「温泉って、いいもんだな〜。」

広い露天風呂には祐一と潤しかいない。

初めての体験に祐一は純粋に感動していた。

風呂がこんなに気持ちいいものだと感じたことはいままでなかったのだ。

「ふふふ・・・この程度で満足するようじゃ、真の温泉通にはなれないぞ。」

タオルを頭に巻き漫画の泥棒のような潤が、祐一に平泳ぎで近づいた。

「北川・・・その”私は怪しいです”といった格好は何だ?」

「相沢・・・・これが露天風呂における男子の正装なのだよ。

正装の英国紳士・・・そう例えてもいいほどにな。」

その格好を祐一に見せつけるかのように、腰に手を当て立ち上がった潤。

祐一はじっとその姿を観察すると・・・・

「元気だな、北川。」

北川の元気ぶりに関心した。

「おう、露天風呂で萌えない男はいないぜ!」

「なんか、燃え方が違ってるんじゃないか?」

「いいや・・・・これで正解さ・・・・その答えを今、お前に示してやろう。」

手招きをしながら潤は風呂の端に向かった。

そして天を指差す。

わが生涯に一片の悔いなしといったポーズだ。

「みろ、あそこが我々の聖地だ!」

自らの前に聳え立つ壁の上に視線をうつした。

つられて祐一の視線もそちらへむかう。

「ま、まさか・・・・」

何かに気が付いた祐一に、にやりと笑い返す潤。

「想像してみろよ・・・あそこには温泉につかるために髪を上げてる佐佑理さんや、

 いつも以上に無防備な水瀬、ちょっと発育不足だけどそこがたまらない栞ちゃんや、

 その栞ちゃんの背中を流してあげてる美坂さん、子供っぽくても出るところは出てる

 あゆちゃんがいるんだぜ・・・・」

「みなまで言うな、我が友よ。」

さすがに戦友。

お互いの意思はすぐに伝えあえたようだ。

「いくか?」

「当然だ。そこに夢と希望の大地があるのなら!」

意気揚揚と石を上る2人。

プロらしく気配を殺してのぼっていく。

向こう側の気配から、あちらがわには一人いることを感じ取っていた。

一体だれなのだろうか・・・・・

それぞれの妄想が膨らむ。

岩の登る手に力が入った。

すべりやすい岩も彼らにとってはなんてことはない。

そして・・・・頂に達した。

手をがしっと組む親友。

じっくりと女湯を観察。

湯船には女の子が一人。

だが・・・・・二人の予想とは違った人物がそこにはいた。

彼ら以外の数少ない客だったのだ。

高校生くらいの女の子が長い髪をまとめ上げてゆったりと湯につかっていた。

「まだ・・・だったみたいだな。」

「そうだな。」

それでもじっくりと観察を続ける二人。

ビュゥ〜

冷たい風が二人に吹き付ける。

「一旦湯につかるか?」

「いや、もう少しここにいる。」

潤の提案を断った祐一。

その眼は彼女のしぐさにくぎづけになっていた。

手にもったタオルの中に空気を入れて沈めたり、手で水鉄砲をして遊んでいる様を。

「そっか、ほどほどにしとけよ。」

その表情を見た潤はゆっくりと岩を降りていった。

戦友のあんなになごやかな表情を見るのは久しぶりのことだ。

一体祐一が彼女になにを見ているのか・・・なんとなく見当はついたが、それ以上は考えようとしなかった。






トリガーをひくのは   第12話






「なんで俺はここにいるんだろ?」

祐一は湯に浸かっていた。

非常にいい湯だ。

先ほどまで冷えていた体もすでに温まっている。

「いい湯ですね、祐一さん♪」

なぜだか白いバスタオルを身につけた栞が祐一の左隣で温まっている。

「ほんと、いい湯だね〜。」

右隣にはカエル柄のバスタオルを身につけた名雪が浸かっていた。

ここは旅館の女湯である。

まわりには3人以外に誰もいない。

「もう少し離れてゆったりと浸からないか?」

「こうしていたほうがあったかいですよ♪」

祐一の左腕に栞の控えめなふくらみの感触が伝わる。

『暴走しちゃダメだ、暴走しちゃダメだ!』

心のなかで必死に耐える祐一。

さすがにここで栞に手を出すようなことがあれば、彼に明日はない。

彼に与えられるのは全てを光にしてしましそうな香里の一撃・・・。

だから、絶対に暴走するわけにはいかないのだ。

そのため栞の方を見ることもできない。

彼女のまとっている白いバスタオルは、白い水着のように・・・・・なわけでそちらを見ることもできないでいる。

「祐一、背中流したげよっか?」

逆サイドにも布陣はしかれていた。

名雪が祐一の右側で頭の上にネコスポンジを乗せて温泉を満喫している。

「それ、長いな。」

「うん、祐一がくれたものだもん。大切にしてるんだよ。」

名雪の12歳の誕生日に祐一が送ったもの。






「この子とお風呂一緒に入ったら、気持ちいいよね。」

数少ない休日。

秋子・名雪・祐一の3人で出かけたデパート。

名雪はよほどそれが気に入ったのか30分ほどじっと見ていた。

この時、3日後の誕生日プレゼントが祐一の中で決定。

その気配を察してか秋子は名雪に買ってあげましょうかなどと言わないでいた。





「祐一さんにもらったものですか・・・・」

「うんっ、6年生の時だよ。」

「・・・・・・・」

栞は顔を半分湯に静めると、ぶくぶくと口から息を噴出した。

そんな子供っぽい栞に思わず笑みがこぼれる祐一。

だが・・・

カチリ

祐一の耳はその小さな音を拾っていた。

栞に抱きつくような動きをした祐一。

「名雪!!!」

そう叫びながら栞を抱えて間近の岩場の影へ入った。

名雪も違う岩場の影へと入る。

さすがにパートナーとして行動しているだけに名雪の行動も早い。

じっと様子をうかがう祐一。

こちらは丸腰。

栞と名雪も一緒にいるハンデまで付いている。

相手の気配も動く様子はない。

こちらの様子を伺っているのか。

こちらが丸腰だと知られてないのか。

少なくとも、相手に近くまで来てもらわないことには祐一には手の出しようがない。

つまり・・・相手の射撃を受けない位置でまつことしかできないのだ。

だが相手の気配が遠ざかっていった。

強烈な殺気を発していた相手がこうもあっさりと引いていくことに妙なものを感じた祐一。

彼にとっては助かったのだが、相手の意図を測りかねていた。

狙いは自分であろうことは明白だが、なぜ引いたのか。

考えが祐一の頭をかけめぐる。

「あ、あの・・・祐一さんが望むなら私・・・」

栞の声が祐一の意識を温泉に戻した。

先ほどから抱きかかえている栞が、恥じらいからかうつむいている。

温泉の所為か定かではないが、頬が赤く染まっている。

なぜそんなことになっているかというと・・・先ほど栞を抱えて岩陰に入ったときに、

栞を包んでいたタオルがはだけてしまっていたからだ。

当然栞の方を見た祐一にはそのすべてが目に入るわけで。

「あんっ、いきなりそんな・・・」

栞が艶っぽい声を上げる。

膨張してしまった祐一がなにやら勝手に悪さをしてしまったようだ。

ガラガラガラ・・・・

女湯のドアが開いた。

「名雪〜、湯加減はど・・・・」

タオル片手の香里が入ってきた。

そしてその視線は祐一と、その腕に抱かれている栞に釘ずけになった。

沈黙が世界を支配する。

「私・・・初めてだから・・・・」

何がはじめてなのか中国4000年の謎で王大人もお手上げであるが、その言葉が香里を動かす。

どこからかとりだしたハンマーがその手の内にあった。

「相沢君・・・なに・・・してるの?」

「だからこれは誤解で・・・・」

「誤解って何?」

「いや、ちょっとできごころでそこの岩を登ったら、Who Am I のマネしたくなって・・・そしたら

 中に入ってきた名雪に声かけられてびっくりしてこっちに落ちちゃったと。それでこの体勢は

 さっき怪しい気配がして、撃鉄を上げる音がしてな・・・・」

必死に経緯を話す祐一。

「そう、よかったわね。で今は?」

「だから、それは・・・」

























ドカッ!!!!
「きぅ・・・・」

















<つづく>


遅くなりました。
って最近このくだりばかりですね・・・
いかがでしたか?
感想、お叱りまってます



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あゆ「・・・・・」
名雪「どうしたの、あゆちゃん?」
あゆ「うぐぅ・・・」
栞 「出番がなくて泣いてるんですよ。」
香里「でも・・・今回の温泉編って出番少ないほうがいもしれないわ。」
名雪「どうして?」
香里「脱がされたり、相沢君の毒牙にかかる可能性が高いじゃない。」
栞 「私は祐一さんなら・・・」
あゆ「ボクだって祐一君ならいつでもOKだよ。」
名雪「香里はイヤなの?」
香里「な、な、何言ってるのよ!」
あゆ「もしかして祐一君じゃなくて北川君の方がいいの?」
香里「あ〜・・・もうこのお話はおしまい。」
名雪「でも、心配しなくてもこのお話では18歳未満おことわりなお話は書かないらしいから大丈夫だよ。」
香里「ほんとうに?」
名雪「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・多分・・・・」
香里「その言い方が気になるわね。」
あゆ「あっそうか! 香里さんって見た目やイメージほど胸が」
バキッ!!!!
あゆ「きぅ・・・」