♪」
あゆ「・・・・・なんか・・・ボクがにらまれているような・・・・」
栞 「そんなことないですよ、あゆさん。」
名雪「栞ちゃんは、祐一の隣に座りたかったんだよね。」
栞 「別に祐一さんの隣に座りたかったわけじゃないですし、ドサクサにまぎれて祐一さんに
   抱きしめられたあゆさんに恨みを持ってるわけでもないですよ。」
香里「栞が・・・私の栞がなんだか変わって行く・・・・・」
名雪「香里もだんだん危なさアップしてきてるよ・・・・」