第一話
仲良し4人組み!

 ザワザワザワ…。

ごく普通の宿屋のロビーに、多くの人が入ってきた。

時間で言えば、今は昼である。

ここのロビーは食事どころなので昼になると、

宿泊者以外の人間もここに食事をしに来たりする。

浩之とあかりもそんな人間だった。

「混んでんなぁ…」

 そう浩之はぼやいた。

黒い髪の見た目普通の少年である。

まりにも簡単な布の服と布製のマント、

戦士としてはあまりにも軽装だったが、

浩之は動きやすいこの装備が気に入っていた。

「ま、しょうがねぇけどな」

 そういってテーブルにつき、柄と鞘の装飾が見事な剣を立てかけた。

「浩之ちゃん、何食べる?」

 そう聞いてきたのは幼なじみにして、

冒険仲間のあかりだった。

 ふと、浩之はあかりを見た。

白いローブ着込んでいる、いわゆるシスターである。

フードがついてがいるが、今ははずしていた。

フードをはずしているせいできれいな赤い髪と、髪につけているリボンが見える。

「なんにしようかねぇ…。ま、金もねぇし、パンとサラダでいいや」

「じゃ、私もそうしよ」

「すんませーん、注文お願いしまーす」

 すぐに、ウェイトレスが来て注文を聞く。

待つこと約10分、割とすぐに食べ物は来た。

「いただきまーす」

 あかりはそう言って、サラダを少しづつ食べ始めた。

浩之も少しづつ食べ始める。

 すると、思い出したようにあかりが口を開く。

「志保、まだかなぁ?」

「もう少し時間がかかるだろ?

仕事はそう簡単には見つからねぇよ」

「うん、でも変なの見つけてこなければいいけど…」

「この前のようなしょうもないものだったら、

即座にあいつだけバイト決定」

「あはは…」

 そう、この前の仕事はひどかった。

過去の大人物とやらが洞窟に隠した財宝を

取って来いという仕事だったが、そのありかが書かれた紙が

子供時代にやった宝捜しの遊びに使ったものだった。

結局見つかったのは、なんか良くわからないただのガラクタ。

依頼人は財宝で会社を立て直そうとしてたらしく、

ガラクタが見つかった時点で会社倒産決定。

だいたいガキの字と大人の字の見分けがつかないのがおかしい。

こっちはちゃんと忠告したのに無視しやがって…。

そのせいで俺らは命の危険にさらされたんだ。自業自得だ。

 そんなことを考えながら、

「ま、そのうち戻ってくるだろ。

その前に雅史が戻ってくるんじゃねぇか?」

と答えた。

 その時、宿屋の扉から1人の少年が入って来る。

「あ、本当だ」

 あかりが感心したように、浩之を見る。

「おう、雅史」

「ごめん、遅くなって。でも、良いものが手に入ったよ」

 雅史と呼ばれた少年はさわやかな笑顔でそう言った。

紫の宝玉をところどころにつけた、銀の鎧を装備し、

小ぶりの剣を腰に携えていた。

魔法剣士の装備でも結構上のレベルである。

「ほら、この魔法玉」

 雅史は鈍く光る青い玉をつまんで浩之達に見せた。

「これ、最高級の魔法玉じゃない?」

「魔法玉ってなんだ?」

 浩之は勉強嫌いなので、この手の類の道具は良く知らなかった。

良く言えば戦士ということで、そちらの方を優先したと言うことだが…。

「前に教えた記憶があるんだけどなぁ…。

魔法玉って言うのは魔法を使うときに使用する

精神力を肩代わりしてくれる道具だよ」

「…えらく説明的な口調だな…。

んで、どこで見つけたんだ?」

「岩の中に埋まってたんだよ。

だから、浩之たちには先に行ってもらったんだ。

時間がかかりそうだったからね」

「良く見つけられたな」

「なんか、あるような感じというか感覚があったからね。

岩を慎重に爆発させて取ったんだ」

「魔法の使える人間はそういうのがわかるのか?」

「うん、でもなんとなくなんだけどね」

「ふーん、そういうもんか…」

 浩之はなんとなく感心して、再び食事にありついた。

「でも、良い魔法玉が見つかって良かったね。

あっ、雅史ちゃんは何食べる?」

「僕はいいよ。来る途中、軽く食べてきたから」

「そう?」

 あかりも再び食べ始める。

 志保という仲間も含め、浩之たちは旅をしていた。

目的と言う目的はあまりない。ただ、浩之が

少年時代に預かった剣を持ち主に返しに行くと言うだけである。

この二人はそれについて来ただけなのだ。

一応、名目はあるが…。

 浩之はふと、剣を見つめた。

そんな行動を目ざとく見つけたあかりが聞いてくる。

「どうかしたの?浩之ちゃん」

「いや…、いつになったら見つかるんだろうなと思ってな」

「その剣の持ち主のこと?」

「ああ…。使わせてもらってはいるけど、

俺の持つべき剣じゃねぇよ、これは」

「すごい剣だよね、それ」

「そうだな…」

(気の向くままの旅ってのもいいもんだ。

ま、若いんだから、今のうちにいろいろなことをしとかねぇとな…)

 浩之はそんなことを思いながら、志保ーー仕事ーーを待っていた。

その時、1人の少女が自分たちのテーブルに向かって歩いてくる。

髪は茶色でショート、頭にバンダナを巻いている。

歩くたびに腰につけている様々な鍵と短剣が

チャラチャラと音を立てていた。

典型的な盗賊の格好である。

「あれ?志保じゃない?」

「そうだね、志保だよ」

 浩之はようやく戻ってきたかという顔になる。

そして、志保が自分たちの前に立った。

うつむいており、いつもの明るさが見えない。

「志保?」

 あかりが志保に向かってしゃべる。

するとようやく志保は口を開いた。

「ゴメン! 仕事なかったわ♪」

言ってることがあまり良くないことの割に明るい口調だった。

「いや〜、あたしも一生懸命探したんだけどさぁ!

どこもかしこも仕事はないないなんていうもんだから、

結局、仕事が見つからなかったのよ〜♪

でも、これは世の中が不景気だからであって、

一生懸命探した私のせいじゃな…いわ…よ、ね?」

「ほう…、なるほど…」

 浩之は自分の道具袋の中から、一冊の本を取りだし、

乱暴に志保に押し付けた。

「な、何よ、コレ…?」

「念のため、おまえのためだけに買ってきたバイト専門の雑誌」

「え…?」

 志保が怪訝な顔をする。

「今日から仕事が見つかるまで、おまえだけバイトだからな」

「え〜と…」

 志保の顔から大粒の汗がひとつ流れ落ちる。

「何個かもうすでにお前名義で申し込んでおいたから安心しろ。

時給1500円というすばらしい力仕事だ」

「え、え、え〜〜〜〜〜〜〜〜?

ちょっと!なんで〜〜〜〜、どぉしてよぉ〜〜〜〜〜〜?」

志保の一生懸命に悲痛な叫びは誰にも届いてないようだった。

いや、あかりと雅史はあきれてるだけかもしれない。


第一話・完

浩之「まあ、第一話完ってとこだけど…」
芹香「………」
浩之「え、私の出番は…って?
   まあ、焦らないでくれよ、先輩」
芹香「………」
浩之「打ちきられるから、
   早く登場させてくれないと、出ることが出来ない…
   や、ヤダな、先輩…」
芹香「………」
浩之「そ、そうならないよう努力します…」

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