当たって、守護月天! 7777Hit記念


「太助様、あれはなんですか?」

日曜の午後。

太助と夕食の買い物に出かけていたシャオは人だかりを指差した。

「あれは、宝くじをかってるんだよ。」

列の前の売り場には”1等前後賞あわせて3億円!”といったのぼりがたっていた。

「その”宝くじ”ってなんですか?」

「う〜んそうだなぁ・・・・・みんなが夢をのせるチケット、かな。」

最近は大分ましになったのだが、いまいち金銭感覚にうといシャオに対して彼はこう答えた。

さすがに「当たれば、マーボー茄子一生食べられるお金が手に入る」なんて

情けない説明はできなかった。

「夢を乗せる・・・・ですか・・・」

「そう。当たったらなにに使おうか?家を建てる、車を買う、旅行に行く・・・いろいろさ。

 なにをしたいか考えるだけでも楽しいだろ?」

シャオはその夢への窓をじっと見ていた。

その瞳を見た太助は意を決すと、シャオの手を引いてその列に加わった。

「太助様?」

「俺も買うから、シャオも買ってみなよ。」

テレながら言う太助。

視線がシャオの目に向いていない。

さすがに手を握っているのが恥ずかしいらしい。

そんな太助を見たシャオは素直に彼の言葉に従った。



その帰り道。

先ほど買った10枚の宝くじをじっと見ながら帰るシャオ。

「どうした、シャオ?」

「あそこに並んでらしたみなさんが、この”宝くじ”にどんな夢を乗せているのかな、と思いまして。」

「そうだな、みんなどんな夢をのせているんだろうな。」

飛び行くカラスの群れを見上げる太助。

「太助様はどんな夢を乗せたのですか?」

「えっ!?俺は・・・・」

赤くなる太助。

もちろん彼にも夢(妄想)が渦巻いていた。

1等とはいわない、10万もあれば・・・・

シャオと一緒に旅行。

シャオと一緒に散歩。

シャオと一緒に食事(太助様、あ〜ん・・・とかたべさせてもらったり)。

シャオと一緒に温泉・・・・・・・

そんな太助から熱き青春の血潮が噴出した。

「太助様!大丈夫ですか!?」

シャオが慌ててハンカチを太助の鼻に当てた。

「ありがとうシャオ。大丈夫だよ。」

ポケットティッシュを鼻につめた太助。

「びっくりしました・・・」

胸をなでおろすシャオ。

太助の肩に乗っていた離珠も同じ動作をしていた。

「ちょっと魂が熱くなっただけだよ、気にしないで。」

錯乱していた太助は、たかしのようなセリフを言いながら、自分の妄想を消そうとしていた。

「シャオはどんなこと考えたんだい?」

自分にまた戻ってくる前にシャオに振る太助。

「私ですか?それはですね・・・」

何かを言おうとしたシャオであったが、途中で言葉を止め、一呼吸おいてから、

「それは秘密です♪」

と人差し指を口元にそえて言った。

めずらしいな、シャオが隠し事するなんて、と太助は思ったが、同時にそのしぐさにくらっときていたりもした。

「翔子さんが教えてくれました。大切な願いは人にはあまり話さないほうがいいって。」

太助の頭の中に翔子の笑っている顔が浮かんだ。

「そうだな、当たった時にでも教えてくれよ。」

シャオは笑顔で返事をした。





そして時は流れて・・・・・・・




「シャオ、今日の朝刊に宝くじの当選番号が載っているはずだよ。」

夏休みでもあり、太助はゆったりとした朝を満喫していた。

「すぐに新聞をとってきますね♪」

どたばたと玄関へ向かうシャオ。

その足音の大きさが、彼女の期待の大きさなのだろう。

「太助様、持ってきました。」

新聞を差し出すシャオ。

「じゃあ、俺も一緒にみるから、もってくるよ。」

椅子から立って、部屋に向かう太助。

「シャオも持ってこいよ。」

「私はここにあります。」

ポケットから取り出すシャオ。

どうやらいつも持っていたらしい。

ちょっと待っててと言い、机の引出しから目的のものを持ってきた太助。

台所に戻ってくると、シャオが新聞の1面とにらめっこしていた。

「そんなにじっとみてたら、新聞に穴があいちゃうよ。」

冗談交じりに言う太助。

「そんな、困ります〜」

本当に困った顔をするシャオ。

その顔を見てクスリと笑った太助は新聞を広げる。

「あった、これだな。」

新聞の一角に載っている当選番号を指差す太助。

シャオの視線が一瞬そこに向くが、すぐに離れる。

「どうしたんだ?」

「いえ・・・なんだか見るのが怖くて。」

「大丈夫だよ。それに見なくちゃ、当たってるかわからないだろう?」

「そうですね。太助様、一緒に見てくださいね。」

1等から順にみていく太助とシャオ。

当然、そんなものあたってない。

次々と見ていくが、かすりもしない。

太助の運は、シャオと出会えたことでほとんどなくなっているといえる。

まあ、それだけの幸運だったわけなのだが。

というか、3億とシャオちゃんのどちらがいいか?

そう聞かれたら、彼は「シャオ!」と答えるであろう。

そう答えなければ、彼はきっと世の中の漢達に滅殺されるであろうことは想像に難しくない。

そんなわけで、彼は宝くじで1等が当たるよりも大きな幸運を手に入れたわけなのだから、

これ以上のことを望むこと自体、ばちあたりともいえる。

というか、彼は十二分に幸福だ。

よって、彼がこれから先にくじなどはまったく当たらないハズである。

さて、結局3000円も当たらなかった2人であったのだが、シャオの表情は明るかった。

「うれしそうだな、シャオ。」

「はい。だってちゃんと当たってくれたんですから♪」

シャオの手には300円の当たりくじがあった。

10枚(まとめて)買えば必ず1枚当たるやつである。

そのことを太助は説明しようと思ったが、あえてやめた。

シャオがあまりにもうれしそうだったからだ。

「それで、シャオの夢って何だったんだ。」

「私の夢は・・・いつまでも大好きな人達と一緒にいたいです。

 宝くじが当たったから、きっとその願いはかないますよね。」

どうやらシャオは太助の説明をまともにうけとめていたようであった。

太助はやさしい瞳でシャオを見つめた。

「ああ、シャオがそう望んでいれば、きっと願いはかなうはずだよ。」

その言葉は太助が自分自身に言ったものかもしれなかった・・・・・。




<おわり>



ついに7777Hitを数えることとなりました。
これもみなさまのおかげです。ありがとうございました。
さてこのSSは、休養中にとったアンケートを元につくりました。
アンケートにご協力いただいた方々、いかがでしたか?
月天は初めてなので、自分でもOKかどうかわかりません。
これからも機会があれば、月天のSSも書きたいを思います。



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