「日本にそんな組織があったなんて・・・・・知らなかったわ・・・」
祐一を喫茶かのんにおろした北川は、荷物をとりに帰る香里を送っている途中であった。
「知らなくて当然だ。日本でも一握りにしか知らされていなかった、トップシークレットだったからな。」
「未だに信じられないわ・・・・」
「日本でこの組織のことを知っている人間は、俺達以外にはもういないはずさ・・・」
喫茶かのんに到着するまでに祐一が話したこと。
内閣調査室特務部、部隊コード”Kanon”のこと・・・・。
様々な国内外の事件に迅速かつ、的確に対応するための組織。
テレビや新聞で報道されないような、高官やその家族の誘拐事件。
さらにはテロ事件を処理したり、国外への裏の”平和協力”として派遣されたこともあった。
香里の記憶にまだそう古くはない某国の日本大使館の占拠事件。
政治犯として捕らえられた同志の釈放を主張する犯人。
結果、某国の特殊部隊の突入により解決したことになっていた。
が、事実は違った。
特殊部隊の突入は、単なるお芝居であったのだ。
その前にすでに片付いていた。
日本から送られた、たった4人の兵士によって・・・・・
驚きを禁じ得ない香里。
確かに、犯人グループは抵抗したために全員射殺されたと報じられていた。
その時の様子は、無論公開されることはなかった。
それもそのはずだ。
犯人の中には、舞によって切られた者もいたから。
そして、あの”東京が燃えた日”と呼ばれるものを引き起こしたのが・・・
何度か顔を合わせたことのある、やさしそうだった女性。
自分の友人の母であったことにも何も言えない香里であった。
トルルル・・・トルルル・・・・・
「あゆか?」
「なに?祐一君。」
「調べてほしいことがあるんだ。大至急、正確に。」
「どうしたの、祐一君・・・」
「なにが?」
「いつもと違うよ。」
「そう・・・・・かもな。」
「!!!」
あゆは心底驚いた。
知り合ってから、もう長くなるがこんな祐一の声は聞いたことがない。
こんなセリフは聞いたことがない。
「わかったよ。なんでも言って。」
「1つ目はKanonのこと。俺の知らないメンバーが存在したかどうか。
2つ目は・・・・・・・・水瀬秋子の行方。以前頼んだ時は、なにも出てこなかったけど、
こんどは何か出てくるきがするんだ。」
「他には?」
「今は・・・それだけでいい。」
「そう・・・・」
しばし沈黙が流れた。
「祐一君。」
「なんだ?」
「こんど一緒にたいやきたべにいこうよ。」
「ああ・・・そうだな。」
「もちろん祐一君のおごりだよ♪」
「は??」
「祐一君の好きな、たいやきクリーム入りがおいしい屋台を見つけたんだ。」
「それで?」
「紹介料だよ♪」
一瞬祐一は目を閉じた。
「そうだな、今回の依頼料込みでおごってやるよ。」
祐一の口調がいつものように軽いものとなった。
「うぐぅ・・・・・そんなに食べたら太っちゃうよ〜」
「それくらいの方が、あゆあゆはおいしそうでいいんだけどな。」
「!!祐一君のえっち!!!」
ツーツーツー・・・・受話器から静かに音が流れてきた。
ふっと、笑みを浮かべる祐一。
その音が祐一の心に染みた。
「ありがとう、あゆ・・・・・」
トリガーを引くのは
「ということで今日からよろしくね、名雪。」
「おねがいします〜」
美坂姉妹が名雪に頭を下げた。
傍らには、家から持ってきた大荷物が居場所を主張している。
「うん、香里と栞ちゃんなら大歓迎だよ♪」
二人にソファーへ座るように勧める名雪。
すでに祐一が座っていて、新聞を広げていた。
当然ながら祐一の隣にすばやく座る栞。
「祐一さん、何読んでるんですか?」
「スポーツ欄だよ。」
「へぇ〜、”G監督勇退!!”ですか・・・・・」
祐一にくっついて記事を眺める栞。
「祐一さんはG党なんですか?」
「わいは、トラファンや!!」
勢いよく新聞を置く祐一。
なぜか関西弁になっている。
「そやからな〜。あの監督が勇退するんわ、相当寂しいんや。」
「好きだったんですか?」
日本の野球にはあまりくわしくない栞。
「ああ、好きやった。もう1年・・・いや生涯監督やっててほしかったわ。」
「そんなにすごい人だったんですか?」
「そうや。あの人がいたからプロ野球はおもしろかったんや!」
「って、いいかげんにしなさいよ!!」
ドガッ!!!
100tと書かれたハンマーが祐一を襲った。
どこからとりだしたかわからないが、香里の通常装備となっているようだ。
「栞を変に染めようとしないでくれない?」
冷ややかな香里の視線。
「いつまでも栞にくっついてるし、間違った知識を教えようとしているし・・・」
どうやら香里はG党のようだ。
「ほら、栞。いつまでもそんなのにくっついてちゃだめよ。」
「だって〜」
妹の特権ともいえる甘え攻撃だ。
「やっぱり、祐一さんの事好きだから・・・あきらめられないから・・・・・・」
栞の瞳がすこしだけ真剣なものになる。
そのセリフに、一人の女性の表情が暗くなったことに気がつくことができたのは誰もいないようだ。
「栞・・・・・」
なにかに胸を刺されたかのような感覚を覚えた香里。
それがなんなのか・・・・・・考える余裕は彼女にはなかった。
「そう、ならがんばりなさい。ライバルは多いみたいだけどね♪」
姉として笑顔で激励をする。
「それに・・・・・・」
栞は赤くなってうつむいてしまう。
「それになんなの?」
「祐一さんは、私の初めての相手だから・・・・・・・・」
さらに頬が赤くなる栞。
香里の時がしばし止まる。
その表情が数秒後、間抜けなものになった。
そしてさらに数秒後、みるみるうちに顔が紅潮していく。
「あ・な・たという人は〜!!!!!」
両手にハンマーを装備した香里。
2刀流もいけるようだ。
さらにその後ろの名雪も、母親の形見の拳銃を装備しているようであった。
祐一の胸板に頬をすりよせ、幸せそうな表情の栞。
それが2人をさらに暴走させることとなる。
栞には全くそんなつもりはないのだが、彼女の一挙一動が油をそそぐ状況となっているのだ。
そして、本日最後の爆弾が投下されることとなった。
「あっ、私お茶入れてきますね。」
そう言うと立ち上がって、おもむろにワンピースを脱ぎ始める栞。
「し、栞!なにしようとしてるの!?」
「だって・・・祐一さんの好みは、裸にエプロンだっていってましたから♪」
バックから取り出したフリルのエプロンをうれしそうに見せる栞。
ぷっち〜ん・・・・・・
最後のリミッターが切れたようだ。
ぷっちーん・・・・・・
もう一人も方も切れたようだ。
パーティーが始まった。
主催:美坂香里・水瀬名雪
ゲスト:相沢祐一
観客:美坂栞
へたくそな名雪の射撃がインテリアを次々と破壊していく。
香里のハンマーが神速の早さで打ち込まれる。
栞の初めての人発言の誤解が解けたのは翌日の朝、祐一がみのむしから開放された時だった・・・・
<つづく>
あとがき
前後半のギャップが大きかったですね。
次もお付き合いしていただけるとうれしいです。
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あゆ「うれしいよぉ」
なゆ「どうしたのあゆちゃん」
あゆ「ボクの出番があったよ・・・・」
香里「そう、よかったわね。」
あゆ「香里さん、レギュラーの余裕?」
香里「私がいなくちゃ、このSSはなりたたないじゃない。」
あゆ「なんで?」
香里「私がいなくなったら、元ネタがわからなくなるでしょ。」
なゆ「確かに・・・・・・元ネタわかりにくいよね。」
あゆ「元ネタを引き継いでる部分ってほとんどないね・・・・・・」
香里「作者はいいかげんだから。」
なゆ「これの元ネタわかっていて読んでくれている人って何割くらいいるんだろう?」
香里「ここまでで、元ネタがわかりそうなフレーズが少ないから・・・私以外は・・・・」
あゆ「さりげなく自己主張してる〜」
北川「俺も自己主張するぞ〜!!」
香里「出たわね、ギャグキャラ。」
なゆ「色もん」
あゆ「おまけ」
北川「くっ、でも俺は君達よりも目立ってるからOKさ。」
なゆ「北川君、そんなこと言ってると彼女できないよ」
北川「ふふふ・・・・・SG漬けになった真琴ちゃんの面倒をみる俺・・・・そして芽生える愛・・・」
香里「無理ね。」
北川「この完璧かつ、壮大で、わんだほーで、すぺくたくるで、ろまんすなさ作戦のどこに欠陥があるというんだ!」
なゆ「だって・・・美汐ちゃんが黙ってないよ。」
あゆ「うん、そうだね。」
北川「ふふふ・・・・甘い、甘いよ諸君!その時は二人まとめてゲットさ!!!」
香里「無理ね。」
なゆ「やっぱりだめだと思うよ。」
あゆ「あの二人・・・・○○だしね・・・・・」
美汐「それは聞き捨てなりませんね。誤解してもらいたくないです。」
あゆ「美汐ちゃん、急に登場するなんて北川君みたい・・・・」
美汐「あんなのと一緒にしないでください。それと、私は別に女の子が好きというわけではないです。」
香里「ほんとに?じゃぁ・・・(ごそごそ)」
なゆ「ちょっ、香里やめてよ。」
香里「こう、前をはだけさせた名雪を見てもなにも感じないわけ?」
美汐「はい。」
北川「水瀬〜(ルパ○ダイブ)」
香里「お約束ね・・・・(どかっ!)」
あゆ「100tハンマーフルスイングできる香里さん・・・怖いよぉ・・・」
香里「で、本題に戻りましょう。」
美汐「ええ、私はみなさんが思っているようなキャラじゃないんです。ただ、真琴が好きなだけです。」
あゆ「それを○○っていううんじゃ・・・・」
美汐「私にとって、男も女も等価値なんです。」
なゆ「それもさらにアレだね・・・・・」
美汐「だから、香里さんにも佐佑理さんにも舞さんにも名雪さんにも秋子さんにも特別興味があるわけではないです。」
香里「なにかひっかかるわね・・・・」