晴れた空から…

  ポツッ… ポツッ……
 
大粒の雨が落ちてきた…

「あ…」
「ぐぁ…」

名雪との買い物帰り、俺達は運悪く天気雨に巻き込まれた。



  ザーーーーーーーーーーーッ


「祐一っ。早く早くっ」
「名雪っ…!ちょっと待て…」

二人して近くの木の下まで走る。
俺の両手には米袋が二つ。
名雪は野菜などが入った買い物袋を持っているだけだ。

「祐一、だらしないよー」
「はぁ…ハンデ…あり過ぎだぞ…はぁ…」

名雪から大幅に遅れて木の下に滑り込む。

「晴れてるのに雨が降ってる…変な天気…」
「はぁ…はぁ…そうだな………」





狐の嫁入り………


俺はあの丘での出来事を思い出していた………


二人だけの結婚式…

茜色に染まる空の下、ヴェールをかぶった真琴…

綺麗だった……純粋に綺麗だと思った…




でも…


大切な人…


真琴は雪が融けるように俺の腕の中からから消えてしまった……


分かっていた…


分かりたくなかった…


心のどこかで信じていたくて…


真琴はまた戻ってくるって信じていたくて…


いつかまた………







  ザーーーーーーーーーーーッ


「雨…やまないね…」

名雪の言葉が俺を現実に引き戻す…

「なあ、名雪」
「何?」
「『狐の嫁入り』って知ってるか?」
「うんっ、知ってるよ。確かこんな天気の日に狐が…あっ…」

得意そうに答えた名雪が途中で言葉を切る。
たぶん俺に気を使ったんだろう。

「ごめん…祐一…」
「気にするな。俺の方から聞いたんだから」
「真琴…きっと戻ってくるよね…」
「ああ…そうだな…」



…しばらくの間二人は無言だった……



「あ、雨…やんだよ」

こういう雨は止むのも早い。
濡れたアスファルトが太陽を反射させて光の海のようにも見える。

「よし、じゃあ急いで帰るか」
「うんっ」











……その時……



 …ちりん…



聴き覚えのある鈴の音。


振り返ると…


光の海の中に…


まるで光のヴェールをかぶっているみたいに…


ひとりの少女が立っていた…


涙か雨か分からないほど…


顔をくしゃくしゃにして…




「ただいまぁ…」




俺は真琴に背を向けて…


「遅いぞ…」


それ以上言葉を続けても…

真琴の顔を見てしまっても…

涙がこぼれてしまいそうだったから………


「お帰り、真琴…」

名雪はすでに泣いていた。


「あうー、祐一…?」


なつかしい声…

いとおしい声…


俺はたまらず、真琴を抱き締めていた………


「お帰り………」


そう言った俺の目からは大粒の涙が流れていた………





      ・
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「夕ご飯の材料、買い足さないといけないね」
「あうーっ、真琴も行くーっ」
「ちょっと待て。俺はこの荷物を持っていくのか?」
「あたりまえだよ」
「真琴が持ってあげよっか?」
「お前には無理だ」
「あうーっ、すぐ子供扱いするーっ」
「ふふふっ、お母さんに肉まん作ってもらわなきゃね」
「肉まんーーー!!!」
「まったく…お前は…」



     ぜんぜん……

   かわってないな…………





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完全にマコトスキーと化していたあのころが懐かしいな・・・・・。
いまでは、香里様一直線ですからね。
さて、ギャグ作家としてのイメージが強いであろうらふいん氏の
異色(?)な作品です。
・・・・これ書いている人が次にアップする北川〜を書いているんですからねぇ・・・・
さすがです。
ただ、彼の本質はこういう作品にあるのではないのかと私は思っています。
しおりんおもしろいけどね(笑)



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