「あなたの名前は?」

「沢渡真琴・・・・・」

「あなたの好きなものは?」

「肉まん・・・・」

「あなたの困った時のセリフは?」

「あう〜」

「あなたの敵は?」

「敵は・・・・敵は、相沢祐一。コードネーム”ラストリグレット”」

「なぜ、彼が敵なの?」

「憎いから。その名前を聞くだけで、どうしようもなく憎くなるから。」」






ビジネスホテルの1室。

じっと愛用のライフルを見つめる”沢渡真琴”。

あの距離からでも狙撃を見ぬかれていた。

だが、それくらいでないと、倒しがいがない。

相沢祐一。

その名前だけで、心が騒ぐ。

相沢祐一。

その名前だけで、体が熱くなる。

「ヤツは敵・・・倒さなくてはならない、敵・・・・・」

スコープを覗く真琴。

その向こうには祐一の姿が見えていた。




トリガーを引くのは  第5話




「で、その久瀬ってのに会ってみるつもりさ。」

祐一、名雪、栞は朝食のために喫茶かのんに来ていた。

ちなみに、名雪の朝食は名雪用イチゴサンデー。

栞はミルクを3倍入れたコーヒーとモーニング。

祐一は水とパンの耳である。

昨日のツケが回ってきた祐一。

佐祐理さんは容赦ない。

「それでどうやって会うの?」

イチゴサンデーをひたすらかきこむ名雪。溶ける前が勝負だ。

「あゆの話だと、ここの常連らしいけど2人とも知ってる?」

舞、佐祐理に聞く。

「よく来てくれますよ〜」

「佐祐理にちょっかい・・・・」

「ふぉーふぁんふぇふゅふぁ、ふぁふふぃしゃん」(そうなんですか?佐祐理さん)

口にパンの耳を押し込んでいた祐一。

「ただ佐祐理を、一緒に夕食でもどうですか?とか、クラシックはお好きですか?

 とか誘ってくれるだけですよ〜。」

「・・・毎日・・・・・」

「毎日なのか、舞?」

こくんとうなずく舞。

「だから、そのうち来る・・・・・」

などと話していると、カランカランとドアが開いて高そうなスーツで身を包んだ男が入ってきた。

「おはようございます、倉田さん。今日は朝からあなたにお会いしたくてまいりました。」

カウンター席、名雪の隣に座る男。

「久瀬さん、なにになさいます?」

「佐祐理さんの作られるものなら、なんでも。」

「はい、わかりました〜。」

笑顔の佐祐理。その笑顔がこの男をさらに虜にする。

ナチュラルでやる佐祐理はある種、罪な女であった。

「あれ?あなたは・・・・・・・・」

甘々なコーヒーを飲んでいた栞の手がとまった。

隣に座ってった男性を見ている。

「君は・・・・・・・・・・美坂栞さん!!」

急に立ちあがる久瀬。

「やっぱり、お見合いの相手の久瀬さんですね。奇遇です。」

栞は頭を下げてあいさつをする。

「で、俺が栞のボディーガードの相沢祐一。」

「私がそのパートナーの水瀬名雪だお〜。」

アイスがほっぺについてる名雪。ただの子供である。

「さて、ここに1通の手紙があります。」

祐一はとうとつにポケットから手紙を取り出した。

事前に栞から受け取っていた脅迫状である。

「さて、これは見てのとおり日本からスイスに送られたものだが・・・」

消印と宛名を指差す祐一。

「なんと、これには久瀬さん。あなたの指紋がついてたんですよ。」

「みたこともないですね。そんな手紙。私の指紋などついているわけないじゃないですか。」

「これが証拠です。大方どこかで手袋なしで触れたんじゃないですか?」

偽物の指紋を示す祐一。ハッタリもいいとこだ。

「いや、そんなハズはない。私は投函するまで手袋を・・・・」

自分の手で口を塞ぐ久瀬。

「やはりね。これを出したのは貴方ですね、久瀬さん。」

はったり、かまかけ成功の祐一。ひっかかる久瀬の程度も知れている。

「・・・・そうだ。私が出した。」

自分であることを認める久瀬。

「で、目的は?」

「見合いの延期だ。この手紙で不安になって、見合いを延期にして欲しかったのさ。」

「なるほどね。そのあいだに佐祐理さんを口説きおとすと。」

「ああ、そのつもりだった・・・・・・」

「佐祐理さんは魅力的だから。」

「ああ。」

「佐祐理さんの笑顔は素敵だから。」

「ああ。」

「佐祐理さんのほうが裸エプロンが似合うから。」

「ああ。」

見つめ合う祐一と久瀬。

「「同志よ!!」」

がっちりと交わされる、握手。

漢のロマンは果てしない・・・・・・・・・・

ビシッ!ビシッ!

2人の頭に入るチョップ。

舞の眼が「魔は討つ・・・・・」と言っている。

その左方では、栞が思いにふけっていた。

「そうですか、祐一さんはそういうのが好みだったんですね。」

ボソッとつぶやくと、

「佐祐理さん、エプロンを貸して下さい。」

立ちあがる栞。

「祐一さん好みに変身です♪」

暴走しはじめた栞のために、事件の真相が語られることが遅くなったのは言うまでもない・・・・









栞の暴走も収まった店内。

なぜか、女性陣はみなエプロンをつけていた。

別に裸ではないのだが・・・・・・・・

「で、久瀬さんは手紙を出しただけというのですね。」

「ああ、そうだ。」

「え〜、ということは襲ってきたのは違う連中ってこと?」

3杯目のイチゴサンデーの名雪。なぜか、久瀬の奢りになっている。

「一体誰が・・・」

ティーカップを優雅に置く佐祐理。

その途端、鳴り出す久瀬の携帯電話。

「ハイ。わかりました。」

久瀬は立ちあがる。

「すみません佐祐理さん。これから所用でいかなくてはなりません。名残惜しいですが、また明日来ます。」

出て行こうとする久瀬。

「久瀬さん!」

佐祐理がよびとめる。

「なんでしょう?」

笑顔でふりかえる久瀬。

「お会計おねがいします〜。あはは〜っ。」

「ツケでおねがいします。」

「わかりました〜。」

笑顔で久瀬を見送る佐祐理。

その久瀬の背中が寂しそうに見えたのは祐一の気のせいなのだろうか?

冷たい水を飲んで気をとりなおす祐一。

「栞、襲われはじめた頃に何かなかったか?何かを見たとか聞いたとか。」

「え〜〜〜とですね・・・・・・・・・」

考え込む栞。

「誰かが変なところから出てきたとか。」

祐一が思い出す材料を与える。

「そういえば、アイスを買った帰りに近道をした時、銃声を聞いたことがあります。」

「どこで?」

「その近道は誰かの私有地だったんですけど・・・・・そこまでは思い出せません。」

「誰か見なかったか?」

「猟銃を持ったおじさんをチラッとみました。」

記憶の断片からあの時の映像を引き出す栞。

「この中にいるか?」

祐一は懐から十数枚の写真を取り出した。

それを見ていた栞の手が止まる。

「この人です。」

栞が指差した人物。

それは某国の大物政治家であった。

「やはりな。わかったよ、栞が狙われている理由が。」

「ふぇ、ふぉ〜ふぁふぉ?」

久瀬のおごりということで、3杯目のイチゴパフェに突入の名雪。

栞もさりげなく、5杯目のバニラアイスを食べている。

久瀬のツケだけに容赦がなかった。

「食べながらしゃべるなよ。この事件の問題は、栞が見た人物にあるわけさ。」

「このおじさんですか?」

「そう、この人物は某国の大物政治家で、ハンティングが趣味というわけだが・・・」

「問題は”狩る”モノですね。」

感のよい佐祐理は気がついているようだ。

「そう、逃げまとう人間を狩るというやつさ。今回、栞はたまたまその現場に居合わせたらしい。

 で、連中それを見られたかもしれないということで、口封じに出たわけさ。」

「どうするの?祐一。」

こんどはちゃんと口にモノをいれずに発言する名雪。

「その組織自体は簡単さ。電話1本でかたがつく。昔の悪名のおかげでな。」

”Kanon”が解散された後、祐一は北川とともに2年ほど欧州で仕事をしたことがあった。

その折に壊滅した組織は数知れず。コードネーム”ラストリグレット”は恐怖の象徴でもあった。

「他になにか問題があるの?」

名雪が心配そうに聞く。

「まあ、ちょっと手間がかかることがあるだけさ。」

「そうなの?」

「ああ、そんなところさ。で、俺はこれからちょっと野暮用があるんで佐祐理さん、あとよろしく。」

祐一は立ちあがると店を出ようとする。

「祐一・・・・・・」

舞が祐一の肩に手を置く。

視線が交錯する。

「すぐ戻るさ。」

祐一はひらひらと手をふるとドアを開けて出ていった。







<つづく>


どうも、せーりゅーです。
いつも読んでいただき感謝です♪
あと1話でいちおうの区切りはつきます。
そのあとのことはまた考えようかな?
御意見・御感想まってます〜



御意見・御感想はこちらまで


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あゆ 「今回はボク達が担当です☆」
舞  「はちみつくまさん。」
あゆ 「とりあえず、たいやきでも食べましょう♪」
舞  「たいやきさん・・・・」
あゆ 「舞さんはたいやき好きですか?」
舞  「嫌いじゃない・・・・」
あゆ 「ボクはだいすきだよ☆」
佐祐理「あははーっ。佐祐理もすきですよ〜。」
あゆ 「うぐっ!佐祐理さんいつのまに・・・」
佐祐理「舞のいるところ、佐祐理ありです♪」
舞  「一緒・・・(ぽっ)」
あゆ 「舞さんのこの反応はもしや!・・・・・・・ボクも百合の世界は興味あるけど・・・・・・」
北川 「またこのパターンか!作者よ、どうせなら俺に一人くれ!!!!!」
作者 「いや。」
佐祐理「佐祐理も祐一さんの方がいいですし、今は舞のことが大切なので・・・」
舞  「3人一緒・・・朝も昼も夜も・・・(ぽっ)」
あゆ 「ボクも祐一君がいいな。」
栞  「当然です♪」
真琴 「君だれ?」
美汐 「私もその・・・・真琴と一緒なら(ぽっ)」
香里 「ごめんなさい、北川君。」
名雪 「祐一の方がいいよ。」
北川 「何故だぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」(ダッッシュ!!)
祐一 「俺が主役だからさ。」