山中貞雄全国浸透化計画

 現在、山中貞雄監督作品は三本しか現存しませんが、失われた作品がいつどこから発見されるかわかりません。小津安二郎の「突貫小僧」、伊藤大輔の伝説の名作「忠次旅日記」「丹下左膳・第一篇」、伊丹万作の「国士無双」の一部だって最近発見されました。すべてここ十年程の間の出来事です。山中貞雄の映画だって絶望的ではないのです。ビートルズやレッド・ツェッペリンの再結成よりは可能性はあるのです。私の生きてるうちに「盤嶽の一生」や「街の入墨者」が見れることを願っています。

 こんなことを思っているのは私一人ではないはずです。筒井康隆の短編小説で神戸の地下九階の映画館で「街の入墨者」や見ることが困難とされる映画が上映されていると言う内容の「CINEMAレベル9」でも「この映画を見るためなら百万円出しても惜しくないという映画狂が何人いるだろうか。十人は下らない筈だ。そしておれもそのひとりである。」という文章がある。私もそのひとりです。山中貞雄の映画を見たことのない人には信じられない考え方でしょう。何が私の気持ちをそこまでさせたか、現存する三本を見れば分かっていただけると思います。わからないなら「ハイそれまでョ」です。

 ではその三本を見るにはどうすれば良いか。東京やその近辺の方は近代美術館のフィルムセンターが保存しているフィルムをたまに上映しているみたいですし、名画座(並木座はなくなりましたが)等でもやる機会はある様です。私が住んでる関西地方でも京都文化博物館で上映されることがありますし、見れる機会は結構あります。ではそんな簡単に見ることができない環境にある方はどうすれば良いか?

 かつては三本ともビデオが出ていました。通信販売専門のキネマ倶楽部から三本とも発売されていました。ところが2002年の4月をもってキネマ倶楽部は販売を打ち切ってしまったという事です。
 「百万両の壺」と「河内山宗俊」は日活から低価格で出ています。ビデオショップには置いているところはありますし、
日活のホームページにて注文する事も出来ます。ただかなり昔に出ていた「人情紙風船」のビデオは廃盤になっているので新しく購入する事は不可能です。
 かつては「百万両の壺」「河内山宗俊」LDが出ていましたし、「山中貞雄と日活明朗時代劇」というLDのBOXセット(「百万両の壺」「河内山宗俊」「赤西蠣太」(伊丹万作監督)「鴛鴦歌合戦」(マキノ正博監督)収録)発売されてましたし、「人情紙風船」のLDが発売されてました。4、5年前には山中貞雄の映画を見る事は比較的容易だったのです。
 ただこのDVDの時代になってからは山中貞雄の作品を見るのが困難になってきています。日活や東宝さんには頑張ってDVD化に努めて頂きたいと思っていたら、ついに来る2004年5月7日には日活から先ず、「百万両の壺」と「河内山宗俊」がHDテレシネでデジタルリマスタリングされたのもがメインとして収録され、「抱寝の長脇差」「快盗白頭巾」の断片、先日発見された「百万両の壺」の立ち回りの部分、その他様々な資料が特典として収録された「山中貞雄日活作品集」が発売されます。さらに先日東宝が行ったDVD化を前提に行われたアンケート「東宝想い出の映画」において「人情紙風船」が第五位になり、DVD化の可能性は高いと思われます。

 衛星放送でもたまにやります。三本ともNHKBS2でもかつて放映されたことがあります。また放映されないとも限りません。それにスカイパーフェクTVで三本いっぺんに放映された事もあります。放映されたときはきっちりビデオにとって保存版にしましょう。

 そして、私はなんと幻の処女作「抱寝の長脇差」の一部を見たことがあります。1分ほどの断片ですが、アポロンという会社から出ていた「嵐寛寿郎乱闘場面集」というビデオに収録されています。松田春翠さんの解説で、他にも大河内伝次郎、阪東妻三郎、片岡千恵蔵などがあります。しかし残念ながら現在は廃盤になっています(注)。古くからあるレンタルビデオやさんにはあるかも知れません、探してみて下さい。