エクアドル カヤンベ(Cayambe 5,790m20177

 

1 メンバー

島津好男、金子隆善(東京スキー山岳会)

エクアドルの登山ガイド2

 

2 概要

カヤンベ(5,790m)はエクアドルの首都キト(2,850m)の北東60kmに位置する火山であり、登山口のカヤンベ小屋(4,600m)まで車で入れば、翌日には日帰りで山頂を往復できる。氷河末端(4,850m)から西稜(5,400m)までは、傾斜が2035度でクレバスも幅50cmの小さなものが3つある程度のスキーに適した斜面が続く。一方、西稜から山頂までのルートは、幅5mの多数のクレバスを縫うように登っており、傾斜も3040度あるので、スキーで滑るには相当な技術・体力と覚悟が必要である。今回は、メンバー全員が登頂した後、金子は西稜から氷河末端までスキー滑降を行った。島津は13年ぶりの高所登山なので、体力温存のためスキー無しで登った。

 

 エクアドルの主な山

 

3 行動記録

7/6(晴れ)キト(2,850m08:30−パソチョアの標高3,800m 11:00−パソチョア(4,200m13:00−パソチョアの標高3,800m 14:00−キト16:00

金子はまだペルーを旅行中なので、島津と登山ガイドのダビットでパソチョア(4,200m)に登る。標高3,800mに車を置いて登高開始。翼を広げると2mになる大きなコンドルが、低空を飛んでいる。しばらく車道を歩き、後は草原を登って火口縁へ。パソチョア山頂と少し南のピークの2つに登ってから車へ戻る。

 

7/9(晴れ)キト08:00−グアグア・ピチンチャの標高4,150m 10:00−ピチンチャ小屋(4,600m11:5512:15−グアグア・ピチンチャの4,770m13:00−ピチンチャ小屋13:30−キト15:00

ペルーを旅行していた金子もキトに到着し、島津、金子、登山ガイドのダビットの3名でグアグア・ピチンチャ(4,794m)に登る。ダビットは車でピチンチャ小屋(4,600m)まで行くが、島津と金子は標高4,150mから車道を歩くことにする。200312月に登ったときよりも、花の種類が多い。小屋でダビットと合流して昼食。金子は高度障害で頭が痛いそうだ。徒歩で山頂へ向かうが、風が強いので4,770m峰まで登って引き返す。小屋で車に乗り込み、キトへ戻る。その後、金子は7/12に一人でキト郊外にあるルク・ピチンチャ(4,698m)のゴンドラ終点(4,000m)から300mほど登った。

 

  

 

パソチョア山頂(4,200m)から

少し南のピークを見る。

 

 山麓の街ジョアから見た

グアグア・ピチンチャ(4,794m

 

 グアグア・ピチンチャを目指し

車道を歩いて登る。

 

 ピチンチャ小屋から

グアグア・ピチンチャへ向かう。

 

 

グアグア・ピチンチャで見られる花

 

 Arquitecta

 

 Chuquirahuas

 

 Gentianellas

 Alpaturi

 

7/13(晴れ)キト10:00−カヤンベ小屋(4,600m15:0023:30

7/14(晴れ)

島津:−氷河末端(4,850m01:00カヤンベ山頂(5,790m06:4507:00−氷河末端09:00−カヤンベ小屋裏の岩山09:1510:45−カヤンベ小屋11:1513:00−キト16:00

金子:−氷河末端(4,850m01:00−西稜(5,400m05:30カヤンベ山頂(5,790m08:4509:00−西稜10:00−氷河末端10:45−カヤンベ小屋12:0013:00−キト16:00

カヤンベ小屋(4,600m)まで車で入り、夕食と仮眠を取って23:30に小屋を出発。小屋の裏の岩山を経て、01:00氷河末端(4,850m)に着く。ここからは、島津と登山ガイドのダビット、金子と登山ガイドのスターリンという2つのパーティに分かれる。

氷河末端から斜面を直上した後、右折して露岩の下を回り込み、幅の広い西稜(5,400m)に出る。この間の傾斜は2035度であり、幅50cmの小さなクレバスが3つある。下山時の目印にするため、ダビットがクレバスの上側に旗を立てながら登っていく。金子は初めのうちスキーにシールとクトーを着けて登り、傾斜が急になるとスキーを担いだようだが、島津パーティよりだいぶ遅れている。島津は13年ぶりの高所登山なので標高5,200mで早くもバテ気味になったものの、スキー無しで荷物は軽いため、まあまあ順調に登れている。

西稜から上は傾斜が3040度となり、幅5mの多数のクレバスを縫うようにして進む。最後に高さ30m、傾斜40度の急斜面を登れば、カヤンベ山頂と北峰のコルに出る。コルの東側は火口になっており、火口縁を南へ10分進めばカヤンベ山頂(5,790m)である。島津パーティの山頂到着は06:45。朝日が昇って、すっかり明るくなった。南の方には、アンティサーナ(5,758m)、コトパクシ(5,897m)、チンボラソ(6,310m)がよく見える。

07:00に下山を開始。コルから100m下った所で、登高中の金子パーティに会う。金子も疲労困憊しているが、西稜にスキーをデポした後は随分楽になったようだ。島津パーティは09:00に氷河末端に到着。カヤンベ小屋に戻る途中の岩山の頂上からカヤンベの氷河登高ルート全体が見渡せるので、そこで金子パーティが降りてくる様子を見ていることにする。10:15になると、西稜の少し下に金子パーティらしい小さな人影が現れた。金子がスキーで滑り下り、スターリンが前後しながらツボ足で下りているようだ。彼らが氷河末端に着いたのを見届けてから、カヤンベ小屋へ下る。

 

 カヤンベ小屋(4,600m)から見たカヤンベ山頂5,790m

 

 

 カヤンベ5,790mの氷河登高ルート全景(下山中に撮影)

 写真中央の氷河末端(4,850m)から写真左上へ向かって登った後、右折して写真中央やや左の露岩の下を回り込み、写真のスカイラインに当たる幅の広い西稜(5,400m)に出る。西稜からは、写真右に向かって登る。

 

 

 西稜(5,400m)から見たカヤンベ山頂5,790m(下山中に撮影)

 写真中央の3人パーティがいる所から、カヤンベ山頂(写真中央)と北峰(朝日が昇っている所)のコルに向かい、幅5mの多数のクレバスを縫うように登る。コルから写真右へ10分進めば山頂。

 

 

 カヤンベ山頂から見た

アンティサーナ(5,758m

 カヤンベ山頂から見たコトパクシ

5,897m 右)とチンボラソ(6,310m 左)

 

4 エクアドルの山スキー

エクアドルでは4つの火山(チンボラソ6,310m、コトパクシ5,897m、カヤンベ5,790m、アンティサーナ5,758m)で山スキーができる。山頂から標高5,000m付近までを覆っている氷河が主な滑降対象だ。これらの山では、夜から朝のうちは晴れ、太陽が昇ると雲が沸いてくる日が多い。また、雪面は夜には凍っているが昼間は融けて緩み、雪崩や落石の危険が大きくなる。そのため、夜登って朝山頂に着き、昼前には下りてくるのが普通だ。天気のよい日が多いのは6月〜8月の乾季と12月〜1月だが、それ以外の季節でも登山者は多い。

 

5 天気予報

天気予報を見るには、Meteo365.com社の日本語版weather-forecast.comホームページ(下記)が便利である。

http://ja.weather-forecast.com/

このホームページで、たとえばエクアドルのキトを選択すれば、10日先までのキトの天気予報が表示される。その天気予報欄の小さな地図をクリックするとエクアドル周辺の地図が拡大表示され、さらに「気温図」「雲地図」など5つ並んだ選択肢のうち「雨と雪」を選ぶと、地図上に雨や雪が降る範囲の予想が表示される。地図内の矢印をクリックすれば、10日先まで6時間ごとの予想を次々と表示することができる。どの日時の雨や雪を予想したものかは、地図の上の欄に表示される。

一つ一つの小さな雨域の位置を正確に予想できるわけではないが、エクアドルで雨が降りやすい日と降りにくい日の違いくらいは、ある程度予想できる。20177月の予想を見る限りでは、アマゾンからエクアドルの山岳地帯にかけて雨が降りやすい時期と降りにくい時期が数日おきにやってきていたようだ。また、雨が降りにくい日でも、午後になればエクアドルの山岳地帯のあちらこちらで雨域が発生する場合が多いようだ。なお、エクアドルで雪が降るのは高山の狭い範囲に限られるので、このホームページで雨と雪の違いを予想するのは難しい。

 

6 装備

氷河用の登攀具が必要である。気温は氷点下10℃くらいで極端に低くはないが、氷河上では常に風に吹かれているので、中綿入りの厚いマウンテンジャケット・パンツを着ていないと寒い。

 カヤンベ小屋には48人ほど泊まれる部屋がいくつかあり、各部屋に2段ベッドがあってマットも敷かれているが、シュラフ(春山幕営用)は持っていく必要がある。週末など満室になったときには、食堂の長椅子や床で仮眠を取ったり、小屋の外で幕営したりする人もいるらしい。食事については、今回は登山ガイドが材料を持参して小屋番に調理を頼んでいたようだ。トイレットペーパーも持参する必要がある。

 

7 ガイドブック

l  アンデス全山のカイドブック:The Andes. A guide for climbers4, John Biggar, Andes, 2015

l  カヤンベ、グアグア・ピチンチャなどエクアドルの高山のガイドブック:Ecuador. A climbing guide, Yossi Brain, The Mountaineers Books, 2000

l  パソチョアなどのエクアドルの低山やトレッキングのガイドブック:Trekking in Ecuador, Robert & Daisy Kunstaetter, The Mountaineers Books, 2002

 

8 登山ガイドや車の手配

登山ガイドや車の手配は、キトの旅行会社High Summits(下記)に依頼した。

http://www.ecuador-climbing.info/

費用は次のとおり。

l  カヤンベ登山ツアー2日間(客2名、登山ガイド2名、車1台):客1名当たり510ドル

l  グアグア・ピチンチャ日帰り登山ツアー(客2名、登山ガイド1名、車1台):客1名当たり140ドル

l  パソチョア日帰り登山ツアー(客1名、登山ガイド1名、車1台):客1名当たり240ドル

 

9 標高とSpO2(動脈血酸素飽和度)の変化

標高とパルスオキシメーターで測った島津のSpO2(動脈血酸素飽和度)の変化を下の図に示す。

図:標高とパルスオキシメーターで測った島津のSpO2(動脈血酸素飽和度)の変化(pdf

SpO2は、富士山五合目の佐藤小屋(2,230m)やもっと低い高度で測ったときには95%以上だったが、キト(2,850m)では9296%と少し低めになっており、カヤンベ小屋(4,600m)に泊まった7/13には8687%とさらに低くなった。

 

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