行動記録

8月8日(成田15:30―アトランタ15:15〜22:30―)

8月9日(―サンティアゴ08:00)

 

8月10日 薄曇(サンティアゴ11:00―バジェ・ネバドスキー場3,000m 13:00〜15:00―バジェ・ネバドスキー場上部3,500m 16:15―ヤレタス谷とセポ谷の間の尾根3,500m 17:45)

 ガイドのアンディの車で、サンティアゴからバジェ・ネバドスキー場へ行く。彼は夏の間は登山ガイド、冬はバジェ・ネバドでスキー教師として働いている。9月にアコンカグアを滑ったこともあるらしい。僕が2年前にプロモで敗退したときに雇った怪しいガイドとは違って、アンディは冬のアンデスへ登る技術と経験を持っているようだ。

 スキー場内にあるアンディの宿舎で食料と燃料をザックに詰めてから、リフト乗り場へ向かう。我々の大きな荷物を見て、スキー教師が数人集まってきた。「僕も10年前の冬にスノーボードでプロモを滑ったよ。」という教師もいる。「雪の状態はどうだった?凍っていたんだろうね。」と尋ねると、「完璧なパウダーだったよ。」と言う。プロモの滑降ルートは風上側なのだが、カチカチのウィンドクラストでないこともあるのだろうか。

 リフトを3本乗り継いでスキー場の一番上(3,670m)まで登る。3本のうち2本はJバーリフトで、どちらも1,000m以上の長さがある。Jバーリフト未経験者は、何回か空身で練習してから荷物を担いで乗る方が良い。

 北へ伸びる尾根上のスキーコースを滑走し、標高3,500mの鞍部からヤレタス谷へ下りる。谷の底(3,350m)に着いたら左岸の斜面を登り、ヤレタス谷とセポ谷の間の尾根(3,500m)に幕営する。

 

8月11日 快晴(ヤレタス谷とセポ谷の間の尾根09:40―ピエドラ・ヌメラダの少し上流3,350m 10:30―ベースキャンプ4,100m 15:40)

 昨日の幕営地からセポ谷の右岸をトラバースして、ピエドラ・ヌメラダの少し上流に当る谷底まで下りる。幅が500mほどある広い谷だ。北の方に見えるプロモをめざしてシールで登る。ヘリスキー用のヘリが飛んできた。アンディの知り合いのスキー教師が我々の様子を見にきたらしい。ヘリは頭上を旋回してスキー場へ戻って行った。

 重い荷物が耐え難くなってくるころ、プロモの南西斜面の下にあるベースキャンプに着く。積雪が無い所を選んでテントを張る。4人ほど寝られそうな小屋もあるが、扉が開いていたため内部は雪で埋まっている。

 

8月12日 晴(ベースキャンプ10:15―標高4,550m 13:00―ベースキャンプ14:15)

 今日は、標高4,550mまで往復して高度順応を図る。まず、スキーを担いでベースキャンプの裏の尾根(4,250m)へ登る。ここから水平距離にして500mほど緩い斜面をシールで歩くと、急斜面の下(4,350m)に着く。急斜面のうち右側の部分が滑降ルートであり、左側の部分には氷河が懸かっている。滑降ルートを標高4,550mまで登ってから、滑って引き返す。スキーは標高4,250mにデポしてベースキャンプへ戻る。

 

8月13日 晴(ベースキャンプ06:10―プロモ山頂14:10〜14:30―ベースキャンプ15:30)

 プロモ山頂アタックの日が来た。6時10分に南十字星を背にしてベースキャンプを出発する。標高4,450mまでは昨日と同様に雪の上を登り、そこからスキーを担いで右側の砂利の斜面に取り付き、所々に雪が付いたジグザグの道を辿る。標高4,600mに小屋の残骸があって、その周囲は幕営可能だ。標高4,800mから岩の下を右へ回り込むと尾根に出る。標高5,000mで尾根から左の急斜面に戻り、斜面の最上部をトラバースしながら登って行く。ここはアイゼンを着ける。西風が吹き付けてくるが、たいして強くはない。

 トラバースは標高5,150mで終わり、頂上台地に出る。小ピークを右から巻くと、広く緩やかな尾根の先にプロモの山頂が見えた。尾根の右側は直径500mの平坦なエスメラルダ氷河で、その端はオリバレス川の谷へ落ち込んでいる。夏道は左を巻いて行くが、今日は尾根上をシールで登る。しばらく進むと凍った斜面が増えてきたので、アイゼンに履き替えてスキーはロープで引っ張る。軽い頭痛がし始めた。

 プロモの頂上直下で雪は消え、砂利の尾根を少し歩いて14時10分に山頂に着く。北東に南米最高峰のアコンカグア(6,959m)が見える。東から南東にかけても、ツプンガト(6,570m)、マルモレッホ(6,108m)、サンホセ(5,856m)と高峰が連なっている。

 14時30分に滑降開始。山頂付近は氷とシュカブラで滑りにくい。急斜面には北西端から滑り込む。傾斜は30度から40度で、靴が埋まるくらいの深さの軽い雪だ。右に左に粉雪を巻き上げながら、標高差800m、幅300mの大きな斜面を一気に滑り降りる。今年この斜面に描かれるシュプールは、おそらく僕らの2本だけだろう。傾斜の緩んだ斜面を滑走して、15時30分にベースキャンプに戻る。

 

8月14日 晴(ベースキャンプ08:00―ピエドラ・ヌメラダの少し上流09:00―バジェ・ネバドスキー場上部11:00〜11:30―バジェ・ネバドスキー場12:00〜14:00―サンティアゴ17:00)

 ベースキャンプをたたみ、セポ谷を滑り降りる。ピエドラ・ヌメラダの少し上流からバジェ・ネバドスキー場へ登り返して、山行を終える。

 

8月15日〜16日

 サンティアゴ滞在。国立自然史博物館を見学。ここには、プロモの山頂付近で発見された500年前のインカ帝国時代のミイラが保管されている。ただし、公開されているのは複製品だ。プレコロンビア芸術博物館には7,000年前のミイラも展示されている。スペイン人征服者が築いたサンタ・ルシアの丘の要塞から1973年にピノチェトのクーデターの舞台となったモネダ宮殿へとチリの歴史を辿る。サンティアゴの旧市街では街路樹の桜(!?)が花をつけて、もはや春の装いである。

 

8月17日(サンティアゴ20:40―)

8月18日(−アトランタ06:35〜10:25―)

8月19日(―成田13:25)

 

チリ 冬のプロモ(5,424m)