注:この話は平安時代のことを少しは知ってないとわかりにくいかもしれません。
    名前の読み方は祐一中将(ゆういちの中将)です。ほかもそんな感じです
祐一中将は今、命の危機にあった。

目の前には、するどい切先が向けられている。

「ねえさん・・・・これはなにかの冗談だよね?」

なんとか笑いをうかべて、彼の姉と対峙する祐一。

「文・・・・・」

彼が姉と呼んだ人物は、なぜか烏帽子をかぶって男の格好をしていた。

そう、祐一の姉”舞中将”は男として育てられてきたのだ。

理由は情けないものだが、彼女の母が占いかぶれで、その占いに

「あなたの子供を男として立派に育てれば、親子ともども幸せに暮らせるでしょう。」

などと出たらしいのだ。そのため、最初に生まれた舞姫が、男として育てられることとなった。

今では、参議中将として参内している。

その男とは思えない(女だから・・・)美しい容姿は宮中の女官の憧れの存在であった。

さて、その舞中将がなぜ実の弟に刃を向けているのかというと、その理由は手にある文にあった。

「いや、その・・・北川少将がどうしても佐祐理ねえさんに届けて欲しいって・・・・・」

どうやら、祐一が友人の恋文を姉である佐祐理姫に届けたことを怒っているようだ。

この舞中将、とことんシスコンである。

参内しないときはいつも佐祐理姫といるし、佐祐理姫が体調を崩せば”物忌み”と称して、

公務を休んで看病にあたる。それほどなのだ。

よって、右大臣家の姫である佐祐理は婚期をすでに逸していた。

なぜなら、父が縁談を持ちかけようとすると、舞が視線でプレッシャーをかけるからだ。

佐祐理にしてもぜんぜん結婚する気もないようで、病弱の姫君ということで都では通っていた。

「約束・・・・・」

「ごめんなさい、ねえさん!だって北川少将が代わりに文を送ってくれるっていうから。」

ちなみに祐一は内大臣家の香里姫に懸想しており、そこの女房が北川少将の愛人ということもあり、

文を託したのだ。

「約束・・・・・・」

「まあまあ、いいじゃないですか舞。」

奥の対から佐祐理が歩いてきた。

「佐祐理・・・」

「祐一さんにも付き合いがあるんですから。」

舞をたしなめる佐祐理。

「ありがとう〜、ねえさん。」

祐一は佐祐理に抱きつく。

よしよしと祐一の頭をなでる佐祐理。

ちなみに佐祐理は極度のブラコンであり、それもまた佐祐理の結婚の妨げとなっていた。









さて、その日参内した舞は帝と対面していた。

今生の帝は名を”久瀬帝”という。

彼は舞のことが大のお気に入りで、よく読んでは話をしていた。

「そういえば中将。うわさの佐祐理姫は結婚はせんのか?」

「まだ・・・・・・」

「そうか、おしいのう・・・そちの姉だけに美女であろう。婚期を完全に逸する前に入内・・・」

帝が言葉を終える前に、舞の視線が彼を襲う。

「じょうだんだ。病弱な方に内裏はつらかろう。」

帝はこうして舞の反応で遊んでいるのだ。

「ところで中将は、妻はとらぬのか?」

当然それはマズイので、父である右大臣はすべての話を断っていた。

「おしいのう、左大臣がぜひ二の姫の婿に欲しいといっておったのにな。」

「・・・・・・」

舞は答えない。

「そうなると、佐祐理姫を斎藤少将の北の方に迎えたいと言っておったから、いまごろ申し込んでる

 のではないのかな?」

これは確かな話で、左大臣はたった一人の跡取には有力な家の姫を妻にしようと躍起になっていたのだ。

舞はその話を聞いてあせってしまったのでつい、

「佐祐理を嫁に出すくらいなら、私が・・・」

と言ってしまった。

しかし、その発言を帝に急用があって部屋に入ろうとしていた左大臣が聞いていた。

「なんですと!我が二の姫を妻にしてくださると言うのですか!これはめでたい!!」

現れた左大臣は、急用も忘れ飛んでいった。





噂は一瞬で広がった。

左右大臣家の婚姻。

今まで妻を娶らなかった舞中将の結婚ということで、すでに決まったかのようなさわぎだった。

この騒ぎに、舞中将をかわいがっている院まで出てきてしまったのだから、

もう止められなくなってしまった。右大臣は顔面蒼白。寝こんでしまった。

「舞〜、大丈夫ですか?」

右大臣家の一室で舞・佐祐理・祐一による会議が開かれている。

すでに父親はつかいものにならない。

「まずいよな。女人が男になりすまして参内していたなんてのがバレたら・・・・」

祐一の表情も暗い。当然、縁者すべてにその罪は問われる。

「なんとかする・・・・」

「なんとかって、出家でもするしかないじゃないか!」

祐一のいうとうり、事態は出家以外におさまらないところまできている。

婚姻事体はもう止められない。

「とにかく、行く。」

舞は今夜左大臣家に行く決意を固めるのであった。






そしてその夜。

左大臣家の宴に参加していた舞。

宴も終り宿をかりるということで、二の姫の部屋に案内されていた。

襖を開けて中に入る舞。

そこには布団の上に座っている二の姫がいた。

「はじめまして。」

部屋に入ると舞は短くあいさつをする。

「あう〜、はじめまして・・・」

二の姫は緊張しているようであった。

彼女の正面に座る舞。

どちらも言葉を発しない。

「あう〜中将様、何かするの?」

しばらくして姫が口を開いた。

「美汐ねえさまが、中将様に任せれば大丈夫だからって言ってた。」

「とりあえず、寝ればいいと思う・・・・」

「じゃあ寝ましょうか、中将様。」

先に布団に入る姫。

舞もそれに続く。

「ねえさま以外の人と寝るなんて、久しぶりです。」

「そう・・・・」

しょっちゅう佐祐理と寝ている舞。

「ねえさま以外だと、乳母くらいかなあ?」

そういうと、姫はあくびをした。

もう、時間は遅い。

「中将様おやすみなさい・・・・」

目を閉じてすやすやと眠る姫。

そのあどけない寝顔をじっと見ると、舞も眠りに落ちていった・・・・・







とりあえず、書きました。
続きは今のところ書く気はないです。
というか、設定がわかりにくくうけいれられにくいでしょうから、
つづけるのは危険かな・・・と思いまして。
もとネタわかる人います?