〜 20080202戦略研、20080405戦略研の議事録を掲載 〜

■ 20080405戦略研「いま、国家戦略をいかに組み立てるか」

戦略研61stーティング議事録/戦略研10周年企画

テーマ:2018年日本の戦略シリーズ
     「いま、国家戦略をいかに組み立てるか」

日 時:2008年4月5日(土)14:00−18:00
場 所: 東京・竹橋 (千代田区神田錦町三丁目21番地) 
      ちよだプラットフォームスクウェア5階 会議室506
発言者: 朝比奈一郎氏(中間法人プロジェクトK代表(霞ヶ関構造改革プロジェクト))
共 催:  特定非営利活動法人日本危機管理学総研
      特定非営利活動法人農業情報総合研究所
      現代政治戦略研究会


1.戦略研について (代表代行より)

当会の沿革と、趣旨説明。国家戦略の重要性。レポート作成の説明。本日の目標


2.近況報告

・仕事落ち着いてきた。今度は、海外の案件。ビジネス英語に難
・ベンチャー企業のIPOを手がける。趣味にて、不動産投資
・都市と地方の経済の温度差を感じている
・大阪の都市戦略にかかわる。また、コンテンツ産業視点を行う
・JCにて政治・行政部門に関わり、4年目
・横浜市トピックとしては、環境予算
・書籍「地方自治自立へのシナリオ」出版
・農業ラジオ。生産者の意見につながる。また、地方の情報収集も行えるようになった
・経営コンサルタントとして。日系企業の強さを感じる。
 ただし、周囲にて、優秀な人たちは、海外や、外資系の企業に移ってしまう。
 日系企業と違い、「出る杭は打たれないから」
・雑誌の取材を受ける予定。自分の勉強法がテーマとかで、戦略研を紹介しようかと
・ローンや債券の評価を仕事としている。昨年からまた、不良債権が現れて、
 現在、増えている
・人事コンサルタント。自分を変えるサポート
・登記手続のオンライン申請を業務にて開始。ただし、確定申告にて、
 税務手続のオンライン申請(E−TAX)を使おうとしたら、
 住基ネットの電子証明書を取るか、あるいはE−TAXのソフトを
 新たにPCに入れないといけないので、断念。
 はたして、国にIT戦略とは、電子政府とは
・銀座みつばちプロジェクト、今年も、本日から開始
 また、5/3、第1次産業を応援するためのイベント「ファームメイド2008」
 を開催予定(銀座にて)


3.2/2戦略研レポートの説明(代表代行より)

・戦略研としての「日本のあるべき姿」「目標」の設定を行ってから、
 「提言」とする。それまでは、「論点提起」とする
・参加者に協力依頼。MLなどにて、ご意見募集
・なお、4月中には、まとめる予定


4.発言 「いま、国家戦略をいかに組み立てるか」

自己紹介/書籍紹介(「霞ヶ関構造改革プロジェクトK」)
・2003年秋、「新しい霞ヶ関を創る若手の会」を立ち上げ、
 小泉官邸(飯島秘書官)、安倍官邸に、アプローチ

@ 導入(日本の現状−データ編1)
<経済指標>
・一人あたりGDPの推移
OECD資料。2006年18位(2003年9位)
・世界全体に占める日本のGDPの割合
 2006年9.1%(2003年11.5%)
・潜在成長率
 労働力の減少、主要国の中で顕著
・円の実効レート
 円の力、80年代ごろに戻る

<社会関連指標>
・学力(PISA/大学ランキング)
 順位低下、そして低落傾向。東京大学が北京大学に抜かれる
・格差(ジニ係数)
 OECD資料。日本0.278(米国0.365、スウェーデン0.252)
 なお、ヒルズアカデミーでの関心事アンケート(400〜500人対象)によると、
  1位 格差
  2位 少子高齢化
  3位 教育
・自殺
 自殺死亡率が上昇(特に男性が高くなっている)
  1990年 10万人のうち20人
  1999年 10万人のうち37〜38人
・少子高齢化
 合計特殊出生率の低下と、高齢化率の上昇

@ 導入(日本の現状−データ編2)
<全体指標>
・IMD国際競争力ランキング(24位)
 →中国15位
・WEF世界競争力ランキング(8位)
 →ガバメント debt 120位(131国中)
  ガバメント surplus/deficit 111位(131国中)
・日本経済研究センター潜在競争力ランキング(13位)
 →政府の指標がいずれも低い。
 →政府が足をひっぱっている。

(参考)ITの活用度(G10諸国)民間はトップだが、政府は下の方。

@ 導入(取巻く状況−各国の台頭)
・イスラム台頭(イスラム教人口/イスラム金融/SWF)
 →アブダビ投資庁の資産8750億ドル(2006年)
 →SWFの発言力、増す
 →イスラム金融、日本の国家予算並み。世界全体としては、これからの規模
 →なお、イスラム圏の富の偏在は過度といえる
・中国・インド等の高度成長(BRICs、VISTA)
→大きな潜在力
・資源ナショナリズムの高まり(ロシアの復活等)
 →あるいは、ベネズエラ
・欧州の強化(ユーロ圏)
 →欧州大統領には、各国が外交戦略のしのぎを削っている

・農作物や資源等の一次産品の価格高騰
 →2000年1バレル20ドル、2008年1バレル100ドルを超す
 →日本につき食糧自給率39%。エネルギー自給率4%
・金融資本主義の拡大
 →同時に、一次産品者の発言力、拡大
 →一方で、製造業者は価格競争にさらされている(モノがあふれている)

“自動車・家電等の工業製品輸出型の日本経済は大丈夫か?”
(外需依存度上昇。一方で日本売り)
 →日本の輸出依存度。2000年10%→2006年14%
 →WTO、あるいはFTA交渉の停滞。自由貿易推進と農業保護のせめぎあい
  (政治的な優先順位付けが必要では)

@ 導入(日本の現状−近現代史の視点)
 1.明治維新(1868)〜日露戦争勝利(1905)↑
 2.日露戦争後(1905)〜敗戦(1945)↓
 3.敗戦後(1945)〜バブル絶頂(80年代後半)↑
 4.バブル崩壊(1990)〜現在?(2030まで?)↓
 →30〜40年周期での日本盛衰の「波」があるのでは?

@ 導入部の結論
・衰退傾向。見方によっては危機的状況
・但し、良いデータもある(技術、J-culture)
 →環境技術。同一GDPを生むための排出二酸化炭素量比較にて、最少値
  (2007年、日本エネルギー経済研究所資料)
・いつの時代も、良い話もあれば悪い話もある。どれだけ前向きに行けるか。
 維新直後や戦後の方が酷かったが、チャレンジスピリットで克服

  ↓
・Bクラス入りしつつあるが、Aクラスに戻ろう!
 「衰退傾向から復活した歴史はある。」
 →古代ローマ、80年代米国等、何れも「強い戦略」があった


A 戦略について−戦略とは?
<戦略とは何か>
 ・・・・別紙(「戦略」の推移)
 →クラウゼヴィッツ、モルトケ、そして、チャンドラー、ポーター
「戦いに勝つための大局的な方策」(三省堂辞書)

<戦略の要諦>
1. 戦略に先立ち、まずはビジョンが必要
2. 戦略は長期・広汎・全体(戦略/戦術/戦闘)
3. 戦略の本質は優先順位(priority)
  →みんながハッピーな政策には戦略はない。トレードオフの必要性
4. 受動的な要素(柔道のメタファー/日々の事件)
  →環境変化への対応が必要
5. 実施されてこそ戦略
  →戦略を「書いてみただけ」ではダメ
6. 戦略はアート、戦術以下は原則サイエンス
  →戦略におけるトップやリーダーの重要性

※戦略(strategy)の語源→ストラテゴ(古代ギリシアの「国家戦略官」)

A 戦略について−現状と国家ビジョン
<国の状況>
 →国としての戦略は無い
 →たとえば、各省庁ごとの戦略(戦術?)はある
  ただし各省庁の戦略は、一方で「大きな政府」を目指したり、
  他方で「小さな政府」を目指したり
・役所は「ダメ組織」の典型?
・政府の指標が足を引っ張っている?(財政状況、政府のIT活用度etc)
→国の「仕組み」を変えるべし。

<ビジョンとしての三つの国家像>
・日本は戦略以前にビジョンが不在
・3つの国家像とは

A 戦略について−三つの国家像(1)
1)public private partnershipと「協創国家」
・小さな政府vs大きな政府論争は終わった。
 官か民かではなく官と民が協力すべき(競争しつつ、協奏して、協創)
 →それぞれのノウハウをセッションする
・あるべき行政サービスの姿を描き、それを誰(官・企業・NPOなど)が
 担うかを決めるのが本来の順序
・単なるスリム化という文脈でのNew Public Management (NPM)から、
 Public Private Partnership (PPP)へ
 →PPPは、現状の「インフラ整備」「公設民営」の意味ではなく

  ↓
必要なもの
・種々の価値観が錯綜する中、強いリーダーシップに基づく決断
・外部からの人材登用
・外部の参画を促すための透明化
 →情報の非独占

A 戦略について−三つの国家像(2)
2)globalization の進展と「小強国家」
・国家以外の各主体(個人、地方、企業)が自由に世界と交流するなど、
 国の役割低下(「小さな」国家へ)
・一方で、国家単位の激しい競争(戦略のある「強い」国家へ)
・例えば、小さな政府を標榜しつつ、プロパテント政策などで市場をリードした
 80年代の米国
 →トレードオフとして、ブルーワーカーを犠牲に、金融・情報産業へシフト
・より小さくてもより質の高い政策を生み出せる行政。
 →「選択」できるだけの権限を付与する。ただし、ミスとわかればやり直し

  ↓
必要なもの
・戦略を策定するための強いリーダーシップ
・個として戦える人材を作る人事制度
 →官僚の専門性向上のためのプロセスの必要性
・科学的な調査分析に基づく政策の国際競争力の向上

A 戦略について−三つの国家像(3)
3)incrementalismの終焉と「真豊国家」
・右肩上がりの成長は望めず
・需要喚起もサプライサイド改革も限界あり
・サプライサイドが知恵と独創性で需要側の欲望(≠ニーズ)を掘り起こす時代
・マクロで見た「選択肢」の拡大こそが真の豊かさ
 →生活者、消費者への「新しい価値」の提案

  ↓
必要なもの
・既得権見直しのための強いリーダーシップ(増分の分け前ではなく、既得権に切り込む力)
・減点主義ではなくより付加価値の高いアイディアを出した者が評価される
 人事評価システムへ
・既得権の見直しのため、過去の政策の効果を検証すること

A 戦略について−戦略不在・不全?
・日本の戦略はどこが構築?(閣議??/マニフェスト??)
 →閣議は、週2回、15分ずつ。事務次官会議にて調整されたものを追認する機関に
・各省の「戦略」は実は「戦術」。合成の誤謬
・議会→無理、政党→完全に公的な存在ではない
 やはり、行政に『国家戦略担当部局』が必要
 →実施省庁の上位に位置付け

なお、参考として、
・過去の政策統合機関について(戦前だと、企画院(リソースの配分的機関)
 −内閣資源局・調査局
 −国土庁
 −経企庁(←経済安定本部)
 −内閣府・内閣官房(プライオリティではない)
  →そのほか、「○○本部」など

A 戦略について−総合戦略本部案

総理官邸(内閣)
総合戦略本部(本部長:内閣総理大臣)(人員)100名程度

 @戦略策定部門(15〜16名)
  →政権政党マニュフェストとの整合性をはかる
 A戦略実施強制部門(各省庁担当長;11名)
  →各省庁へ、助言・指示・勧告を行う。
   また、各省庁から、情報提供・相談を受ける
 B行政内対立裁定部門(判定官;4〜5名)
  →対立省庁からの提訴あれば、裁定を行う

・国民各層から幅広く優秀な人材登用(専属制)
 →各省庁からの人員割り振りは排除
・出身母体とは無関係に片道切符→縦割りの弊害排除
・官邸による直接選抜→内閣と整合性のとれた陣容形成
→ミドルマネジメントの危機。事業執行と事業計画の両立は困難

A 戦略について−手順
・あらゆる改革は、基盤がないと出来ない

・まずは霞が関改革準備室(仮称)を!

・次に総合戦略本部。人事権を持たせる(内閣人事庁構想)ところから
 始めるのは一つの方策。

B 余話として−国民も変化すべし
・国の仕組みを変えるには私たち一人一人も変わる必要がある
 →国民が親として、愛情を持って、国、政府、政治家、役人という子どもを育てる
・観客民主主義から脱皮し、参加型へ。
・PSR(personal social responsibility)とM&A(みんなでアクション!)
・まずは投票に行く。信頼できる政治家やNPOを応援する。
 日本版のプラーヌンクスツェレ(無作為抽出、有償、ワークショップ型の市民参加)
 などの動きも

B 余話として−プロジェクトKの「戦略」

三位一体攻撃!
・出版
・各種団体との連携
・有識者、政治家、マスコミ関係者等への説明

  ↓
 @危機意識の醸成、APSRとM&A(若手団体合同委員会設置等)、
 そして、B霞が関改革準備室を!


5.議論

お題 「4/5戦略研レポートとしてまとめるため、
    そのテーマや、論点、仮説的な結論について議論したい」
   また、
   「国家戦略策定のためには、まず国家目標が必要と考えるが、
    参加者のみなさんの考える、国家目標とは?」

・(先ほどの発表への質問)
 新しい霞ヶ関を創る若手の会の「国家目標」はもう少し具体的にできないのか?
 →「3つの国家像」を提示
 →具体的な内容(政策提言)を行うとすると、紛糾してしまった
 →仕組み作りから

・「国家目標」の前に、現状の問題出しが必要では?
 GDPの総額の減少、GDPの国家間シェアの減少、少子高齢化と人口構成の問題

・たとえば、「国家目標」としては、理念に近いかもしれないが
 「人を大切にする社会」
 単に、国内の人にとどまらず、国外の人に対しても、
 また、一部の人(一部地域、一部業界)でなく、国という単位での「人」
 自民党の選挙公約的なものでなく、
 本来的に国家戦略やその執行の判断基準(優先順位を決める)となるような

 また、上記のような「国家目標」または「理念」を一人ひとりが考え、
 行動できるような「余裕」を持てる仕組みのある社会(余裕と仕事のバランス)
 
 →国民の将来への不安感を取り除く必要。現在は、不十分。戦略不在からか

・戦略経営研究会の名前の由来。10年前の日本への危機感(←国家経営の必要性)、
 現状の日本への危機感(←ぬるま湯がまたぬるく)、
 そして10年後の日本への危機感(←国際情勢の変化。日本の立ち位置?)
 合わせて、10年後、笑ってられない。

 民間ノウハウ(経営)を官へコンサル(経営コンサルがメンバーに多いこともあり)
 →国の経営という仕組み作りから

・企業は、結果が数字で出る。役所では、これが難しい
 無駄な支出かどうかの判断、難しい(公共性)
 いまの国家経営はうまくいっているかの評価が難しい

・「評価」のための国家目標、国家戦略、または国家的な判断基準の必要性
 →会計検査院における「有効性評価」難しい(ただし、公表が難しいという考えも)

・小泉改革(旗幟鮮明。良い悪いはあるが)と
 福田改革(よくわからない。ばらまきに戻る?)の違い
 →仕組みとして、無いことを攻めるのはやりやすい

・政党こそが「国家目標」を提示すべき。それが、政党政治
 国民が、この「国家目標」を選挙で、選択する
 こういった意味で、「政権交代」が必要

 ただし、現在の政党には、「国家目標策定」や「政策立案」能力が不十分
 官僚の手助け無しにはできない?

・某市役所の戦略会議に出席した経験から。
 具体的な施策は、公表しない。やらなくてはいけなくなるから
 また、この戦略会議を担当する役人に、前向きな姿勢はない。
 本音は、新しいことをしたくない

 ただし、現場には、新しいことをしたい役人がいるはずなのに
 →現場の役人への権限委譲の必要性。と、戦略実行の必要性

・「人を大切にする・・・」、経営につなげることの必要性


まとめとして、
・いままでをまとめると、経営のこと。そして、経営の中で組織をどうするか。
 また、国のとしての組織をどうするか
 さらに、国の「意思決定のシステム」をどうするかと、
 それが「どう意思決定していくのか」のお話しかと
 そして、「真豊国家」や「人を大切にする・・・」が「判断基準」となるかと

 上記の仕組み変えのプレーヤーとしては、
 官 → 新しい霞ヶ関を創る若手の会
 政 → 政党、政治家
 国民 → そして、国民も変わっていく必要がある

 そして、意思決定システムは、少数精鋭にて

 国民の、政治家や役人への依頼心が強過ぎる。しかも、メディアに左右され過ぎる

・国のことを思い描けていない。判断基準がない。つまり、目的、目標がない
 →戦略研として、目的、目標を提示することができるのではないか

・なお、たとえば、地方議員の政治・選挙の現状(住民の小間使い的な)
 住民が、政治家を育てていく必要がある(勉強される時間を与えてあげる)

 はたして、政治家が地域の現状を把握できているのか?
 さらにいえば、中央の政治化に地域の現状は把握できていないのではないか?
 →地方分権の必要性につながる

 リーダーにはアートが必要。そして、このためには死んでも良いという覚悟が必要

 リーダーとなる人を育てることと、このリーダーを支える仕組みを整えていくことの必要性
 →また、リーダーとなる人を育てる仕組みも必要


以上。


 20080202戦略研「国の財政監督機関として、〜水戸黄門、幕府を語る〜」


戦略研60thミーティング議事録

日 時:2008年2月2日(土)13:50−16:50

2018年日本の戦略シリーズ
テーマ:国の財政監督機関として、〜水戸黄門、幕府を語る〜
発表者:富澤秀充氏(会計検査院 上席研究調査官付 副長)
共 催:現代政治戦略研究会

1.戦略研について (代表代行より)
 組織・運営体制の説明  
 年間の活動の流れ

<年間スケジュール>
  隔月で偶数月に実施予定。4・6・8・10・12月
  国家が関わる戦略を議論していく。 

 <アウトプット>
   従来、議事録をMLにアップして終わり。
   今後、事前にテーマ・参考文献を提示して予習。
      戦略研で議論、問題提起。
      その後1ヶ月くらいで戦略研議論MLにて議論継続。
   という形で進めていく予定。
   

2.参加者近況報告
 ・監査法人系コンサル勤務。最近は消費者金融の案件に関わっており、グレーゾーン金利撤廃の会社に与える影響の大きさに驚いている。
 ・億ションの売買に関わる。本当のお金持ちが買う億ションは売れている。
 ・IT系から転職してコンサルに勤務。最近ようやく社内で仕事ができるといわれるキャラに
なりつつある。
いろいろなところに顔を出しているのが存在感のアピールになった模様。いい循環になりつつある。

 ・三菱系リース会社勤務。近況ではプライベートな話だが今年に結婚の予定。
結婚は入籍するだけで十分と主張する東京現代女性の彼女と、結納や挙式・披露宴は行うべき
とする京都の田舎出身の私の実家などの間で文化ギャップの板ばさみにあいながら、
落ち着きどころを模索中。
 ・3月で退社予定。4月から大学院。現在プロジェクト2つかけもちして多忙。J−SOXに関心。

 ・世田谷ラジオで、農と食にかかわる情報を発信中。東京農大より、特別授業をしないかと
声を掛けられている。
 ・インターネットを使った海外向けマーケティングの事業を行っている、社員の国籍(7カ国)は
多様でそれが強みとなっている。
 ・シンクタンク勤務。処分場や熊谷のISO案件に関わっている。本の出版(地方分権)を
控えているが、先日ダイジェスト版が発行された。某自治体の公会計制度に過去かかわった。
会計検査院がどのように総務省などの動きをみておられるのか興味あり。
 ・地方行政のコンサルを行っている。村上龍氏のメルマガに経済関連のコメントを定期的に
行っている。 
 ・大手電機メーカーで経営管理に携わる。


3.事務連絡
 ・初参加者はアンケートよろしく。
 ・本日のディスカッションだけにとどまらず、MLでレポート作成を考えている。 
 ・今日の議論を補足する情報などもあればMLにアップを願いたい。
 ・継続できる人には事務局運営のお手伝いも願えればと。
 ・懇親会も参加してね。
 ・4月は、国家戦略をテーマ?
 ・6月は、政党系シンクタンクの責任者対談?
 ・8月は、農業生産者、農業官僚の対談?
 ・10月は、福祉をテーマ?


4.発表者:富澤氏の自己紹介
 ・今回発表することになったきっかけは、昨年6月のプロジェクトKのパーティーで事務局の
古村・茂木に誘われたのが始まり。
 ・会計検査院では3年間のJICA出向を含めて12年近く経ったところ。今の課までに道路、郵政、
防衛の検査と国際関係を担当。
 ・肩書きの上席研究調査官付は、会社で言うと経営企画室か研究所のようなもの。「副長」は
  他の省庁で言うと課長補佐に相当する。

5.講義:「国の財政監督機関として 〜水戸黄門、幕府を語る〜」
  (あくまで、富澤氏個人(私人)の意見として)

I. 公会計制度
II. 会計検査制度
III. 海外の会計検査制度(参考程度)
IV. 会計検査の重点
V. 特別会計の検査(参考程度)
VI. 政府出資法人の検査(参考程度)


T 公会計制度

<公会計の体系>
 ・意義・目的は、企業会計と基本的に異なる。昨今、巷で論じられることが多いが、
  なぜ違うのかを理解しないで是非を論じても薄っぺらなものになってしまう。
 ・企業会計の目的は企業の成績表をつけること。
 ・公会計の目的は、議会による財政活動の民主的統制。すなわち、一年間でどれだけ(いくら)
  の活動をするか。(公的部門では収益と費用の対応がなく、税収は総額では行政サービスの
  対価だが、個々の対価ではない。対応させることができればそもそも政府が行う必要がない。
  したがって、いくらもうけるかという観点ではない。)

<公会計制度の問題点と見直し>
 ・フローとストックが連動してない。
 ・年単位でお金が適正に使われたかどうかはわかっても、開始から終了まで数十年となる
  事業の場合、その計画期間やライフサイクルコストが適正か否かがわからない。
 ・制度自体の見直しは、財政制度等審議会を始めとして行政部門がやるべきこと。
  会計検査院はオブザーバーとして問題点の指摘や意見を述べる。
 ・近年進められている見直しでは、従来、点在する特殊法人、独立行政法人、特別会計毎に
  バラバラに作成されていた財務諸表を連結することをめざしている。

<公会計の内部統制>
 ・予算決算の現金ベースによる統制はうまくいっているかというと、J-SOX法と比較して
  言えば不十分。企業も含め、これまで日本で内部統制として考慮されていたのは、
  権限の分散など個人の統制。組織の統制は考慮されていなかった。COSOフレームワークが
  謳うような、財務報告の信頼性や法令の遵守などを組織を挙げて違反する行為をできない
  ようにする統制というものは、組み込まれていなかった。カラ出張、カラ残業なども
  そういう内部統制が働いていないケースといえる。
 ・内部統制の状況に対応した取り組み。検査では、内部監査(内部監査の仕組自体は、
  各省庁はもっている)を含む内部統制が働いているかをまずみる。働いていればその他を見る。

<会計システム>
Q 会計システムが電子化され手元でみることができれば調査官の負担は軽減し、
  ほかに労力が回せるのでは?

A 現在でも決算の数値はシステムで見ることができる。領収書や設計図、施工写真などの
  証明書類、さらに決裁書類もシステムで見ることができるようになれば、そのとおりだろう。
  しかしそれは組織を丸裸にすることであり、今のところ現実的ではない。
  また、数字の奥に潜む真実や隠れた問題がどこにあるかは、最終的には現場を見、
  現場の人に話を聞かないとわからない。調査官は英語では”auditor”であり、
  これは読む人ではなく聞く人を意味する。


U 会計検査制度

<会計検査院の検査対象や業務内容>
 ・国のお金が入っているところは全部みる。
 ・仕事内容は、警察(ただし捜査権はない)・コンサルティング・公認会計士的な業務など
  を足して3で割ったようなもの。
 ・組織の定期健康診断の様な位置づけ
 ・国が決めた目的に従って、現場がお金を利用しているかを検査
 ・でも霞ヶ関にいるだけでは、地方や現場でいかに税金(交付金、補助金)が
  使われているかは分からない。
 ・そこで調査官の実地検査日数は年間約80日、1年の勤務日数の3分の1以上は、
  巡回診療のように地方巡業している。
  イメージで言うと、本日の副題でもある「水戸黄門」に近い。調査官人生は当初は
  うっかりハチベエのようなところから始まる。今は助さん・格さんぐらい。
 ・検査の性格を大きく分けると「財務検査」と「業績検査」(経済性・効率性・有効性の確認。
  英国でいうVFM、米国でいうプログラム検査と類似の概念。)に分けられる。
  企業監査でいうところの批判的機能と情報提供的機能の区分に類似する。
 ・近年、これにIT検査を一ジャンルに数えることもある。

<検査対象> 
 ・国→補助金を含む国費の全て。 
 ・半官半民の組織は、国からの距離や出資割合による。
 ・政府出資法人(1/2未満)、孫出資法人(NTT東、西等)は必要に応じて。
  政府出資法人(1/2以上)は必ず。
 
<検査の観点>
 正確性
 合規性
 経済性・効率性
 有効性

 ・常時検査(現場まわり)、個別検査(個々の契約の妥当性など)
 ・テーマ検査・・・個別検査、国民の関心、国会審議内容などより、仮説立案・検査計画の
  策定を行ったテーマ検査

 <検査結果の検討>
・検査の結果、不適切と認められる事態が明らかになった場合には、検査院としての判断を
  公表することが適当かどうか審議される。
 ・「不当事項」の場合、検査院が不当と認めるものは事実として確定するので、
  裁判所のような機能も持つ。補助金では普通は不当金額の国庫返納を伴う。
 ・裁判所が(刑事事件で)一番嫌うものは何か?冤罪。
 ・検証の結果、誰が見ても問題と思われるものが公表対象。
 ・「業績検査」の類では、証明の仕方や論旨が事実認定に置かれるのではなく、
  もう少し事実の先にある、事実に基づいた改善提案になっていく。

<検査報告の送付・提出>
 ・決算に検査報告を添付して内閣が国会へ提出する。

<他の公会計監査関与機関との連携>
 ・会計検査院が主体となり、他の公会計監査関与機関に研修や講習会を行っている。


V 海外の会計検査制度(参考)
 ・日本 会計検査院は、内閣・裁判所・国会とは独立した機関 
 ・米国GAO 議会の付属機関、議会の番犬とよばれる。
 ・その他、議院内閣制の諸国の検査院は、日本と似た独立機関。 


W 会計検査の重点

<業績の評価を指向した検査へ>
 ・制度の見直しの重要性  制度に則っているが、制度自体がおかしいもの。
 ・制度の実効性
 ・事務・事業の進捗状況  
 ・事業・制度の実情と課題
 ・政策評価 

<基本的な会計経理の検査の充実>
Q 架空支出による別途経理の問題について、なくせないのか?
A 労働局 ・・・ ピラミッド構造が働いている組織の下で発生するカラ残業、カラ出張など
         の行為は撲滅がしやすい。組織のトップが断固とした意志で決定すれば。
  科研費 ・・・ ピラミッド構造が働いていない。こうした、事務局より研究者である先生
         のほうが偉い組織の場合、資金使途を明確にするよう事務局から統制を働
         かせることが困難。検査はしていくが、なくなることはないだろう。


<国会への随時報告>  
 ・これまでは年に一回だけの報告。
 ・現在は五月雨式にだせるようになり、スピード感のある報告ができるようになった。


X 特別会計の検査

 ・従来は、31ある特別会計ごとにルールがまちまちで何をやっているかわかりにくかった。
  一般法ができたことで国民にも見えやすくなったし、検査もしやすくなると思う。
 

Y 政府出資法人の検査

 ・100%政府出資の会社と株式公開している会社では形態が同じでも市場のガバナンスが
  異なる。独占産業と競争相手がいる産業でも状況は異なる。
 ・たとえば国立大学法人などは、民間の私立大学と大きく異なる。ただし、会計制度は
  民間にあわせたので、効率性などは比較しやすくなった。
 ・JRの場合、本州会社は上場し、出資割合も低下したので検査対象から外している。
  三島会社は検査している。



6.講師とのディスカッション
  (主に、戦略研テーマ「2018年日本の戦略」に関連するであろうもの)

Q 会計検査院の検査報告は、もう少し早く出せないか?(企業であれば、決算期後3ヵ月以内)
  (決算を、予算編成の前提として、フィードバックさせる)

A 企業が3ヶ月以内に決算を公表しているのは、会社業績を株主や株式市場に明らかにするため。
  それを証明するために決算公表前に監査証明がなされている。同じ目的で四半期決算や
  半期決算も行われ、それを監査法人はウォッチしているために、それだけの短期監査が
  可能になっている。国の会計とは目的が異なる。
  国の決算は一年であり、翌年度の予算審議は年明けに行われる。検査院はPDCAサイクルに
  おけるチェック機関であり、アクトに反映させることが重要なので、
  適時性(国会の予算審議前)を考慮して11月上旬に提出し、予算審議には間に合うように
  やっている。
  

Q 検査の対象期間はどうして1年じゃなきゃいけないのか?
  
A 検査の期間ではなく決算の期間の問題。上場企業が4半期決算(3ヵ月ごと)しているのは、
  株主や市場の早く業績を知りたいというニーズに応えるためだが、公会計は国会が編成し
  政府に与えた予算執行権の適正な執行が一番の目的である。その権限は一年単位で
  与えられている。
  (年度会計)故に3ヶ月で決算を区切ることに意味がなく、1年とされている。
  検査院はその執行をチェックしているので、一年の決算を3ヶ月に区切って検査する意味がない。

  当然一年になる。
  なお、テーマ検査などは、そもそも単年度の決算だけを対象にする意味があまりない。
  毎年観点を変えながら監査を行っているので年一回の報告になるが、指摘対象は数年間に
  なることもある。


Q 白黒の証明がしにくい部分も沢山あると思う。日本の財政を改善するため、
  巨額のグレーゾーン部分に対して、会計検査院がもっと何か主張できないのか?

A 米国GAOがグレーでも意見を公表できるのは、議会の法案作成ための報告で、
  「調べた限りこうだった」で報告するから。
  日本や大多数の国の会計検査院は「独立性」と「中立性」があるがゆえに、
  「確かにこうだ」と言えるものしか言わない。
  仮に、米国のように国会の後ろ盾を得たとすると、意見はもっと言うことができるかも
  しれないが、党利党略の道具にされる懸念もある。


Q 会計検査院のトップはどうやってきまるの?それはどういう人?
  
A 会計検査院のトップは、国会の同意で決まる3人の検査官(現在は総務省・大学教授・財務省OB)。

院長はその3人が相互推薦し、内閣が任命する。


Q 会計検査院は強制捜査権などのもっと強い権限をもつべきではないか?

A 定期健康診断になっている点は否めない。
  ただ、摘発する立場ではなく、audit(聞く)し無駄を省き説明責任を果たす立場からすると、
強制捜査権よりも、現場(検査対象)との信頼感が欠かせないといわれる
(事前通告性、検査対象の協力が必要)。
  また、強制捜査権は諸刃の剣になる可能性もある(検察庁の国策捜査など)。
  強い権限という意味では、国民や国会の支持と正しい理解こそ、検査対象に抵抗を
諦めさせる力になる。

 
Q 検査報告に圧力がかかることはあるか?
(あるいは、検査報告に上層部の判断にて掲載しないなど)

A 検査報告は現場レベルの意見表明ではなく、検査官会議を経る組織の意思決定で公表する。
その過程で上層部が掲載しないと判断することは当然ある。
  

Q 会計検査院の組織に民間の公認会計士をいれるべきでは?

A 「企業会計」と「公会計」は違う進化をとげてきた。たとえば、企業会計の目的は収益と費用、
資産と負債のバランスだが、公会計では、「費用」と「収入」はバランスしないし、
バランスさせられるものでもない。公会計の専門家が企業会計を見てもわからないし、
企業会計の専門家が公会計を見てもわからない。ただし、国でも事業会計や独立行政法人、
大学法人は企業会計を取り入れてきているので、検査院でも企業会計の必要性が格段に
  増してきている。
  一朝一夕で身に付くものではないので、そういう分野には任期付職員として公認会計士を
  採用し、投入している。


Q 公会計に「企業会計」をどういう形でとりいれていったらいいのか?

A まだ結論が出ていない今後の課題。最近、地方自治体においては、夕張市の破綻などの
  反省から、財政状態を横並びで見る必要が出て、新公会計制度の名の下に「企業会計」を
  とりいれている傾向がある。
  順番からいえば本来は逆で、日本は国の収入を地方自治体に再配分している。
  国と地方で会計制度が違えば折り合わず、うまくいかない部分も出てくるだろう。
  例えば将来的には国と地方の連結も考えられる。国の会計を屋台骨として設計し
  それに合わせて地方も設計すればスムーズだが、企業会計を参考にと言いながらも
  異なる会計制度を入れれば、後で合わせるのは余計な軋轢を生むだろう。
  ただ、国の議論が永遠に終わらない可能性を考えれば、パイロットケースという役割を
  果たすかもしれない。


7.まとめにかえて「10年先をみすえて」富澤氏の個人的なご意見と戦略研へのアドバイス

 ・枝葉末節にとらわれず、上流から下流に向かって考えてほしい。会計は手段であって
  それ自体が目的ではない。
  大目的は望ましい国家像、その中間に位置する目的が持続可能な財政。
  それを実現する手段として望ましい会計像は何か?
 ・現在の「公会計」「検査報告」が国民の望む情報提供に十分応えていないならば、
  ではどういう点で問題があるのか?どういう形で導入していくのか?
 ・財政民主主義を基本に考えるなら予算は現金主義、フローとストックを連関させて
  財政状態を把握するなら決算は発生主義。
  そこに業績評価をリンクさせるのがカギ(フランスモデル)。
 ・そのためには、行政評価と会計検査も統合又は連携させる必要があるだろう。
 ・今はPDCAの中で、Cがいくつかに別れ、最後のAに直接は結びついておらず、
  綺麗なサイクルを描いていない。
 ・会計の目的はなんだろう。
  国民の民主的統制に基づくもの。
 ・国家として持続可能な「公会計」の仕組みとは?
 ・日本はGDPの2倍近い超多額の借金を持つが、破綻しないのは国家だから。
  増税すれば解決できると考えられているようだが、世代間不公平は拡大している。
 ・借金を返済していくスケジュールの策定。失われた10年でここまで増えたが、
  返済は10年ではできないので30年−40年タームで。それを明示する会計とは何か?
 ・会計検査院の組織としてはどうか?
 ・議会の一機関になるか?(メリット、力を背景にものをいう)。
  それとも独立機関であるべきか?
 ・独立と中立を保ちつつ機能を強化する方法は?
  強制捜査権も伝家の宝刀としての意味はあるかもしれない。
 ・今現在は、検査は企業監査と同様に相互協力のもとに成り立っている。
 ・検査のやり方は変えるべきか?
 ・日本は欧州大陸型とおなじで、検査対象に合わせて縦割り。
 ・財務検査と業績検査は、現在同時に行っているが、検査の性格に応じて二つに分ける
  考え方もある。
 ・組織改編を伴わなくても、業績検査については縦割りではなく、検査対象組織を横断的に、
  テーマ毎にプロジェクトチームを編成する考え方もありうる。

以上

※ なお、参加者からの意見として。
1.検査報告掲載につき、検査対象の金額と、グレーの度合いにて、バランスをとってみては?
2.会計検査院に求められるものは、「迅速性」「正確性」「網羅性」、
  そして、「公開性」(ただし、国民に対するガイドが必要)ではないか?
3.会計検査院の検査対象となる公共部門のそもそもの見直し(取捨)が必要ではないか?
  (これは、会計検査院のマターではないが)
4.国会における決算承認の位置付けを、予算編成や、財政再建、財政改革に生かせるように
  再検討する必要ではないか?(これは、会計検査院のマターではないが)
5.国の財政制度とマッチした会計検査院の制度が必要とされるのではないか?