「ミノムシぶ〜らぶら〜・・・」

旅館の前に聳え立つ巨木。

樹齢は何年だろうか?

月明かりが雄大な体を照らし出す。

その大きな体に見合うだけのサイズのミノムシが枝からぶら下がっていた。

だが、そのミノムシは夜だというのにくるくるとまわったり、左右にゆれたりと大忙しだ。

「なかなか楽しそうじゃないか。そろそろクセになってきたみたいだな。」

「お前、かわりにつるされてみるか?」

友人の冗談に対して真面目に受け答えをするミノムシこと相沢祐一。

そんな祐一を無表情な舞が軽く押した。

「こら、そんなに強く揺らすな!」

「みのむしさん・・・」

なぜかぽーっとした表情でその動きを追っている舞。

よほど面白かったのか揺れが小さくなるとまた押した。

「バカ、そんなにされると・・・・」

ドサッ!

ミノムシが落ちた。

「だから言っただろう・・・」

打った腰をさすりながら祐一は立ち上がった。

「すぐに抜けられるようにしてたんだな。」

「ま、一応用心のために。」

潤には予想された結果であったようだ。

「で、どうなんだ?」

「わからん・・・・が、相手は相当な腕だな。」

「身に覚えは?」

「ありすぎるに決まってるだろう、お互い。」

「そりゃそうだ。」

「正直、相手が撃鉄を上げてくれなければ危ないタイミングだった。」

祐一の言葉に潤は目をまるくした。

無理もない。

気配を読み取ることにかけて祐一はこの世界で間違いなく、1・2を争う。

そんな祐一が、油断していたとはいえ不意をつかれそうになったのだ。

「と、なると・・・これはやっかいだな。」

「ああ。」

祐一の言葉は、相手がわざと祐一に対して自分の存在を知らせたととれるのだ。

これはやっかいこのうえない。

「試された・・・か。」

祐一に対してこんなことができる人間は数少ない。

さらに、こんなことをする人間となると・・・・・非常に限られてくる。

2人の頭には同じ人物が浮かんでいた。

「どうするつもりだ?」

「とりあえず・・・・・・また縛られておくさ。」

布団と縄を拾い上げる祐一。

「じゃないと香里がうるさいからな。」

「それだけ思われてるんだよ。」

チョップを祐一の額に軽く叩き込む。

「で・・・俺がやるのか?」

真面目な表情で祐一と道具を見比べる潤。

非常に嫌そうな顔だ。

「・・・・・それは勘弁だな・・・男に縛られるような趣味はない。」

「でも、舞もさっきもどっていったし・・・」

「いや・・・代わりが来たみたい・・・」

苦笑いの祐一。

玄関から息を切らせて佐佑理がやってきた。









トリガーを引くのは   第13話








「おはようございます。」

浅い眠りについていた祐一に声がかけられる。

彼女の接近は察知していた。

が、敵意ある存在には感じられなかったのでそのまま眠っていたのだ。

「おはよう。」

お互いのことを見詰め合う二人。

祐一にはこの少女に見覚えがあった。

昨日の露天風呂にいた女の子、その人だ。

祐一はなんとなく気まずい気分になって、おはようのあとに言葉を継げなかった。

少女も祐一のことをじっとみていた。

そして

「快適?」

ミノムシ布団をぽんと叩いた。

「全然快適じゃないよ。」

「楽しい?」

「う〜ん・・・多分楽しくないと思うよ。」

「多分?」

「こうなるまでの過程は楽しかったかもしれないからね。」

「そうなんですか。」

「変か?」

「変だと思います。」

内角低めにストレートがきまった。

「あはは・・・大丈夫、君も大人になればわかるようになるさ。」

「・・・・そんなおとな嫌です・・・」

こんどは内角高めだ。

「で、こんな朝早くからお嬢さんはどちらへいかれるのかな。」

「散歩です。」

「いいね、すごく健康的だよ。」

さわやかな祐一スマイルが繰り出された。

「ミノムシさんは不健康だったとさ。」

なぜか昔話口調。

「だったら、俺も健康的な朝の散歩に一緒させてもらえるかな?」

「・・・・みのむしが?」

祐一に姿を上から下まで見た少女。

「えっと、降ろしてもらえるかな?」

佐佑理がよほどきつい縛りをしたのか、祐一は自力での脱出が不可能になっていた。

誰かに狙われたら、非常にやばい状況であったが・・・・祐一が誰かに夜這いをかけないように

するための佐佑理なりの手段だったのかもしれない。

「みのむし、やめ?」

どこか残念そうに言う。

「やめる・・・というよりも吊るされただけだから。できればすぐにでも降りたいさ。」

香里にどんな御仕置きされるかわからないが、これ以上晒し者になるのはもっと嫌な祐一。

脚をふってジタバタしてみる。

「なぜか哀れな気がしますので降ろしてあげます。」

ロープを解くべく、幹へ向かった少女。

「太い幹ですね・・・」

幹のまわりをぐるりと1週まわった。

木に生えている苔をつついたりしてみる。

そして今度は先ほどとは逆周りにゆっくりと1週した。

「あの〜・・・降ろしていただけるのでしょうか?」

控えめに問い掛ける祐一。

なんだか寂しい姿だ。

「・・・・忘れてました。あまりに木が大きいので。」

どうも木にみとれていたらしい。

今度はロープの結び目を見つけるために木をまわった。

一生懸命ほどこうとするが・・・・さすがに堅く結ばれている。

結んだ人の気持ちが入っているかのようだ。

「ほどけません・・・」

ちょっと悲しそうな瞳を祐一に向けた。

「いや・・・無理ならいいんだもう少しミノムシしてるから。」

少女は少し考え込むポーズをとった。

そして、ぽんっと手を叩くと宿に走っていった。

少しして戻ってきた彼女の手には登山ナイフが握られていた。

「よいしょ。」

祐一を吊るしていたロープにナイフを振り下ろす。

どすっ!

ミノムシは落下した。

満足に受身をとることのできない祐一はまともに衝撃を受けてしまった。

「いてててて・・・・・」

そんな彼にかまうことなく少女は手の中にあるナイフでロープを切断していく。

慣れた手つきだ。

すぐに祐一は自由になることができた。

自由になった手でうった腰をさすりながら立ち上がる祐一。

「ありがとう、やっと開放されたよ。」

それでも笑顔で少女にこたえる。

「どういたしまして。」

ぺこりと頭を下げる少女。

「ナイフの扱いに慣れてるみたいだね。君、登山にきてるの?」

「友人とそこの山に。」

遠く離れた山を指差す。

澄み渡った青空の下、緑の山が聳え立っていた。

「いつ出発するの?」

「もう、行ってきました。」

「そうなのか。どうだった、山頂は。」

「凄く綺麗でした。ああいう景色が見られるから登山は好きなんです・・・」

遠くの山をじっと見つめる少女。

風が彼女の長い髪をそっと揺らす。

「そういえば・・・まだ名前聞いてなかったな。俺は相沢祐一。」

「私は遠野美凪といいます。」

ぺこりと頭をさげる美凪。

つられて祐一も頭を下げてしまった。

「じゃあ、行きましょう。」

頭を上げると美凪は歩き出した。

「ちょっと待てよ、どこへ行くんだ?」

「・・散歩・・・・・・」

「そうだった。いい散歩コース案内してくれるんだろ?」

美凪はにこりと微笑むと祐一の前を行くように歩き出した。






つづく



こんばんわ(かな?)
最近更新ペースが落ちているせーりゅーです。
トリガー、いつも程度の長さでお送りいたしました。
後の展開バレバレっぽいですが・・・よろしくです


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あゆ「うぐぅ・・・・」
あゆ「うぐぅ・・・・・・」
あゆ「うぐぅ・・・・・・・・・」
あゆ「うぐぅ・・・・・・・・・・・・」
あゆ「うぐぅ・・・・・・・・・・・・・・・・」
あゆ「キャラが増えて、さらに出番が減りそうだよぉ・・・・・」
あゆ「うぐぅ・・・・」
あゆ「うぐぅ・・・・・・・」
真琴「あう〜っ・・・」
あゆ「あう〜っ・・・・」
あゆ「うぐぅ・・・・・・・」
真琴「あう〜っ・・・・・・」
あゆ「あう〜っ・・・・・・」
あゆ「あう〜っ・・・・・・・・」
美汐「今日はもう一人お持ち帰りね・・・(ニヤリ)」