あ〜あ〜あ〜…コホン


 るね〜っさ〜んす♪ 情熱〜♪
 
 ♪ボクの………この手が光って唸るよっ!! 

 邪魔なヒロイン共を倒せと輝き叫ぶよっ!!!



 …って、えへへ…失敗失敗。つい本音がでちゃったよ。
 ところでコレ、リハだよね?
 えっ? 本番!? 
 うぐぅ………















「は〜い。3匹で240万円だよっ☆」

「えへへ…。はい、60万円のおつりだよっ☆」

……ボクは今、たい焼き屋さんでアルバイトしてるんだっ。
話せば長くなるんだけど………






………食い逃げがバレたんだ。






『こらぁ!! 捕まえたぞ! この食い逃げ娘め!!』
『うぐぅ〜。はなしてよ〜』
『ほら。金払え、金』
『うぐぅ…』
『無いのか? 金が無いのに食い逃げしたのか?』
『…お金が無いから食い逃げって言うんだよ☆』
『なんて娘だ!! その腐れた根性叩き直してやるからちょっと来い!!』
『うぐぅ〜〜〜〜〜〜!!!』

…という訳でボクは今たい焼き屋さんで働いてるんだよ…

『仕方ないから身体で払ってもらうぞ』

とか言われたときはどうなる事かと思ったけど…働くって意味だったんだね。
てっきりボクがあんまり可愛いから手篭めにされちゃうかと思ったよ…

そんなこんなでたい焼き屋歴も3日目なんだ。

今じゃこの店の看板娘☆
秋子さんに教えてもらった特製たい焼きはいつも売り切れだよっ☆



…あっ、またお客さんが来たっ。

「いらっしゃいませ〜」
「ひさしぶりね」
「こんにちはっ、あゆちゃん」
「あ、秋子さんに名雪さん」
「ふたつ頂けるかしら」
「うんっ!」

えへへ…この二人には特製謎ジャムたい焼きをお見舞いしてあげるよっ☆
なんてったってコレは食べた人がみんな白目を剥いたり、泡を噴いたりして美味しがるんだっ☆
…その時なぜかおじさんに怒られたけど…なんでだろ?
秋子さんの料理だから美味しいに決まってるのに…
とにかくっ、二人とも永遠を見せて…違う違う、ボクの料理の腕前を思い知らせてあげるよ。

「はいっ! 特製たい焼きふたつ、お待ちぃ〜!」
「あら、私が教えてあげたたい焼きね」
「うー、嫌な予感がするよー」
「さ、冷めないうちにちゃっちゃっと食ってくんなっ」
「あらあら、すっかりテキ屋さんね」
「うー…」

…二人同時にたい焼きさんにかっぷんちょ!
どう? どう? ボクのたい焼き、美味しい?

「う〜ま〜い〜ぞぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」

  ピカァァァッ!!! シュゴゴゴゴゴゴォォォ………………

あ・秋子さん!? どうしたのっ!? 眩いばかりの光が口の中からあふれ出てるよっ!!!

「…ぐすっ……ぐすっ………ゆきうさぎ……しんじゃった………」

泣くほど美味しいんだね、名雪さん。
どこか別のトコロへ逝ってる気がしないでもないけど、ボクの気のせいだよねっ☆

「この焦げ付いて口当たり最悪な皮と中に入った香り高きジャムの崇高なるハァ〜モニィ〜!!!
 素晴らしいわっ! こんなたい焼き今まで食べたことないわっ!!」

えへへ〜、そんなに誉められると照れちゃうよ〜。

「………っ! はぁ…はぁ………うそだよっ! ぜったいイケてないよ!!」

あっ、名雪さんが帰って来た。…でも、それってどういう意味?
…ボクわかんないや。

       ・
       ・
       ・

「ねえねえ、ボクのたい焼き、美味しかった?」
「ええ…、まさかあゆちゃんがこんなにお料理上手になってるなんて思わなかったわ」
「えへへ…」
「ぜったい美味しくないよ…」
「名雪はちょっと黙ってなさい」
「うー…」
「ところであゆちゃん」
「何? 秋子さん」
「あなたの料理の才能をこんな所で埋もれさせておくのは勿体無いわ。
 どう? 『秋子料理会』に入る気はない?」
「み・認めないよっ! そんなのっ」
「黙りなさい…名雪。どうかしら、悪い話じゃないと思うけど…」
「え…」

どうしよう…。
だいたい秋子料理会って何なんだろう…? 怪しさ核爆発だよ…
それにたい焼き屋のおじさんには借りがあるし………






………でもいいよねっ☆
3日も働けば今までの食い逃げ分もチャラだよ。

「うんっ、いいよっ。秋子料理会に入ってあげる」
「決まりね。じゃあ早速本部ビルに行きましょう」
「あ、ちょっと待ってて…」



『たいやきやのおじさん、いままでホントにありがとう。
 ボクはおじさんのかんだいな心にとっても感射しています。
 でもボクは新しいしごとを見つけました。もうお列れです…。
 バイト代はここのたいやきをぜ〜んぶいただきだよっ。
 じゃあもう深さないでね☆ うぐぅ〜〜〜っ☆
                         あゆより 』



置き手紙はこんなもんでいいかな?

「じゃ、秋子さん、行こっ!」
「あらあら、大きな荷物ね…」
「…絶対に認めないよ…」












  みすたぁ〜〜〜「「「鍵っ子ぉ〜」」」
      うぐぅ〜〜〜!!!












「さあ、着いたわよ」
「え…、ここって…」
「本部ビルよ」
「でも、秋子さんの家…」
「なにかしら? あゆちゃん」
「な・なんでもないよっ」

秋子さん…顔は笑ってるのに目が笑ってないよ…

       ・
       ・
       ・

「さ、ここがあゆちゃんの部屋よ。
 これからはここで秋子料理会の発展のために精進してちょうだい」
「わあ〜、広い部屋だねっ」
「ちょ・ちょっと待ってよっ! わたしはそんなの許さないからねっ!」
「名雪…」
「わたしは秋子料理会の一員になるのに16年かかったんだよっ。
 それなのにあゆちゃんはすぐに………そんなのぜったい納得いかないよっ!」
「あらあら…、じゃあどうすればいいかしら…」
「あゆちゃんとわたしでサシの味勝負をさせてよ。
 これで負けたらわたしもおとなしく引き下がるよ」
「名雪はこんな事言ってるけど…。どう? あゆちゃん、やってみる?」
「うんっ! 望むところだよ☆」
「じゃあ決まりね」

ふふーん。名雪さんのくせにボクに勝負を挑むなんて身の程知らずもいいところだよ。
負けた後、せいぜいけろぴーに泣き付けばいいさっ。
そしてボクは祐一君と幸せな老後を過ごすんだ…エヘ☆

       ・
       ・
       ・
       ・
       ・
       ・

『Allez Cuisine!!!
 さあ! 今週もやってきました味勝負!! 月宮さんの料理会入りを賭けた一戦!!!
 実況は私、不肖相沢祐一が務めさせていただきます。
 そして解説は我が料理会が誇る味女王! 秋子さんです!!!』
『よろしく』

祐一君…キミもいろいろと大変なんだね………

『なお判定に公平を期すため、審査員には通りすがりの方をお招きしております。
 お嬢さん、よろしくお願いします』
『わ、カメラどこどこ? わ〜い浩平君、見てる〜?』
『…さ・さ〜て…今回のテーマは………スパゲッティだぁーーー!!!』
『わたしはスパゲッティにはちょっとうるさいよっ』
『そ・そうなんですか…。頼もしい事です…』

ふっふっふ…スパゲッティ? そんな料理ボクにかかれば朝飯前だよ。
茹でてミートソースを乗せるだけだよね? ホラ簡単☆

『…では気を取り直して始めます………
                   味勝〜〜〜負!!!』

       ・
       ・
       ・

『さ〜あ、両者ともスパゲッティを茹で始めました!』
『ふふふ…あゆちゃんは『イタリアンの名雪』に対してどんな料理を作るのかしら…』



「あゆちゃん…だてにイタリアン名雪なんて呼ばれてないところを見せてあげるよっ!」

〜イタリアン名雪のテーマソング〜

 チャラッチャッチャチャ〜〜〜♪
 
 ねこ大好き名雪ぃ〜〜〜♪

 (台詞)
 あゆちゃんには黙っててね…実はわたしがメインヒロインなんだよ…
 それとこの歌、イタリアンと関係ないお〜




………みじかっ! しかも語呂わるっ!!
だいたいボクがメインヒロインじゃないってどういう事!?
名雪さんのくせにちょっと調子に乗り過ぎだよっ!

       ・
       ・
       ・

『さてさて…なんだか実況するのもアホらしくなってきました』
『祐一さん…それを言っては…』
『祐一君ってなんだか浩平君に似ているね』
『…お嬢さん、会話が噛み合ってませんよ…』

       ・
       ・
       ・

「できたっ!!!」
「完成了ーーー!!!」

『やっぱり浩平さんとはお付き合いを?
 …って、私達が話してる間に二人共料理が出来上がったようです!』

「わたしの料理は…『冷製イチゴサンデースパ』だよっ!」
「うぐぅ…ボクはミートソース………」

『おっとぉー? 月宮さんの料理は…これは本当にミートソーススパゲッティなのかー!?』
『ちょっと茹でる時間が長かったのかもしれませんね…。ほとんどうどんになってます…。
 しかもソースまでいっしょに茹でてますよ…。初心者以前の問題ですね…』

「あーあー、茹で過ぎだよ。そんなスパゲッティが美味しいわけないよ。
 この勝負…わたしの勝ちだね」
「そんなことないもん! おいしいもんっ! 名雪さんは黙っててよ!」
「あゆちゃん…コレ料理?」
「黙れやコラァ………はっ、と・とにかく………さあっ、食べてみてよっ!!!」

「うん、いただきますだよ」

       ・
       ・
      (十秒)
       ・
       ・

「ごちそうさま、どっちもすごくイケてたよ」

「「早っ!!!」」

『私、なんだか見てはいけないモノを見てしまったような気がします…』
『祐一さん、レディーに失礼ですよ』
『す・すいません…。ゴホン、さあ! 審査員のお嬢さん、判定をどうぞ!!!』

「ボクだよねっ!」
「わたしに決まっているよっ!」

「………わたしはこの皿を選ぶよ」

…え? ボクのお皿…

「や・やったよ〜〜〜☆」
「えぇ!? そんなの絶対おかしいよ! 審査員のお姉さん、裏金掴まされてるんじゃないのっ!?」

「あーそうそう、わたしはスパゲッティにうるさいって言ったけど、
 味じゃないんだ、量にうるさいんだよ」

「あ、そうか。ボクのは茹で過ぎて延び延びになってたからねっ」
「…こ・こんな勝負なんて無効だよ! 味より量なんて絶対変だよ!!」

「往生際が悪いわよ、名雪…」

「お・お母さん…」
「あゆちゃんはね、この女の子の好みを見抜いてあんなスパゲッティを作ったのよ」

え………? う・うんっ。そうだよっ! そうそう! さすが秋子さんは分かっているよねっ!

「名雪…あなたは自分の技術に溺れるあまり料理人にとって一番大切なもの…
 そう、食べる人への心配りを忘れてしまっていたのよ!」
「がが〜〜〜ん」

ふふふのふ。やっと自分の愚かしさが分かったようだねっ☆
しょせん名雪さんは脇役なんだ☆
メインヒロインであるボクには敵わないんだよ。

「そっか、そうだよね…。わたしが負けたのも当然だよね…」
「…名雪さん………」
「バカにしてごめんね。あゆちゃんはスゴイ料理人だよ。これからもよろしくねっ」
「うんっ!」
























「………とでも言うと思ったかボケェーーー!!!
 さんざんボクをコケにしておいてっ、いまさら謝っても遅いんだよっ!!!」
「う・うな〜;;」

「あらあら、すっかり仲良しさんね」

「「んな訳あるかぁーーーーーー!!!」」











〜次回予告!!!

「お〜ほっほっほっほ…あたしの名は美坂香里!」
「妹の栞ですぅ〜」
「「人呼んで『北のどんぶり姉妹』!!!」」
「え? 姉妹どんぶり?」
「「違うわぁーーー!!!」」

       ・
       ・
       ・

「なんてコンビネーション…
 こうなったらわたし達も………、行くよ! あゆちゃん!」
「うんっ!」
「「ごっはんがごっはんがススムくんっ♪」」

       ・
       ・
       ・

「ところで…最初から気になっていたんだけど…栞ちゃんって………」
「え………!? コ・コレはお姉ちゃんが………」
「そうよっ! どうせあたしが全部悪いのよっ!!」
「あ…、逆ギレした」

       ・
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次回 ミスター鍵っ子『登場!! 北のどんぶり姉妹!!!』
…ご期待ください…

「今宵の虎鉄は血に餓えているよっ☆」




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ということで鍵っ子らふいん氏の一作、いかがでしたか?
個人的には予告にある姉妹どんぶりどんぶり姉妹が気になりますが・・・・続きはかかないらしいです・・・・
続きを読みたいアナタ!
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