行動記録

8月20日 関西18:15−

8月21日 −クライストチャーチ08:50〜14:00−ホキティカ18:00

8月22日 ホキティカ08:00−フォックス氷河ビレッジ10:30

 昨日の夜中から雨が激しく降っている。雲も標高1,000mまで低く垂れ込めているため、予約しておいたヘリコプターは飛ばず、入山できない。この日はフォックス氷河ビレッジで泊まる。

 

入山

8月23日(雨一時あられ。標高1,800m以上は雲がかかる。)フォックス氷河ビレッジ09:45−チャンセラー小屋09:55

 今日も雨だが、標高1,800mから下には雲がかかっておらず視界も利く。10時前にヘリコプターでチャンセラー小屋へ入る。

 

チャンセラー小屋〜パイオニア小屋

8月24日(晴れ。夕方は曇り一時雪一時霧。)チャンセラー小屋08:00−チャンセラーシェルフからフォックス氷河への下降点1,460m 10:00〜10:30−チャンセラードーム(2,004m)の南麓1,780m 12:30−パイオニア小屋18:00

 5時頃、キーアの鳴き声で起こされる。キーアはニュージーランドの山岳地帯に生息するオウムである。鳥の声に晴天を期待しながら窓の外を覗くと、星空が広がっている。8時にチャンセラー小屋を出発。小屋はチャンセラーシェルフというフォックス氷河北岸の台地に建っているが、この台地の上をしばらく登る。昨日までの雨で濡れた雪面が今朝はカチカチに凍っていて歩きにくい。スキーにクトーをつけたり、アイゼンに履き替えたりしていたため、フォックス氷河への下降点まで1km進むのに2時間もかかった。

 フォックス氷河はクレバスだらけで、北端の狭い部分しか通れない。相変わらず雪面は凍っているので、クトーをつけて登る。滑落したらクレバスへ落ちる所もあり、緊張する。標高1,660〜1,780mの傾斜30度の急斜面を登りきると、チャンセラードームの南麓である。右手にはフォックス氷河上部の雪原が広がり、その奥にタスマン(3,497m)が聳えている。

 チャンセラードームや2,240m峰の南麓に沿って、フォックス氷河北岸を東へ進む。雪面は柔らかくなり、シールで登れるようになった。標高2,100m付近のクレバス帯は、氷河の中央部に移って通過する。そのまま氷河中央部を進み、標高2,200m付近のクレバス帯を越えた所で氷河南岸へ移る。氷河南岸を少し西へ戻ってから、パイオニア尾根の北面を登って鞍部(2,280m)に出る。尾根上を0.5km登り、18時にパイオニア小屋に着く。小屋は我々の貸切りだった。

 

パイオニアパス滑降

8月25日(晴れ)パイオニア小屋10:00−パイオニアパス12:30〜13:00−パイオニア小屋14:30

 パイオニア小屋からほぼ水平に南へ1.5km進み、そこからパイオニアパス北面を登る。標高2,530m付近のクレバス帯は右(西側)から越える。あとは緩やかな斜面を真っ直ぐ登ればパイオニアパスに着く。峠の南東側には雪庇が出ていて近づけない。南西側の斜面を少し登ると、タスマン氷河が見えた。

 往路を滑って戻る。上部は硬い雪で、下部は湿った重い雪だ。鈴木は、シールの糊が付着してスキーの滑りが悪くなり、苦労している。

 早目に行動を切り上げ、パイオニア小屋の大きな窓から風景を眺めて過ごす。日没が近づくと、氷河も岩峰も夕陽に照らされて桃色に染まった。今日はニュージーランドの2人パーティがヘリコプターでやってきたので、小屋の客は2組4人となる。

 

マーセルコル滑降(アイスフォールの途中で敗退)

8月26日(晴れ)パイオニア小屋07:00−マーセルコル北面の標高2,720m 11:00−パイオニア小屋13:15

 昨日のトレースを1.5km南下した後、南西へ1km進むとマーセルコル北面のアイスフォール(2,550〜2,800m)の下に着く。アイスフォールの左端のルートは通過できるかどうか分からないので、右端(西側)のルートを選ぶことにした。まず、西隣のヘームスカーク氷河を標高2,600mまで登る。ここから氷河東岸の斜面を登れば、アイスフォールの上へ抜けられそうだ。

 右から大きく回り込み、途中でアイゼンに履き替えて斜面右手の小セラックの上(2,700m)に出た。さらに、傾斜45度の斜面を左上する。氷の硬い所では、靴を何度か蹴り込まないとステップが切れない。5分かけて20m登った所で、小石や氷塊がパラパラと降ってきた。頭上には高さ300mの岩壁と雪壁が聳えており、落石などはすべて我々のいる斜面に集まってくる。1分ほど様子を見ていたが、小石の落下は止まらない。この調子では、そのうち1つや2つは致命的な大きさの石が降ってくるかもしれない。鈴木に「引き返そうか」と声をかけると、彼も「そうしよう」と言う。

 小セラックの上まで下りてスキーを履き、タスマン北東壁をバックに滑る。写真写りは最高だが、雪質はアイスバーンとモナカ雪で最悪だ。

 

フォンブローとウェストホエパスの滑降

8月27日(曇りときどき晴れ。14時から霧。)パイオニア小屋07:00−フォンブロー09:30〜10:00−ウェストホエパス12:30−パイオニア小屋14:30

 パイオニア小屋からフォックス氷河を横断し、広くてなだらかなフォンブロー南西面に取付く。標高2,400m付近のクレバス帯は、セラックの間を縫うようにして中央より少し右(南東側)の部分を通り抜ける。フォンブローとハルコウム(2,659m)の鞍部(2,540m)から北へ0.2km進めばフォンブロー山頂だ。ここは、フォックス氷河とフランツジョセフ氷河の両方を見渡すのに絶好の展望台である。山頂直下でスキーを履き、所々に新雪の残る斜面を快適に滑ってフォックス氷河へ戻る。

 フォックス氷河北岸を東に1km進み、ウェストホエパスに登る。峠の手前には大クレバスがあるので、右(南東側)から大きく迂回しなければならない。大クレバスの上の凍った斜面をクトーで横切るのは気持ち悪いので僕は途中で引き返したが、鈴木は峠まで往復してきた。ウェストホエパス南西面を一滑りしてから小屋へ帰ると、ニュージーランドの3人パーティが新たに加わっていた。彼らが皆にワインを振る舞い、にぎやかな夜になった。

 

下山

8月28日(曇り)パイオニア小屋07:00−チャンセラー小屋09:30〜12:10−フォックス氷河ビレッジ12:20

 チャンセラー小屋へ下山。全長8kmの大滑降だが、上部はモナカ雪、下部はアイスバーンなのであまり楽しくない。チャンセラーシェルフはアイゼンで下る。12時過ぎにヘリコプターが迎えに来た。シャワーとビールが待つフォックス氷河ビレッジまでは、10分間の飛行である。

 

8月29日 フォックス氷河ビレッジ10:00−アーサーズパス16:30

8月30日 アーサーズパス09:30−クライストチャーチ11:30〜16:30−オークランド17:50

8月31日 オークランド07:35−関西16:00(鈴木は名古屋着)

ニュージーランド フォックス氷河